2010年3月、ランボルギーニ ガヤルドに「LP570ー4 スーパーレジェーラ」が設定された。2007年に登場した「スーパーレジェーラ」とは異なり、「LP560ー4」をベースに、駆動方式はそのままに超軽量化(=スーパーレジェーラ)し、戦闘力を高めたモデルだった。当時のランボルギーニの狙いはなんだったのか。ここでは欧州で行われたサーキット試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年6月号より)
カーボンファイバーの積極利用で70kgものダイエットに成功
ランボルギーニはブランドの方向性を、そのワイルドスピードなスタイリング趣向に加えて、最高速ではなくハンドリング重視のパフォーマンス目標に転じている。スーパースポーツカーに降りかかる”未来のさまざま“を見通してのことであろう。その第一歩として、彼らが最も熱心に取り組んでいるのが、カーボンファイバー素材であった。
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彼らは独自のカーボンファイバー戦略を、おそらくは次期型フラッグシップやガヤルド後継において具現化すべく、ワシントン大学内に「ランボルギーニ先進複合素材構造研究所」を設立したり、航空機のボーイング社と共同開発を進めたりしている。その成果の一端が”スーパーレジェーラ=超軽量“と名付けられたガヤルドのスーパーモデルに供されているのだ。
ノーマルのLP560-4に比べて、新型LP570-4スーパーレジェーラは、70kgものダイエットに成功している。そのうち半分強にあたる40kgが、カーボンファイバーの積極利用によるものだ。エアロパーツやドアトリム、トランスミッショントンネルカバー、シートシェルなどに、大胆にカーボンファイバーが使われているが、中でもエンジンフードに注目して欲しい。
この比較的大きなスペースを軽量カーボンに代える意味はよくわかる。ただし、それだけではない。エンジンを丸見えに演出するクリアカバーをポリカーボネートとし、カーボンとの接合に最新の航空機技術を使った。ガヤルドのカーボン利用で言えば、そこがまず新しい。ちなみに、サイドウインドウやリアスクリーンもポリカーボネートである。
ここで記憶力のいいスーパーカーマニアであれば、以前のスーパーレジェーラがノーマル比マイナス100kgを達成していたと落胆するかも知れない。今度は「たった成人男性一人分かよ」である。ただし、これには前提条件の違いがあって、もともとガヤルドはLP560-4へマイナーチェンジするにあたって、前型比20kgという軽量化を果たしていた。これは前作スーパーレジェーラ開発の成果でもあった。
しかも、直噴化などメカニカルコンポーネンツの重量は増している。そんな中でのマイナス70kgは、ほとんど乾いた雑巾を絞るようなものだったであろう(たとえばアルカンタラは超薄タイプである)。
車名にある通り、最高出力はノーマルプラス10psの570psを得た。これは主にエンジンマネージメントのチューニングによるものだ。旧スーパーレジェーラの40ps増しとなり、それでたった10kg増なのだからパフォーマンスの向上は火を見るより明らか。パワーウェイトレシオは驚愕の2.35kg/psを誇っている。
きっちりとした手応えがあり乗り手の意志どおりに曲がる
ハンドリングの向上策はどうか。これにはワンメイクレース用車両であるスーパートロフェオのノウハウが詰まっている。
三次元の立体的なフロントバンパーの奥には、スーパートロフェオ由来のシャシが収まった。ダンパーは2割スローになり、ブッシュ類は約2倍に硬められている。もちろんESPも専用チューニングだ。これらはすべて専用セッティングのピレリPゼロ・コルサや、専用19インチ鍛造アルミホイールといった足まわりの軽量化と総合的に向き合いつつ、ハンドリング性能の向上を目指すためのものである。
サーキットでの15ラップのみという限られた試乗だったが、彼らがブランディングの柱とするハンドリング性能向上には目を見張るものがあった。
走り出した瞬間にノーズの動きのクイックさに驚く。しかもそれはフェラーリ系のような過敏さではなく、きっちりと自然な手応えを残したシャープさだ。どちらがいいか好みの分かれるところかも知れないが、4WDであることをライバルに対するひとつのアドバンテージだとするランボルギーニにとって、ハンドリングフィールひとつをとっても、跳ね馬との差別化をはっきり図りたかったということだろう。
ノーマルのLP560-4といえば、とくにサーキット路面においては前輪の食いつきが良過ぎて、楽しく曲がって走らせるには少々厄介なクルマではあった。ところが、スーパーレジェーラではそれがほとんどない。きっちりとした手応えを残しつつも、乗り手の意思通りきれいに曲がっていく。伝わる情報も正確で理解しやすく、それゆえコントロール性はすこぶる高い。アウディR8並みに楽しめるミッドシップカーだ。
もちろん、パワフルさはこの上なし。エンジンパワーというよりも、軽いことのメリットをひしひしと感じる。最初のひと転がりと、中間加速が本当に素晴らしいのだ。加速中は、車体にはまるで引き締まった筋肉のように緊張感が漲った。そこがまた、たまらない。(文:西川 淳)
ランボルギーニ ガヤルド LP570ー4 スーパーレジェーラ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4386×1900×1165mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1340kg
●エンジン:V10DOHC
●排気量:5204cc
●最高出力:419kW(570ps)/8000rpm
●最大トルク:540Nm/6500rpm
●トランスミッション:6速AMT
●駆動方式:4WD
●最高速:325km/h
●0→100km/h加速:3.4秒
※EU準拠
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