7月初旬の発表以降、新型ジムニーの周辺がたいへん騒がしいことになっている。ジムニー関連の本の売れ行きやウェブのPVはどこも好調。スズキ側のスタッフも、「カタログの捌け具合が異常」だという。なんでこんなことになってしまったのか、確かめるべく、ジムニー/ジムニーシエラ試乗会に乗り込んだ。PHOTO&REPORT●森本太郎(MORIMOTO Taro) PHOTO●中野幸次(NAKANO Koji)
ジムニーは、副変速機付きのパートタイム4WD機構をもつ本格オフローダーだ。軽自動車のため排気量は660cc。これのトレッドを広げワイドフェンダーを纏い、1.5ℓエンジンを搭載した小型登録車がジムニーシエラである。正直、ワイドフェンダーを張り出したシエラのスタイルは迫力満点で格好いい! 一方のジムニーは、シエラからワイドフェンダーを取り去っただけなのだが、ずっと気軽で軽快なイメージがある。林道をどこまでも奥深く分け入る、という用途ならば、小さい軽サイズのジムニーがより便利だろう。実際に日本での先代モデルの販売割合は、ジムニー9割に対してシエラが1割程度と、基本はジムニーが占める。軽自動車枠のない海外では逆に、日本でいうところのシエラ(小型車)がジムニーそのものだ。
SUVブームの昨今、新型ジムニーは、乗用SUVが他にたくさん存在するからこそ、林業従事者などプロユースに徹底的に照準を合わることができたという。つまり、乗用SUVを横目で意識するような中途半端なコンセプトにはなっていないということだ。ジムニー(5MT)からハンドルを握ってみると‥‥、ラダーフレーム、パートタイム4WDの本格オフローダーゆえ、背の低いモノコック乗用車と比べれば、ハンドルを切るタイミングやロールの仕方に違いはある。登坂時のトラクションを得るためにギヤ比は低いから、テンポ良くシフトアップしていかないと、すぐに回転が上がってしまう。同時期デビューのN-VANと比べると27cmもホイールベースが短いなど、ディメンションも独特だ。ただし、そんなことを考えながら走るのは最初だけで、すぐに慣れてしまってジムニーのリズムで運転することが楽しくなってくる。
20年ぶりのモデルチェンジだから当然かもしれないが、記憶にある先代モデルとは、乗り心地や操安の印象もずいぶん違う。フレームはじめ主要なパーツの新設計や、ステアリングダンパーの採用も奏功している。ステアリングに対する車体の反応や、しっかりと真っ直ぐ走ること。ワイルド!な振動から解放されてい点など。「ジムニーだから」と我慢を強いられることがない。全体的な印象として、より洗練され、快適レベルも上がっている。ジムニーに快適など求めないというマニアもいるだろうが、新型は、たとえばおしゃれなスタイルやかわいいカタチのクルマがほしい、と思っているクルマに詳しくない女性にも勧められる快適レベルをクリアしていることは確かだ。
シエラは、AT車に試乗した。車重はAT車同士ならジムニーよりも50kg重い1090kgだが、その重量以上にフィーリングの違いが感じられる。重量感や落ち着きは、軽快な印象のジムニーと比べるとはっきりと違うのだ。1.5ℓエンジンは、660ccターボと比べればトルクで1.35倍、パワーで1.6倍も違うから、当然ながら余裕がある。ただし、ブン回して走るクルマではないから、この余裕はクルージングや高速道路の移動でより楽にゆったり走れるための余力といったところだろう。ちなみにATは4速で、やはりローギヤードだ。多段化が叶うなら、いろんな意味で都合が良いだろう。
バリバリのオフロードコースも試乗することができた。急斜面の登りと下り、モーグルコースなどさまざまな路面を試したが、ブレーキLSDトラクションコントロールの恩恵もあって、踏破力そのものもさることながら、むしろ踏破するために特別な技術やコツを必要としないことに驚かされる。適切にハンドル操作する以外に、何もすることがないのだから。
ジムニーはあくまで本格派のクロカン四駆であって、四駆性能こそが何よりのセリングポイントであることは間違いない。ただその上で、この新型はオフロードに行かない街乗りユーザーにも十分お勧めできると断言できる。まず、先代比で快適性や操安性が大幅にアップし、気兼ねなく普段使いができるようになったこと。先祖返りしたような四角くシンプルなスタイリングが時代にマッチしていること。さらに、ジムニーはあくまで本物の機能性能が求められる人たちのために妥協なく仕立てられているから、ホンモノへの憧れや格好良さを喚起すること。Gクラスやラングラーが街乗りユーザーに人気なように、ジムニー/ジムニーシエラはスタイリッシュなコンパクトスペシャリティとしても、ますますユーザー層を広げそうだ。価格が安くて無駄がないことも、時代のムードに合っている。
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