スバルの主力車種「インプレッサ」とSUV版の「XV」がマイナーチェンジ。話題のマツダ車と似て非なる持ち味と長短とは?
スバルは、メカニズムから外観のデザインまで、すべての車種に共通する持ち味がある。統一された車造りは、メルセデスベンツやBMWのような欧州ブランドに似ている。
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ちなみに、マツダの開発者は「マツダ車を買う、とブランドで選ばれるメーカーになりたい」という。
スバルは「ブランドで選ばれたい」とは主張しないが、以前からそのような車を造ってきた。今のマツダは、スバルを追いかけているともいえるだろう。
このスバルの主力車種となるインプレッサとXVが、2019年11月15日にマイナーチェンジを実施した。2車種を試乗して改良の成果を確認するとともに、同じ方向を目指すライバルのマツダ3、CX-30とも比べてみたい。
文:渡辺陽一郎
写真:奥隅圭之、SUBARU
【写真ギャラリー】従来型と同じようで違う!? 新型インプレッサの気になる中身
地味ながら着実に熟成!! 新型インプレッサの改良点は?
改良型インプレッサ。バンパー付近がシンプルで滑らかな形状になり、フロントグリルの上下幅を10mm狭め、なおかつ上側へ10mm持ち上げた
まず、インプレッサスポーツ「2.0i-Sアイサイト」を試乗した。
フロントマスクは、以前に比べて存在感を強めている。バンパー付近がシンプルで滑らかな形状になり、以前に比べてスッキリさせながら、インパクトを強めている。
走りに関する変更では、前後のクロスメンバー(ボディ底面の左右方向に装着された骨格)に補強を加え、ショックアブソーバーの作動も最適化した。そのために以前よりも乗り心地が向上している。
装着されていたタイヤサイズは18インチ(225/40R18)で、銘柄はヨコハマ アドバンスポーツV105。指定空気圧は前輪が230kPa、後輪は220kPaだから改良前と同様
改良後は路上の細かなデコボコを直接的に伝える粗さを抑えた。40km/h以下では少し硬く感じるが、ミドルサイズハッチバックでは快適だ。
ステアリング操作に対する車両の動きも正確になり、なおかつ自然な印象だ。もともとスバル車は操舵に対する車両の動きが穏やかで、それが良好な視界や広い室内と相まって、独特のリラックス感覚を生み出してきた。
機敏な方向に振りすぎると、スバル本来の特徴を損なうが、改良されたインプレッサは走行安定性、操舵感、乗り心地のバランスを巧みに保っている。以前と同様に後輪の接地性が高く、カーブでも、直進時でも、常に安心できる運転感覚を提供する。
安全装備と運転支援機能のアイサイトは、レヴォーグやWRX S4と同様の「ツーリングアシスト」に進化させた。
カメラが路上の白線を読みにくい渋滞時でも、先行車の動きに追従することで、操舵支援を続けられる。通常の操舵支援や車間距離を自動調節するアイサイトは、おおむね良好だ。
マツダ3と比べてどうか!? インプレッサの持ち味は??
インプレッサスポーツ/全長×全幅×全高:4475×1775×1480、価格帯:200万2000~270万6000円
インプレッサスポーツをマツダ3と比べたらどうなるか。
試乗したインプレッサ「2.0i-Sアイサイト AWD」の価格は270万6000円(前輪駆動車は248万6000円)だから、マツダ3に当てはめると、ファストバックに2Lエンジンを搭載する「20Sプロアクティブ」(251万5741円/2WD)がライバル車に該当する。
外観の評価は見る人によって異なるが、視界と取りまわし性はインプレッサが優れる。マツダ3ファストバックは、リヤピラー(柱)が太く、リヤサイドウインドウは極端に狭い。縦列駐車や車庫入れもしにくい。安全性にも悪影響を与える。
内装の質は互角か、マツダ3が少し上質だ。前席の居住性は同等になる。
マツダ3/全長×全幅×全高:4460×1795×1440mm、価格帯:222万1389~368万8463円
後席はインプレッサが広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半を確保したからリラックスできる。
マツダ3は握りコブシ1つ半だ。前席の下に足が収まりやすく、大人4名の乗車は妨げないが、インプレッサよりは狭い。長身の同乗者が座る場合、マツダ3は後席の居住性を確認して選ぶ必要がある。
2Lエンジンは、両車とも車重に対して動力性能が足りない。実用的には充分だが、マツダ3の1.5L、インプレッサの1.6Lと比べて、排気量を1.3倍に増やした効果を実感しにくい。
それでもマツダ3は、6速MTを採用した効果もあり、4300回転付近から速度の上昇が鋭くなる。加速の仕方はインプレッサよりも少し活発だ。
操舵に対する反応は、マツダ3が少し機敏に感じる。小さな舵角から車両が正確に向きを変える。インプレッサもマイナーチェンジで正確性を高めたが、マツダ3に比べるとマイルドだ。これは持ち味の違いで、良し悪しではない。
峠道を走った時も、マツダ3は車両の向きを変えやすく、旋回軌跡を拡大させにくい。その替わり後輪の接地性は少し下がるが、挙動変化は穏やかで、アクセル操作によるコントロールもしやすい。インプレッサは回頭性が少し下がるが、後輪の接地性は高く、安定指向に仕上げた。
流行りのクロスオーバー真っ向勝負!! 新型XVとCX-30の一長一短
XV/全長×全幅×全高:4465×1800×1550mm、価格帯:220万~292万6000円
次はXVの「ハイブリッドアドバンス」を試乗した。
以前のXVは、2Lガソリンエンジンも用意したが、今は廃止されて2Lハイブリッドと1.6Lのみだ。背景には将来の燃費規制があり、ほかの車種も今後の2Lはハイブリッドに順次置き換えていく。
ハイブリッドのモーターは最高出力が13.6馬力と大人しいが、エンジン回転数が下がった状態では、駆動力を効果的に支援する。
乗り心地はマイナーチェンジを受けて少し柔軟になった。インプレッサに比べると少し硬めに感じるが、おおむね快適だ。
XVは最低地上高が200mmに達するから、悪路のデコボコを乗り越えやすい半面、峠道のカーブを曲がるとインプレッサに比べてボディの傾き方が少し大きい。それでも挙動の変化が穏やかに進むから不安はない。
CX-30/全長×全幅×全高:4395×1795×1540mm、価格帯:239万2500~371万3600円(※2020年1月下旬発売予定のSKYACTIV-X含む)
マツダCX-30と比べると、居住性は、後席の足元空間の広いXVが快適だ。CX-30の後席はCX-3よりは広いが、マツダ3と同程度でXVよりは狭い。荷室容量は同程度だ。
XVの試乗車はハイブリッドの「アドバンス」(292万6000円)で、この価格に見合うCX-30は、2Lエンジンを搭載した「20Sプロアクティブツーリングセレクション」の4WD(297万円)になる。
低回転域の駆動力を比べると、モーター駆動の支援もあってXVに少し余裕があり、WLTCモード燃費はXVが15km/L、CX-30は14.8km/Lだ。XVはハイブリッドだが、燃費数値と価格はCX-30と同等になる。
走行安定性はユーザーの好みによって評価が変わる。XVは後輪の接地性が高く安心感を伴うが、峠道などでは若干曲がりにくい。その点でCX-30は、安定性は一歩譲るが、車両を内側へ向けやすい。ここは互角だろう。
乗り心地は両車ともに低速では少し硬く、速度が高まると快適になる。CX-30ではディーゼルよりも2Lが良好だ。開発者に尋ねると「マツダ3とCX-30のプラットフォームでは、ボディの軽い方が足まわりが柔軟に動く傾向にある」という。
「実用」のスバルと「情緒」のマツダ
改良型のインプレッサ&XV。マツダの競合車はフルモデルチェンジ直後と新しさも武器だが、それとは異なる持ち味で勝負。今後の販売動向にも注目だ
以上のようにスバル インプレッサ&XVと、マツダ3&CX-30を比べると、機能的にはスバル車の優れた面が目立つ。走行安定性が高く、後席も広くて荷室は実用的だ。さまざまな機能をバランス良く向上させた。
一方、マツダ車は、実用よりも情緒を重視する。
マツダ3とCX-30のボディパネルは、一種のスクリーンで、周囲の風景が美しく映り込む。いわば走るシアターだ。安全に直結する走行安定性には力を入れたが、操舵した時の機敏な反応など、ドライバーと車両の一体感も重視している。
「マツダ車を買う」とブランドで選ばれるメーカーになるためには、マツダのやり方が近道かも知れない。ただし、多くのユーザーに理解を得やすいのはスバルだろう。
特に視界の優れたボディは安全性も高めるから、情緒で攻めるマツダよりも説得力が強い。
それにしてもスバルとマツダは、日本のメーカーでは規模が小さい部類に入るが、トヨタや日産とは違う分かりやすい特徴を備えている。
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情緒で物を買う程、今の日本人は豊かでは無いのでマツダは苦労するでしょう。