RXシリーズの歴史を振り返る
2年に一度のモーターショーが近づいてきました。この時期になると必ずと言っていいほど噂が聞こえてくるのがロータリー・エンジン(以下:RE)の復活。近年では、REならではのコンパクトさを活かした電気自動(EV)のレンジエクステンダー(エンジン回転力で発電機能をつかさどるシステム)として注目が集まっているようです。
マツダ以外にもあった「ロータリー・エンジン搭載車ヒストリー(海外編)」
しかし、そんなREが初めて公開されたのは55年以上も前のこと。1963年10月に開催された第10回全日本自動車ショー(東京モーターショーの前身)でした。この時は2種類のRE単体とREテスト用試作車としてコスモスポーツ(のプロトタイプ)の写真パネルが展示されたのみ。しかし、その後のモーターショーには多くのコンセプトモデルが登場し、”RX”と命名された輸出モデルも多く登場してきました。東京モーターショー2019を目前に、そのRXシリーズの歴史を振り返ってみましょう。
コスモスポーツからREエンジン搭載
マツダ(当時は前身である東洋工業)として、初のロータリー・エンジン搭載車は1967年5月に市販されたコスモスポーツ。しかし、開発コードも車両型式も”RX”とは関係がなく、RXを初めて名乗ったのは1967年10月の東京モーターショーに登場した「RX85」と「RX87」という2台のコンセプトモデルでした。
RX85はファミリア・ロータリークーペ(車両型式M10A)として68年6月から、RX87はルーチェ・ロータリークーペ(同じくM13P)として69年10月から、ともに市販スタート。それぞれファミリア(2代目のSP系)、ルーチェ(初代のSU系)をベースにしたと発表されています。
詳しく見るとファミリアは、後にレシプロ・エンジン仕様も追加設定されるクーペボディに2ローターの10A・REを搭載。
これに対してルーチェは、ベースモデルにはないクーペ(センターピラーのないハードトップ)ボディで、駆動系もベースモデルは後輪駆動であるのに対してREモデルは前輪駆動、と全くの別物だったのです。
それが影響していたのかどうか、ルーチェ・ロータリークーペはコンセプトモデルを3度もモーターショーに出展。3度目は、市販が開始された直後の第16回東京モーターショーに、コンシールドタイプのヘッドライトを採用したモデルの出展でした。車両型式がM13Pとされたルーチェ・ロータリークーペでしたが、ボディにはRX87のエンブレムが貼られていたのです。
このことから「ルーチェ」がRXシリーズとしてロータリー初の市販車と言えるでしょう。ちなみに、赤いボディのRX85とクリーム色のRX87はマツダ広報提供。RX87はコーンシールドタイプのヘッドライトから69年のモーターショー仕様と分かります。
青いファミリア・ロータリークーペはドイツのアウグスブルクにあるマツダ・クラシックカー博物館フライで18年に撮影。輸出仕様はM10AではなくR100を名乗っていました。
RXはルーチェに続きカペラへ
続いてRXを名乗ったのは70年の5月に市販が開始された「カペラ・ロータリー」。ファミリアの上級モデルとして、ひと回り大きなボディに1.6リッター直4エンジンを搭載していましたが、こちらにもロータリー・エンジン仕様が設定されていました。
搭載された12A型REは、コスモスポーツやファミリアに搭載されていた10A型と基本設計は同じながらロータリー・ハウジングの幅を拡げたもの。レシプロ・エンジンで言うならばエンジンのシリンダーを太く(ボア・アップ)したようなもので、排気量は(1ローターあたり)491ccから573ccに拡大されていました。
そんなカペラはレシプロ/ロータリーともに輸出が始まり、RE搭載車を「RX2」と命名。レシプロの方は「616(1.8ℓモデルは618)」を名乗っています。写真上のRX2は、アウグスブルクのマツダ・クラシックカー博物館フライで撮影したもの。
また、同年のモーターショーに参考出品されたスポーツカーのコンセプトモデルも「RX500」を名乗っていました。エクステリアデザインは大柄のスーパーカー然としていましたが、ミッドシップに搭載したエンジンは10A型。ボディサイズも全長と全幅は4330mm×1730mmと、RX-7の最終モデル(FD系)とほぼ同サイズで、09年のモーターショーに向けてレストアされています。
緑色に塗られた個体の写真はマツダ広報提供。
70年代前半にRXシリーズがラッシュ
そして、71年にはRX-3、72年にはRX-4が誕生。「RX-3」はファミリアの上級後継モデルとして誕生したサバンナ(S102系)のトップモデルで、ベースモデルが搭載する10A型REを、カペラ・ロータリークーペと同じ12A型REに換装。開発コードはRX-3でしたが、市販モデルでは「サバンナGT(S124系)」を名乗っていました。ただし、輸出モデルの名称はRX-3だったのです。
白いボディにブルーのストライプが映えるRX-3は、ドイツのオートヴィジョン博物館で撮影。余談ですがマツダ・クラシックカー博物館フライのマツダ車コレクションも素晴らしいけれど、オートヴィジョン博物館はロータリーエンジン関連に関してはフライに負けず劣らずのいい展示車があります。RE車の始祖ドイツのNSU(エヌエスユー)やシトロエン、あるいは発電機までREが勢揃いしています。
一方、「RX-4」はルーチェの2代目(LA系)のRE搭載車が輸出仕様で名乗っていたもの。レシプロ搭載モデルは「Mazda 929」を名乗っていました。初代モデルがベルトーネのデザインでヨーロッパ・ライクなまとまりを見せていたのに対して、こちらは押し出しの強いフロントグリルに見られるように随分とアメリカナイズされていたのです。
グリーンのレザートップを纏ったステーションワゴンはマツダ・クラシックカー博物館フライで撮影。国内モデルに比べると、フロントデザインに手が入れられ、アクが弱まった印象がありますね。
ロータリーエンジンの艶やかなコスモAP
さらに75年にはRX-5が登場。国内では「コスモAP(CD系)」を名乗りました。コスモのネーミングはロータリー車の先駆けとなったコスモスポーツ以来の復活でしたが、コスモスポーツが2シーターのスポーツカー/グランドツーリングカーであったのに対して、新しいコスモAPは、今で言うところのラグジュアリークーペ。末尾の”AP”はAnti-Pollution(公害防止)の意味合いを持っていました。
先に紹介した2代目ルーチェ(LA系)/RX-4とフロアパンを共有するコスモAPには、12A/13BのRE搭載モデルとレシプロ搭載車が用意されていましたが、RE搭載モデルの輸出名がRX-5でレシプロ搭載モデルはMazda 121だったのです。
RX-5が2年後に登場するコスモLとともにマツダのフラッグシップモデルとして人気だったコスモAP。国内でのイメージカラーは鮮やかな赤でしたが、マツダ・クラシックカー博物館フライに展示されていたRX-5は紫がかった茶色のマルーン系の色に塗装されていました。国内の鮮やかな赤よりもずっと“大人”なイメージで、これもアリだと思いましたね。
ロータリーエンジン搭載車にはマツダならではの味わい深い流れがあります。
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