血統書付きのスポーツカーに迫る充足感
ベスト・ファンカーでの受賞となった、FL5型のホンダ・シビック・タイプR。ただし、楽しいという表現だけでは誤解を招くように思う。選出しておいて、なんなのだが。
【画像】楽しいだけじゃない シビック・タイプR 予想外のヒーロー ダチア・ジョガー 先代FK8型とダスターも 全103枚
もちろん、クルマは運転が楽しい方がイイ。ホットハッチなら、なお一層だ。硬めの乗り心地や安っぽい内装、悩ましい燃費も、鋭い回頭性や公道でも使い切れる充分なパワー、アクセルオフ時に流れるテールの挙動があれば、許せてしまう。
しかし、前世代に当たるFK8型のシビック・タイプRの頃から、状況は変わってきていた。ホンダは、ホットハッチのゲームチェンジャーを生み出していた。正確な操縦性と確実なロードホールディング性を備えつつ、軽快で上質で、感触が豊かだった。
少し不自然に突き出たフロントノーズと、派手なリアウイングを備えていたが、フォード・エスコート・コスワースのように、ホットハッチの新基準を打ち立てていた。2.5ボックスのシルエットで。
それはドライビング体験にも現れていた。楽しいだけではなかった。
シャシーとパワートレインには崇高な技術力が投じられ、中毒性のある喜びをドライバーに与えた。シリアスな領域にすら届いていた。価格帯が遥かに上に属する、血統書付きスポーツカーでなければ味わえない充足感に迫ってさえいた。
AUTOCARで試乗した際は、前輪駆動のポルシェ911 GT3だと表現している。それは、誇張ではなかった。
特別なシビックの総まとめのよう
果たして、最新のFL5型シビック・タイプRは、間違いなく欧州でも支持を得るだろう。2023年のライバルとガチンコ勝負させても、恐らく余裕で勝利するはず。先代のFK8型ですら、古さを感じさせなかったのだから。
FL5型は、大幅なアップデートを受けているものの、基本的には先代のメカニズムを継承している。魅力的なスタイリングで改めてその実力を証明しようと、ホンダは務めたのかもしれない。緻密なまでに、細かな改良が施されている。
各部の軽量化が図られ、サスペンションやブッシュ類が見直され、空力特性も改善された。ブレーキの冷却にも気が配られ、耐フェード性を高めている。キャンバー角を強め、ステアリングコラムは剛性を増し、トラックロッド・エンドも強化された。
K20C型エンジンはターボを改良し、フライホイールは軽量に。排気ガスはスムーズに吐き出されるようになった。素晴らしかったシフトレバーの動きは、さらに甘美さを増している。
特別なシビックのために、ホンダの技術者が最後の総まとめをしたように感じる。ホットハッチではあるが、メーカーとしての力強い声明のようだ。
他を圧倒するほど素晴らしいホットハッチ
最新のシビック・タイプRは、先代より速く有能。安定性を高めつつ、調整しろが広い。インテリアは大幅に上質になり、走行時の洗練性は磨かれている。日常的な移動を快適にこなせつつ、先代と変わらない興奮を与え、走りに意欲的でもある。
パワートレインは、このクラスで最も魅力的といっていいだろう。豊かなキャラクターは、人為的に強調された特徴とは異なる、本質的なモノが生み出している。
シビック・タイプRは、単に楽しいだけではない。他を圧倒するほど素晴らしいホットハッチだ。得体が知れないとすら思えるほどに。
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みんなのコメント
たしかに古臭いデザインですね