先週末に開催された2024年NASCARカップシリーズのレギュラーシーズン終盤戦、リッチモンド・レースウェイでの第23戦『クック・アウト400』にて、オースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が、ライバルたちを接触によって撃破した“疑惑の2年ぶり勝利”により、残り3戦で大逆転の滑り込みプレーオフ進出権を獲得した件について。
延長ホワイトフラッグの最終ラップで、先頭ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)と背後から来たデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)のレースを“破壊した”行為に関し、NASCAR運営団体は徹底的な検証の結果、現地14日(水)にも「プレーオフ出場資格を剥奪する」との判断を下した。
ロガーノとハムリンを文字どおり“撃破”のディロンが、物議の勝利で逆転プレーオフへ/NASCAR第23戦
ことの発端はリッチモンドでの最終リスタートにて、最前列にいたディロンの隣から抜け出したロガーノに対し、ターン3で22号車マスタングのリヤバンパーに3号車カマロがフロントをヒット。堪え切れなかったロガーノはバリアに激突し、目前にあった勝利の可能性がフイに。さらにボトムを抜け出そうとしていた11号車カムリXSEの右後輪も立て続けに接触して引っ掛け、急激に制御を失ったハムリンもウォールの餌食となった。
これにより、わずか0.116秒差で終盤戦の重要な勝利を手にし、週末を迎える時点でチャンピオンシップ32位だったディロンは自動的にポストシーズン進出権を大逆転で手にすることとなったが、この“物議のフィニッシュ”後は最高峰カップシリーズとして「どうあるべきか」の議論が渦巻く状況となっていた。
最終的にディロンはプレーオフ進出権は剥奪されるものの、この勝利自体はキープ。偉大な祖父の運営するリチャード・チルドレス・レーシング(RCR)も、この事件によりオーナーズおよびドライバーズの双方で25ポイントの減点とされ、同時にオーナーズ・チャンピオンシップ出場資格も失った。
さらにディロンのスポッターを務めるブランドン・ベネシュも、最終コーナーでハムリンがボトムのインサイド側に来たとき、無線を通じてディロンに「彼をぶっ潰せ」と指示したことが明らかとなり、次の3レースに出場停止となった。
■今回の事件は「一線を越えた」
「まずはファンの皆さんに、裁定に関してこれほどに時間が掛かったことをお詫びしたい」と語るのは、この件の直後にも「接触の許容範囲に関する考え方を再考する必要がある」と明かしていたNASCARの競技担当上級副社長を務めるエルトン・ソーヤー。
「皆さんはこのプロセスの間、ずっと辛抱強く待ってくれていた。今、我々は彼らと話し合いをし、なぜこの決定にこれほど時間がかかったのかを彼らに伝えているところだ」と、ただ裁定を下すだけでなくNASCARとして正しい裁定を下すことの重要性を理解していたことが、ペナルティの発表に3日を要した最大の要因だと強調する。
このプロセスは日曜の夜に起きた事件に関し、入手可能なすべての情報を収集することから始まり、ファンもオンラインで活用可能なライブSMTデータや車載ビデオ、オーディオの調査を続け、必要な会議を経てプレーオフ出場資格の剥奪を確定させた。
この後、RCR側はこのペナルティに対し異議を申し立てることができるものの、ディロンがポストシーズン出場権を獲得するためには、レギュラーシーズン残り3戦で改めて勝利を手にする必要がある。
「もっとも大事なことは(最終戦の)フェニックスにたどり着いたとき、プレーオフとチャンピオンシップの健全性を確実に守ることだった」と続けたソーヤー。
「選手たちにはすべての決定を理解してもらい、懸命にレースをして欲しいと思っている。それが75年以上もの間、我々の“スポーツ”が目指してきたことでもある。しかし、今回は一線を越えたということを選手たちにも理解してもらいたいし、すでに選手全員が理解していると思っている」
過去2年間に、NASCARは2022年のダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)や2023年のチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)と、ライバルに“右フックを浴びせた”とみなされた2名を出場停止処分にしており、今回のディロンの件もそれと比較検討されたという。
「しかし個々の状況はそれぞれに異なっている。全体を考えてみると、今回の3号車とそのオーナーに課したプレーオフ資格を剥奪するペナルティは、日曜の夜に起こったことと合致していると感じた」とソーヤー。「これに出場停止処分を加える必要はないと考えている」
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横並びになってのコンタクトならペナルティが出なかったかもしれない。