この記事をまとめると
■シャープが台湾の親会社フォックスコンとEV開発を進めている
「コロナ禍の新生活様式」は自動車界にはプラス! 一気に変わったニッポンの「カーライフ」とは
■まるでリビングルームのようなイメージのインテリアでEVの新しい価値を提案
■自動運転技術と相まって自動車産業の変革を予感させる1台となっている
家電のシャープが親会社とともにEVコンセプトを発表
若干旧聞に付す話題となるが、家電の「シャープ」が独自にEVを開発しているというニュースを覚えているだろうか。2024年9月に公開されたEVコンセプトモデル「LDK+」について、同社は「鴻海精密工業股份有限公司と連携し、EVのオープンプラットフォームをベースに企画・開発」した1台であると発表している。
ご存じのように、フォックスコンの名称で知られている「鴻海精密工業」は、シャープの親会社である。また、数年前よりEVプラットフォームを開発・ビジネス化しようと動いていることでも知られている。そうした流れや状況から考えれば、シャープのEVコンセプトは、フォックスコンのEVプラットフォームビジネスを宣伝するためのサンプルと捉えるのが妥当だろう。
EVビジネスというのは進化のスピードが速く、方針についても朝令暮改的な部分があるため、結論づけるのは難しいのだが、現時点での印象をまとめれば、シャープがEV事業に本格参入するというよりは、フォックスコンのEVプラットフォームを利用すれば、自動車製造の経験が浅くても、商品力のあるEVを作ることができるというアピール要素が強いといえそうだ。
クルマというより「部屋」なLDK+が示す自動車の未来
非常に面白いのは、シャープ「LDK+」では、従来の新型車登場時にありがちな、クルマとしての性能アピールがほとんどない点だ。ワンボックスフォルムの車体は、大部分がリヤスペースというパッケージングで、後方に65インチの大画面モニターを配置するなど、ほとんど部屋としてデザインされている。
車名がLDK+となっているのは駐車場に置いたクルマを「リビングルームを拡張」したプライベート空間として利用できることを意味しているといえる。つまり、駐車中のバリューを狙ったコンセプトというわけだ。
ほかにも大規模言語モデルのAIによるサービス、蓄電池や太陽光発電と連携したエネルギーマネージメントなど、「止まっている時間」に役立つ機能にフォーカスしているのだ。
実際、公開されている透視図をみても、運転席は非常に狭く、ハンドルやペダルなどは省かれている。バッテリー搭載量、航続距離などの情報もなく、家電メーカーの知見を活かしたEVの新しい価値の提案を示しているのがコンセプトカー「LDK+」といえるだろう。
ただし、非現実的なコンセプトカーと捉えてしまうことはできない。
これまたよく知られていることだが、フォックスコンといえばApple iPhoneの製造を受託している企業として知られ、一時はアップルカーの製造も請け負うのでは? といわれていた。アップルカーについてはプロジェクトが凍結されたということもあり、不明な点も少なくないが、完全自動運転を最終目標としていたことは間違いない。
もし、フォックスコンのEVプラットフォームが完全自動運転を前提としているのであれば、「LDK+」の運転席まわりの表現が非常に簡素かつスペースが狭くなっていることも納得できる。現時点では運転席が必要かもしれないが、ドライバー不要の自動運転テクノロジーが実現、法整備や社会的受容性が満たされてこそ、移動する部屋というコンセプトが活きてくるはずだ。
運転行為が不要になったとき、旧来の自動車メーカーがどんな価値を提供できるかは不明であるが、少なくとも「ファン・トゥ・ドライブ」的な価値観は過去のものとなるだろう。そして、移動する部屋としての価値を高めるノウハウは、家電メーカーやインテリアに強い企業に一日の長があるのも事実。
シャープのコンセプトカー「LDK+」自体は、けっして現実味を帯びているものではないが、自動車産業の大変革を予感させる1台であることもまた事実だ。
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みんなのコメント
運転はただの義務的な作業と思っている人とか純粋な業務用車両としてはいいのかも。