いまどきの年配層は想像以上にアクティブ
2018年11月に開催された中国・広州モーターショーにおいて、現地合弁会社が生産する一汽トヨタ・カローラと広汽トヨタ・レビンが次期型カローラシリーズのセダンとしてワールドプレミアされ、ほぼ同タイミングで北米仕様のカローラ・セダンもデビューした。日本国内には、中国でのカローラ・セダンの兄弟車となるレビンがカローラ・セダンとして導入されることになっている。
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日本国内でもついに3ナンバーサイズになることが話題となっているカローラだが、カローラ・スポーツにトランクをつけたようなエクステリアデザインについては、そのデザインテイストの若返りについても注目を浴びている。
現行カローラ・セダンとなる、カローラ・アクシオはほんの一部の地域へ輸出されているものの、ほぼ国内専売車種として開発されている。すでに海外においては10代目で3ナンバーサイズ(日本国内仕様は5ナンバーサイズ)となり、現行11代目も3ナンバーサイズとなっているなかで、いまもなお5ナンバーサイズを堅持している。
“原点回帰”として異例のサイズダウンを行い、取り回し性能の向上を図るとともに、実用性を優先したエクステリアデザインの採用で、抜群の視認性の良さを実現している。
現行モデルがデビューしたときに販売現場で話を聞くと、「カローラユーザーの平均年齢がアップしていることもあり、とくにセダンのアクシオは年配層にターゲットを絞って開発されたので、年配層(65歳以上)のお客さまへの販売促進に力を入れるようにと指示されました」ということであった。
「しかし、今どきのメインターゲットとすべきとされた年齢層のお客さま、つまりセミリタイヤやリタイヤ層の方々は、われわれのような現役世代が思い描くよりアクティブ、つまり行動的です。もちろん、現行アクシオのようなオーソドックスなセダンを好まれるお客さまもいらっしゃいますが、他社ですがマツダ・ロードスターのようなオープンカーや、C-HRのようなSUVなど若者以上に若者的なおクルマをチョイスされるケースも目立っています」
「子離れもして若いころのカーライフを再現していらっしゃるようです。ですから、『年配向けに開発したセダンを年配層に売り込め』という発想では、カローラ・セダンの既納先への代替え促進がメインとなり、需要の拡大はなかなか難しいですよ」と話を続けてくれた。
将来の高齢者には攻めたデザインのカローラが有効
また世界市場に目を向けると、カローラユーザーの年齢層は平均しても日本のそれとひと回り世代が若いといっても過言ではないだろう。世界第一位の中国市場では高度経済成長期の日本と同じく、初めてマイカーを購入するといった世帯(つまりユーザー層は若めとなる)が多いとされるし、世界第二位の北米でも現役子育て層ぐらいの女性ユーザーも目立っており、けっしてカローラは“年配層のクルマ”ではないのである。
カローラはすでに初代がデビューしてから50年以上が経過している。同一車名で半世紀もラインアップし続けるということは、他メーカーでも類を見ないことからも並大抵のことではできないまさに偉業そのもの。ただし新車開発においては、その長い伝統により何かと“足かせ”になることも多いと聞く。そのなかでいつしか気がついたら、“高齢者向けのクルマ”といったようなレッテルを日本国内で貼られるようになってしまった。
世の中では“2025年問題”というものが注目されている。2025年に“団塊世代”と呼ばれる世代すべてが後期高齢者となる75歳に達し、日本の高齢化社会が一気に加速するとされている。また時を同じくして団塊世代の子ども世代である“団塊ジュニア世代”も50歳台に達する。人生100年時代のなか、“後期高齢者”と呼ばれる層であっても、多様な価値観を持ち青春時代を自由に謳歌した団塊世代だけでなく、団塊ジュニア層もいままでの流れでいけば、カローラ・セダンのメインターゲットとなってくる。
残念ながら、このような世代へいままでの日本国内でのカローラ・セダンの実用一点張りのコンセプトは通用しない。「年寄りなのだから5ナンバーサイズの実用セダンがピッタリ」と言われれば、「何を!」とばかりに、たちまち反論されてしまうだろう。
さらにいまどきの若年層は子どものころから、自宅のマイカーがスライドアを持つミニバンだったという世帯がほとんどで、トランクを持つセダンスタイルが珍しく“かっこいい”と思うひとも多いと聞く。過去のカローラをリアルタイムで知っている層には、「これでカローラなの?」と驚かせ、“大衆車”イメージを持たない若年層には“セダン=クール=カローラ”というイメージを持たせるうえでは、次期カローラの持つポテンシャルは非常に高いといえる。
今までの価値観で見れば、やけに若々しいデザインで3ナンバーサイズの次期カローラに対し、「何を考えているかわからない」と思うひとも多いかもしれない。販売現場で話を聞いても、不安なコメントが目立っている。
“石橋を叩いて渡る”とさえ言われたトヨタにしては、端から見ればかなり“勝負に出ている”ようにも見える。ただ、次の50年、つまり生誕100年というのは大げさかもしれないが、次期カローラにはトヨタのロングスパンで見据えた、深読みすぎると言われるかもしれないが、さまざまな思惑というものも感じてしまう。
今後も日本市場は人口減少と超少子高齢化により新車販売だけでなく、保有台数も減り続けて市場の縮小には歯止めがきかないのは明白。そのなかで軽自動車のような薄利多売の商売はまさに消耗戦そのもの。となれば、少なくなる販売台数のなかで確実に利益がとれる付加価値のあるクルマの販売を続ける必要性が出てくる。
他メーカーに比べトヨタはクラウンとカローラという二枚看板のもと、堅調にセダンを売り続けている。軽自動車やミニバンなど多くのメーカーで販売を競い合うカテゴリーに比べれば、セダンは値引きも荒れにくい。そのセダンでイニシアチブをとるというのは収益という観点でも非常に魅力的に映るはずだ。次期カローラの登場とその後の販売動向はじつに興味深いものになると考えている。
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