2018年11月のロサンゼルスオートショーで、世界初公開されたアウディのハイエンドスポーツEV、eトロン GTが2021年から発売される。それに先立ってアウディは、ギリシャのロードス島においてプロトタイプ試乗会を開催した。(Motor Magazine2021年1月号より)
タイカン ターボに迫るハイスペックモデル
このeトロンGTはポルシェ タイカンと共通のプラットフォーム「J1」を使ってアウディスポーツ社で開発、R8やRSシリーズと同じラインで生産される。ただしグループ内での競合を避けるために、共通部品はおよそ40%に留めていると言われる。
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今回、試乗するのはアウディスポーツ社のトップグレードである「RS」の称号を与えられたもっともパワフルなモデル、RS eトロンGTだ。フロント175kW、リア335kWのふたつの電気モーターによって、システム出力440kW(598ps)と最大トルク800Nmを発生する。タイカン ターボに迫るハイスペックの持ち主だ。
エネルギーの源となるリチウムイオン電池は、12個のセルを持つモジュールが33組連なる。計396個のLGケミカル製パウチセルからなるバッテリー容量は85.9kWh、総バッテリー容量は93.4kWhと、やはりタイカン ターボとほぼ同じ数値となる。
この高性能を持続させるために、クーリングシステムには30Lのクーラントおよび4つの回路が設けられ、バッテリーを30度の最適作動温度に保つ。暫定の航続距離は約400kmと言われている。到着後すぐに近くの軍用空港へ向かう。まずは滑走路を使ってのローンチスタート加速テストを実施。
自重およそ2.5トンと予想される4シーターGTはクワトロ(4WD)によって立ち上がりから、まるで背中を蹴飛ばされるような強烈な加速力を発揮する。正確な数字は発表されていないが0→100km/h加速は3.5秒以下と言われ、11.8秒後には220km/hに達する。また最高速度は250km/hでリミッターが介入する。
快適ドライブモードには快速GTとしての片鱗が
翌日、一般道路で行われたおよそ100kmのドライブでは、まず3チャンバーのエアサスペンションが全体的に快適志向であることが感じられた。とくに車高が20mm上昇するコンフォートモードでは、アダプティブダンパーが重いボディのダンピングをしっかり抑え、タイカンよりも明らかに乗り心地は良かった。ちなみにエフィシエンシーモードでは空気抵抗を減らすために22mmまで車高を下げ、航続距離の延長を図る。
一方、ドライブモードをダイナミックに設定すると車高は10mmローダウンし、スポーティなハンドリングを提供する。クワトロシステムによる前後輪へのトルク配分は0~100%まで、しかも状況に応じて従来のメカニカルシステムの5倍のスピードで作動する。とくにコーナーでは低重心による安定性も加わって、まさにオンザレール感覚だ。最大で2.8度の位相制御を行う後輪ステアは、高速域での追い越しや車線変更で素晴らしい安定感を見せた。
アウディは、このRS eトロンGTに、独自に開発した人工デジタルドライブサウンド「eサウンド」を採用している。同様のシステムを搭載するタイカンではスポーツモードで加速中にのみ発生させているが、アウディは街中での歩行者への接近音(AVAS)だけでなく、走行状況に応じて、その場に相応しいサウンドをクルマの周辺、そしてドライバーに聞かせ、エモーションの喚起とともに、ブランドアイデンティティの確立に繋げようとしている。
コンセプトモデルから予想できる高品質でエレガントなインテリアデザインなどからも想像できるように、eトロンGTは基本的には、その名のとおりオールラウンドなグランドツーリングカーを目指しているのだと思う。ただし、今回のRS仕様による短時間の試乗では、ダイナミック性能ばかりが強調された印象だ。アウディのプレミアムDNAの体験は、2021年開催が予定されているスタンダードなeトロンGTの試乗会までお預けだ。
このアウディRS eトロンGTの正式な発表は2021年初頭で、日本への導入は春頃になると計画されている。価格や正確な仕様は、まだ発表されていない。(文:アレキサンダー・オーステルン<キムラ・オフィス>)
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