この記事をまとめると
◼︎ミズノから新作ドライビングシューズが登場
これが「運転」に命をかけるマツダの本気! ミズノと共同開発した「ドライビングシューズ」が圧巻の完成度だった
◼︎ベアクラッチLはシックな雰囲気をもつ本革のシューズだ
◼︎デザインと履き心地、操作性を兼ね揃えた自信作となっている
ミズノはドライビングシューズに本気
2021年。WEB CARTOP編集部に少し変わった相手から取材の案内が来た。
そう。マツダとスポーツ用品総合メーカーのミズノが共同で開発したドライビングシューズの体験会だ。自動車メーカーのロゴをくっつけたドライビングシューズは世の中に数多くあれど、自動車メーカーと共同開発したシューズとは、なかなかユニークではないか。それもクラウドファンディングで購入者を募るというものだったので、かなり意欲的な活動と感じたのをよく覚えている。実際、4万円弱ほどの価格だったにもかかわらず、用意した数は早々に売り切ったそうだ(現在はマツダスピリットレーシングとコラボしたデザイン違いのモノが販売されている)。
ドライビングシューズと聞けば、実際に普段用とレース用の2足をもっている身からすると、ややシューズ内がタイトでソールも薄め。”ドライビング”と謳ってるだけあって、やはり運転に特化した仕様で歩行は二の次。普段履きするには億劫に感じる人も少なくないと思った。筆者もそのひとり。結局レース用以外はろくに履いたことがない。俗にいう宝のもち腐れ。
しかし、このミズノのかかわったシューズは、長年のシューズ開発で培ったノウハウがフル投入されているドライビングシューズということで、「軽い」「歩きやすい」そして「運転しやすい」と、まさに夢のようなシューズであった。
マツダとコラボした製品を出したあと、ミズノは限定品ではなくカタログモデルとして、「ベアクラッチ」というシューズを2022年にリリース。こちらも当時、もちろんテストさせてもらった。
「軽い」「歩きやすい」「運転しやすい」の要素はそのままに、スニーカーっぽいデザインという仕立てで、マツダとのコラボ品とは異なり、ローカットのデザインが特徴だ。これなら色次第ではどんなシーンでも使えるし、価格もお手頃(公式通販にて税込1万7380円)。マツダ車オーナーでなくても履ける、まさにいいことづくめ。実際、クルマ系のイベントなどで履いている人を何人も目撃している。
そんなミズノのドライビングシューズだが、前作登場から2年。聞くところによると、ベアクラッチの販売が好評とのこと。「もうこれ以上は出ないだろう」なんて思ってたころにちょうど筆者に電話が。
「井上さん。また新製品が出るのでもってきます!」と。
後日、製品紹介とのことで、筆者の目の前に担当者とともに現れたのは、やや燻んで大人しい上品な赤色のシューズ。製品名は「ベアクラッチL」だ。カラーはこのほかに「ブラック」と「ネイビー」が用意される。
「この間出したベアクラッチ、じつは年間の目標販売数を4カ月でクリアするほど大ヒットだったんですよ。ただ、色とデザインが若干若々しいので、50代や60代くらいの方から、『カジュアル方向ではなく、もう少し高級感が欲しい』という要望が想像以上にきまして……」と語るのは、最初のシューズから付き合いのあるミズノのベアクラッチ担当。
「今回の特徴は、本体を天然皮革で作ったことです。これにより高級感とフィット感を両立しています。道具としての所有感を満たしながら、ドライビングも歩行(買い物)も楽しめる意欲作です」と語る。
マニアというわけではないが、靴などに少しこだわりのある筆者としては、かなりいいコンセプトだと直感で思った。ドライビングシューズをわざわざ選ぶような人は、ハッキリいってクルマオタクだ。クルマオタクは、自身の愛車はもちろん、そのほか自身が使う道具にもこだわる人は少なくない。
つまり、本革で作られたドライビングシューズということは、革のお手入れまで楽しめてしまうのだ。革は使えば使うほど、唯一無二の表情をする。オタクにはピッタリの商品ではないか。まさにオーナーと成長するアイテムだ。
そんなベアクラッチL、なんと見せていただくだけではなく「実際に履いてみてほしい」とのことで、筆者に預けてくれた。ということで、愛車を使ってテストしてみることに。
愛車の運転がより楽しくなる
さて。待望のベアクラッチLを手にし、いざテスト。という前に商品を改めて観察してみた。
まず重量だが、本革を使っているにもかかわらずかなり軽量だ。ランニングシューズほどではないが、自身が普段履いているシューズとなんら変わりないどころかむしろ軽く感じる。ミズノの技術には毎度驚かされるばかり。
次に見た目だが、先述したとおり、かなりシックで上品だ。テスト品の赤に限っては、つま先側と踵側に若干焦げのような感じで燻みを持たせている表現も憎らしい。いかにも「革製品です!」といった具合だ。こういった演出、じつに高級感に溢れる。
この日はやや暗めの色のジーンズを履いていたが、「真っ赤!」といった感じもしないので、普段着にもよく馴染む。さりげないエンボス加工されたランバードのエンブレム(ミズノのロゴ)もいいバランス。
心臓部となるソールは、マツダとのコラボシューズやベアクラッチ同様に自慢のミズノコブを採用したものとなっている。ミズノコブとは、履き心地や歩行時のクッション性を確実に確保しながら、ドライビング時のペダルフィールも追求した、まさにベアクラッチシリーズの心臓部。3モデル共通で採用されているので、どれを買っても同じ履き心地なのだ。
ここまでソールに全力投球なドライビングシューズは、恐らくミズノくらいだろう。スポーツ総合用品メーカーのプライドを感じる部分だ。
ヒールは、ドライビングシューズではお馴染みの上の方までラバーで覆う仕立てとなっており、ペダル操作がしやすくなっている点が特徴だ。踵を軸にペダル操作をするのが基本なので、ここの造形が見逃せない。
それと、筆者が所有するドライビングシューズと比較するとわかるとおり、このベアクラッチL(ベアクラッチも同様)、幅がやや広めに作られている。これは、日本人特有の幅広でありながらも足の甲が薄めという人種の特徴を取り入れているから。比較品は欧州メーカーのものなので、日本企業のミズノだからこその設計だ。
履いてみると、すぐに本革の靴ならではの、足を包むような感覚がして、フィット感は抜群だ。革靴は履けば履くほど馴染むはずなので、これは成長に期待大。
歩いてみると、ドライビングシューズにありがちなペタペタするような薄いソールの感触は皆無。先述のミズノコブがとてもいい働きをする。このまま散歩に行くのも楽勝。普段クルマに乗らないという人でもイケるくらい優秀なソールとなっている。
とはいえこれはドライビングシューズ。ドライブついでに1日履いてみた。
やはり感じたのは、軽さからくる操作性のよさと、ソールの薄さによるペダルタッチのフィーリングのよさ。普段一般的なスニーカーで乗ることがほとんどならば、「オレのクルマ、こんなレスポンスだったっけ?」と、いい意味で感じるほど。
普段のスニーカーで運転すると、ペダル操作が3段階みたいにわけられるとすれば、ベアクラッチLを履いて操作をすると、1段階くらいでペダルを操作できる感覚だ。つまり、より細かいペダルワークができるので、運転がよりスムースになる。よって、同乗者に不快な揺れを与えることが減るし、丁寧なアクセルワークをサポートすることでわずかかもしれないが燃費向上にも結果的に働く(はず)。
筆者のクルマはいわゆるネオクラ。ヒール&トゥなんていう中国何千年の歴史……的な技もたまには必要なのだが、これもとてもやりやすい。靴が軽いだけでなく、重量バランスも意図的なのか、考えてられていることもあり、足がスパッと動く。ソールもグリップ力が高いので、すっぽ抜ける感じもしない安定感。
アッパー(足の甲側)の革は、足に馴染むソフトな感覚がありながらも。程よい剛性感があり、捩れ感も少ない。足をしっかり支えながら動きを確実にサポートする。それとこの赤い色も愛車のタイプRとピッタリだ。
愛車が好きすぎるので、普段からずっと乗ってたいという感じでクルマに触れているが、より運転を楽しませてくれるシューズの仕上がりに脱帽といったところ。
「お前、褒めてばっかりいないでダメなとこも探せよ!」と、読者諸兄からツッコミもきそうなので、ネガな点も探したいのだが、すみません。正直ありません。本当に強いていうならデザインが大人しいくらいだが、これは好みの問題だし、そもそもターゲット層は筆者の倍くらい人生経験を重ねた人たち。多分この意見はお門違い。
もし、このシューズが「5万円!」みたいなプライスだったら、恐らく忖度なしに「高すぎなのでお金もちはご検討を~」くらいで締めるかもしれない。しかしこのベアクラッチL、「本革」「ミズノコブ」といった要素が入っていてなんと税込1万9800円(公式通販価格)。通販番組みたいな紹介になってしまうが、この価格にはちょっとビビる。担当者には「正気ですか?」といったほど。
まぁ相手は大企業。儲かるからこの価格設定なわけだが、ちょっと安すぎやしませんかね。「安くねーよ(笑)」なんて思ってるそこの人、「本革 ドライビングシューズ」みたいなワードでぜひググってほしい。これ、ミズノの本革シューズですからね?
ちなみにこのベアクラッチL、2025年1月10日(金)~ 1月12日(日)に千葉県の幕張メッセで開催される東京オートサロン、2025年2月7日(金)~2月9日(日)に大阪府のインテックス大阪で開催される大阪オートメッセのミズノブースで試着、その場で購入もできるそう。気になった人はぜひ現地でミズノ社員たちによるプロのフィッティングのもと、お試しあれ。サイズは24.5~28.0cm(EE)までで、0.5cm刻みで用意される。
ドライビングシューズというややニッチな世界ではあるが、間違いなくこのジャンルにカルチャーショックを起こしたであろうベアクラッチL。ドライブ好きであれば1足持っておいて損はないはずだ。
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