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待望のMのワゴン BMW M3 コンペティション・ツーリング 500Lの荷室に510ps 前編

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待望のMのワゴン BMW M3 コンペティション・ツーリング 500Lの荷室に510ps 前編

創業50周年を記念する特別なMモデル

フェラーリを創業したエンツォ・フェラーリ氏は、「お客様が常に正しいとは限らない」。といった内容の言葉を残している。その考え方は、確かに間違っていなかった。これほどのブランドを築き上げたのだから。

【画像】待望のMのワゴン BMW M3 コンペティション・ツーリング 競合モデルと写真で比較 全120枚

自動車メーカーにとって、先見性や率直性といった指向は重要といえる。時代の変化を捉えつつ、それには迎合はしない。世論に屈せず、正しいと考えることを実行するべきだろう。それでも、時には周囲に流される方が良い場合もある。

BMW M社は創業50周年を自ら記念し、特別なモデルを生み出そうと考えた。その1台がM4 CSLクーペだった。軽さを追求したハードコアなM4で、これまで2度しか使われてこなかった、特別な「CSL」の3文字が与えられていた。

過去を振り返ると、初代は1972年のホモロゲーション・モデル、E9型の3.0 CSL。その次が、2003年にリリースされたE46型M3のCSLだ。いずれも、羨望のクラシックカーとして高値で取り引きされている。

ただしBMW Mにとって、軽量なM4 CSLを生み出すことは、さほど困難な目標ではなかったはず。比較的短時間で、実りある成果が得られたといえる。

ボディカラーの選択肢は制限され、リアシートは省かれていても、英国価格は12万8820ポンド(約2061万円)もした。生産数は1000台で、適正な環境の整ったガレージを有する人へ向けたコレクターズアイテムだった。熱烈なMファンのための。

量産化されてこなかったツーリングのM3

そしてもう1台、50周年をお祝いするのにふさわしいモデルが控えていた。アイデアとしてはM4 CSLより特別だが、普段使いとの親和性は今までになく高い。そう、遂に、われわれが望んできたM3 ツーリングが誕生した。

ここで改めて、M3とツーリングという関係を確認してみよう。BMW Mは、なぜ今まで1度も高性能なDセグメントのステーションワゴンを提供してこなかったのだろう。メルセデスAMGやアウディへ伍するように。

2000年代初頭には、E46型3シリーズのプラットフォームを展開し、M3 ツーリングを密かに試作していた。しかし、量産化されなかった。その事実は2016年まで明かされることもなかった。恐らく、発売されていれば小さくない人気を得たはずだ。

一方、C 63 エステートとRS4 アバントは、高性能サルーンの身体能力とステーションワゴンの実用性を融合し、一定の支持を集めてきた。他者とは異なる、過度に主張しないようなモデルを嗜好するドライバーにとって、確かな選択肢として成長してきた。

もっとも、近年の派手なボディキットに4本出しマフラー、カーボンファイバー製バケットシートなどは、かなりのオシの強さだけれど。ランボルギーニから部品を借りてきたようにすら思える。

BMWの場合、アルピナのB3やD3がその一翼を担ってきたという事実はある。だが、M3を動的に補完するモデルともいえ、ブランドの認知度もそこまで高くはない。

市場はM3のツーリングを待ち望んでいた。BMW Mは、やっと重い腰を上げたようだ。

他に例がないほど主張の強いスタイリング

さて、筆者の目前に姿を表したステーションワゴンは、相当に存在感が強い。9万ポンド(約1440万円)以下に設定された英国の価格帯で考えると、これほど自己主張の強いスタイリングは他に例がないように思う。

リアフェンダーがマッシブに膨らみ、気候を問わず超高速で走れるワゴンというコンセプトへ見事に合致している。リアのドアパネルも専用品として造形に手が加えられていれば、一層ダイナミックに映ったことだろう。

今回の試乗車には、カーボン製のボディキットと、フロントが19インチ、リアが20インチとなる鍛造アルミホイール、カーボンセラミック・ブレーキなどのオプションが載っていた。最終的な英国価格は、10万150ポンド(約1602万円)になる。

フロントとリアには、Mアニバーサリー仕様のロゴマークがあしらわれている。これも300ポンド(約5万円)のオプション。またツーリングの場合は四輪駆動のみの設定で、コンペティション仕様しか選べないという。

もちろん、価格に見合った内容が与えられている。このカテゴリーになると、走りと実用性のバランス以上が求められるが、M3 ツーリングは抜かりない。

基本的に、通常の3シリーズ・ツーリングが備える機能や使い勝手は犠牲になっていない。テールゲートはリアガラス部分だけ独立して開閉が可能で、荷室のフロアには格納式の仕切りが付く。ゴム製で、カーブで荷物が滑るのを防いでくれる。

荷室容量は500L。リアシートの背もたれは前方に倒せ、大きな家具を積むこともいとわない。

この続きは後編にて。

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