もともとは戦費調達のために創設された
自動車関連税制のなかでも、自動車税は地方税で、クルマを所有することで課せられる税金だ。その税額は、エンジン排気量によって定められている。ところが電気自動車(EV)は排気量の区別がない。いわば排気量はゼロなのだから、エンジン車の場合に排気量1000cc以下に該当する最低税額の2万5000円という税額になる。
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一方、今日では登録車扱いだがもとは軽自動車だった三菱のi-MiEVと、高性能かつ高額なポルシェ・タイカンが同じ税額でよいのかという疑問はあるかもしれない。
そもそも自動車税とは、昭和15年(1940年)に創設され、目的は戦費調達にあったという。太平洋戦争は1941年に開戦するが、日本はすでに1937年から日中戦争下にあった。当時の自家用車は贅沢品とみられていたから、所有する富裕層から税を徴収した。
そのまま戦後もクルマを所有することに対する税として、自動車税は存続している。自動車税の位置づけは、一般財源であり、それは家を持つことで課税される固定資産税と同じ扱いだ。
2009年まで、道路建設と保守管理のため徴収されてきた国税が、道路特定財源に位置づけられた重量税や揮発油税である。当時は目的税として、クルマに関わることのために使われてきた。ところが、無用な道路建設などに費やされることで批判が高まり、いまでは一般財源化している。つまり、車検を取ったり継続したり、ガソリンを給油したり、クルマを使うための点検や燃料の購入で支払った税金が、クルマとは関係ないさまざまなことに使われるようになっている。
自動車税のみならず、クルマを所有し利用することに税金がいくつも張り巡らせられ、それらが自治体や国の重要な財源となっている。一方で、クルマを所有し続ける人たちだけが特別に税を徴収されている構造は、改革されずにいる。ことに公共交通機関が整備されていない地域でクルマは贅沢品ではなく、暮らしを支える必需品であるにもかかわらず、所有するだけで税が余計に課せられている。一つの、不公平税制だ。
税制が時代に追いつかなくなっている!
そのなかで、自動車税でのEVに対する車種を問わない一律の税額については、1999年にはじめられたグリーン税制により、環境性能に優れる新車は税額を減じられ、一方で初度登録から13年を過ぎたクルマは重課とする制度が実施され、今日も続くなかで、環境性能という視点を重視するなら、排出ガスゼロのEVは最低税額でよいことになる。
しかし、もとは贅沢品を所有することに対する税であったことがいまなお意味を持つなら、新車価格や走行性能、あるいは車体寸法などを基準とした税額の差があってしかるべきだろう。それをこれまではエンジン排気量の大小で判断してきたが、EVが市販されるようになって税制が時代に追いつかなくなっているのである。
エコカー減税の対象となっている重量税は、本来、車両の重量の大小で課税されている税であり、もともとの目的は道路建設や、道路の維持管理のためであったわけだから、これがEVなど環境性能に優れた車種を中心に非課税や減税になることのほうが意味は通じない。まして、一充電走行距離の長いEVは大容量のバッテリーを搭載し、車両重量が重くなるのだから、道路の保守管理に余計な負担をしいているはずだ。
つまり、自動車関連の諸税は、揮発油税のように税金にも消費税を上乗せするなど不都合な制度がそのまま継続され、また、それぞれが国税であったり地方税であったりして、国や自治体が確実に徴収できる税を手放したくないという思惑が大きく働いている。
将来的に、EVが普及していったとき、現状のままでは自動車税の税収が大きく減るのは間違いないことであり、何らかの増税案が模索されるだろう。だが、それをただ鵜呑みにするのではなく、財源の使用目的を精査し、納得できる税制へ自動車関連諸税の全体を改めさせる行動が求められることになる。
2050年の脱炭素へ向け、自動車工業会の豊田章男会長は全国550万人の自動車関連就業者の雇用に目を向ける言葉を発したが、さらには、クルマを利用する国内自動車保有台数8000万台の所有者も含めて一致団結し、自動車関連諸税に対する国や自治体への意見を述べる行動につなげていくのが、税を語るうえでの本筋だろう。
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