様々な支援により支えられるスポーツ競技。移動手段や運営のサポートなど様々な形でクルマが必要となる機会も多いため、その支援として、自動車メーカーから車両提供が行われることが多い。
スバルも車両提供を行う自動車メーカーのひとつだが、なんと40年以上もの歴史があるという。
そこでスバルどんなスポーツに車両提供を行っているのか、その歴史と理由に迫ってみた。
文/大音安弘、写真/SUBARU
【画像ギャラリー】ゲレンデに、川に、道路に……スバルのスポーツ支援の歴史を見る
■スキーから始まったスポーツ支援
1976年、全日本スキー連盟の支援に、スバルは初代レオーネ4WDエステートバンを提供した。スバルの車両提供の歴史の始まりだ
スバルの車両提供の歴史は、1976年まで遡る。
全日本スキー連盟(SAJ)の支援のために、初代レオーネ4WDエステートバンが提供されたことに始まる。
意外なことに、それは国内ではなく、海外遠征地のオーストリアであった。レオーネが提供されるまでは、現地のレンタカーが使用されていたというから、移動中の不意なトラブルに見舞われたこともあったのだろう。
しかも当時は、4WD車といえば、ジープタイプが主流。世界初となる乗用4WD車は、選手や関係者の移動の心強い相棒となると共に、移動中の疲労軽減にも威力を発揮したことが想像される。
このレオーネが、SAJにとっても初のオフィシャルカーとなり、以来、歴代スバル車が活動をサポート。現在は、アウトバックを提供。その選定理由には、雪上での走破性と積載性の高さにあるという。
■適材適所の原則で提供車種を決定!
ルーフに予備の自転車やパーツを積み、チームのサポートスタッフを乗せて競技コースを走破する
現在、スバルでは、スキー以外にも自転車競技とカヌー競技に車両提供を行っている。
自転車競技では、以前はレガシィを。そして、現在はレヴォーグが提供されている。
スポーティなレヴォーグが使用される理由には、そのハードな使用環境にある。スピードを競う競技であるため、コースによって、自転車の最高速度は100km/hにも及ぶ。
さらにいえば、山岳コースも多い。そんなレース中の選手をサポートするためには、スポーツカーのような俊敏な加速や高い走行性能が求められる。
もちろん、車両には、自転車やタイヤなど多くの用品を積み込むため、積載力も重要。つまり、スポーツワゴン、レヴォーグの本領を発揮する絶好のシチュエーションなのだ。
悪天候による路面状況の悪化をものともせずに走るサポートカー。WRCで培った走破性が活きる
現在は、大会で活躍するニュートラルサポートカーとして、自転車用品メーカーの「MAVIC」と「SIMANO」にレヴォーグを提供。
このニュートラルサポートカーは、全ての選手を対象に機材提供することを目的としたもので、緊急時の修理や自転車の貸出などを行う。
「MAVIC」のニュートラルサポートカーは、ブランドカラーである黄色を纏ったレヴォーグで、通称「マビックカー」と呼ばれている。
さらに自転車チームでは、片山右京監督率いる「Team UKYO」と自動車部品メーカーの「愛三工業」を母体とする「AISAN Raceing Team」で、レヴォーグがチームサポートカーとして活躍。
このほかにも、ジャパンカップを始め、国内の主要なサイクルロードレースに、オフィシャルサポートカーを20年以上も提供しているという。
日本カヌー連盟にも車両を提供。川辺のぬかるみへの対応やルーフへのカヌーの積載性も重視している
カヌー競技では、日本カヌー連盟に2016年より協賛し、車両を提供。河川などぬかるみやすい場所でも使用するため、悪路にも対応できる走破性に加え、ルーフキャリアへのカヌーの積載性も重視。そのため、スバルXVやアウトバックが提供されている。
またスポーツ競技ではないが、2020年7月には、夏季の「水辺の事故ゼロ」を目指す活動をサポートするため、日本ライフセービング協会(JLA)にフォレスターなど12台のスバル車を提供し、「SUBARUライフセーバーカー」として活躍。
新型コロナウイルス感染症の影響で、海水浴場の開設が見送られた海岸で事故を防ぐべく、救命用機材を積み込み移動可能なライフセーバー本部などに使われた。
■スバルがサポートする理由
もちろん今でもスキー競技への支援は続いている。車種こそは変わったがスバルのスポーツを愛する心意気は変わらない
スバルが車両提供を行う理由として、スバル車のAWDによる走破性や高い積載性から、古くから様々なアクテビティやスポーツと親和性の高いことを挙げる。
単に多目的に使えるだけでなく、雪上、悪路、そして、レース中の追従による支援など、様々な性能が求められるサポート車両として、スバル車は適任といえる。
特にサポート車の運動性能も重要となる自転車競技では、かつてはあれほど充実していた国産スポーツワゴンも今やレヴォーグのみ。まさにレヴォーグ以上の適任はいないといっても大げさではないはずだ。
提供先である競技関係者からのスバル車の評判は、上々だそうで、特に「アイサイト」を はじめとした運転支援機能による安心・安全な移動が大きいという。特に、競技後の帰路は、乗員も疲れた状態にあるため、運転支援機能の疲労軽減や安心感は、心強いサポートとなっているようだ。
サポートカーと聞くと、何か特別感が感じられるが、性能や機能に置いて、スバルでの特別な改造は施していないという。
ただ車両開発の段階から、あらゆるスポーツでアクティブに使用されることを想定しているとのこと。
スポーツ競技の裏方であるサポート車両だが、その活躍にも注目してみると、そのクルマの持つ魅力や強みを、より理解することができるだろう。そして、何よりもスポーツ愛好者には、趣味の相棒となる愛車選びのヒントにも繋がりそうだ。
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