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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第4回】新形式導入によるスプリントの独立化には賛成。タイヤ指定にはメリットなし

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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第4回】新形式導入によるスプリントの独立化には賛成。タイヤ指定にはメリットなし

 2023年シーズンで8年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。第4戦アゼルバイジャンGPでは今年は最初のスプリントが行われた。グランプリの直前にフォーマット変更が決まり、スプリントの結果がレースに直接影響しない形式になったが、果たしてその手応えはどうだったのか。アゼルバイジャンGPの現場の事情を小松エンジニアが振り返ります。

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マグヌッセン「僕たちのウイングはDRSがあってもあまり大きなインパクトがなかった」:ハース F1第4戦決勝

2023年F1第4戦アゼルバイジャンGP
#20 ケビン・マグヌッセン 予選18番手/スプリント11番手/決勝13位
#27 ニコ・ヒュルケンベルグ 予選17番手/スプリント15番手/決勝17位

 この週末、今シーズン最初のスプリントが行われました。グランプリの開幕直前にフォーマットが変わり、新たに『スプリント・シューアウト』というスプリントのグリッドを決めるセッションが導入されました。この形式について率直な感想としては、スプリントとレースが独立しているのは賛成です。最初にスプリントの案を話し合った時にそう提案をしたのですが、その時は通りませんでした。今回どのような流れでそうなったのかは知りませんが、個人的にはいいことだと思います。

 ただし、もし僕がフォーマットを決める側の立場だったら、スプリントを週末の最初の金曜日にやります。なぜかというと、今回の形式では金曜日に日曜日のための予選をして、土曜日に前日とも翌日とも関係のないスプリントが入るのはちょっと不自然に感じたからです。FP1を残すのなら、金曜にFP1とスプリント・シュートアウトをやって、土曜の午前中にスプリント、午後に予選、日曜にレースという形式の方が流れはいいと思います。

 今回の変更でチームスタッフの負担が特に増えたという印象はありません。ただ、やはりエンジニアとしてはフリー走行でいろいろとクルマのセットアップなどを試せないのが残念です。

 最近はフリー走行の削減が話題になっていますが、僕は削減に賛成です。以前にも言いましたが、準備期間が短くなればなるほど、チーム力の差がでると思います。ただ、まったく無くすのは反対です。また今回のように1時間のセッションが1回だと、基本的にほぼ何も試す時間がないので賛成とは言いかねます。やはりドライバーと一緒になってクルマを走らせながら、セットアップを変えてクルマを作っていくという作業は楽しいですから。その機会を残してほしいです。FP1のみの1セッション、でも時間を増やして2時間、そしてタイヤも4セットなんてことになれば、結構バランスがとれておもしろいと思います。

 またスプリント・シュートアウトでは各セッションで使用するタイヤが指定されていました。タイヤを指定したのはナンセンスだと僕は思っています。レギュレーションで細かく決める方向にどんどん行っていますが、賛成できません。それぞれのチーム、ドライバーに思惑・優先すべきことが各々のポジションであるわけですから、レギュレーションでフレームワークだけを決めて、あとはそのなかでチームにどのタイヤをどのように使うかという自由度を与えるべきです。

 F1としては、もう少し予選の結果に変化を持たせてグリッドを混ぜたいという方針ですが、だったら逆にチームに自由を与えるべきです。またSQ1、SQ2、SQ3の方式に捕らわれる必要はないと思います。たとえばフリー走行(FP2)を残して(45分に短縮したりしてもいいかも)、FP2の結果をスプリントのグリッドに反映するということだってできます。その場合、FP2ではセットアップ変更も自由で、タイヤは3セットぐらいでしょうか。そうすればみんなクルマをよくしようと思って走るし(最後まで誰もコースに出て行かないということがない)、セッションをどう使うかはチームの判断。結果として上位チームと中断チームがグリッド上で混ざる可能性も増えるかもしれません(サーキットによってはトラフィックに引っかかってしまう可能性も増えます)。SQ1は新品のミディアムタイヤで走らなければいけないなど、そこまで決められるのは何のメリットもないし、F1の精神に反していると思います。

■セットアップ変更が活きたレース。大きな収穫のあった週末に

 予選ではQ1でケビンのクルマに電気系のトラブルが発生し18番手、ニコも17番手と振るわなかったですが、土曜のスプリント・シュートアウトでは2台ともSQ2まで進むことができました。ですので、もしトラブルがなければ、ケビンのQ2進出は確実だったと思います。彼のクルマにはFP1でもトラブルが出てほぼ走れませんでした。それでもクルマに対するケビンの感触もよかったですし、Q1の初めに走った時もそのままいい感触を保っていたので、普通に走れていればQ2は確実で、Q3に届くか届かないかくらいのところには行けたと思います。

 ニコの方は、リズムに乗り切れず、最後のランのアタックは2周ともよくなかったので、Q2に行けたかどうかは疑問です。ただ、懸念していたバクーでトップ10に届くか届かないかくらいのクルマの速さがあったのはよかったことです。

 とはいえクルマは悪くなくても、中団は実力が拮抗しているので週末をまとめられないとなかなか入賞に届きません。ケビンの方は彼自身の調子はよかったのに金曜にクルマに問題が出たり、SQ2ではオーバードライブしてしまうなど噛み合わなかったです。レースでもいいスタートを切ったのですが、フロントウイングを壊してしまいました。

 このダメージを負ったクルマでもいいペースで走れていたので、ピットストップでフロントウイングを交換した後ケビンがどれくらいのペースで走れるか期待していたのですが、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)を抜けず、ほんとにフラストレーションのたまるレースになってしまいました。

 ニコは金曜のフリー走行からクルマの挙動に不安を持っており、それがスプリントでリヤタイヤを傷める大きな原因になりました。そこで土曜の夜にデータを見直して、サスペンションのセッティングを変えてピッレーンスタートにすることに決めたのです。

 レースではこのセットアップ変更が活きて、ニコは自信をもってドライブすることができました。同じハードタイヤでピットレーンからスタートしたエステバン・オコン(アルピーヌ)を抜けず、こちらもまたフラストレーションのたまるレースになりましたが、セットアップの答えも出ましたし、これによってニコのドライビングも改善したので得るものは多かったです。ですから結果には繋げられなかったものの、大いに収穫のあった週末となりました。

 次のマイアミではとにかく週末をしっかりとまとめて入賞を目指したいと思います。

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