2020年1月9日、ステップワゴンの一部改良が行われたが、そのなかに注目すべき内容が含まれていた。
現行ステップワゴンの最大のウリの1つ、「わくわくゲート」のない仕様が用意されたのだ。
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「わくわくゲート」は、後ろが狭くても荷物をサッと積み込め、ヨコにもタテにも開く、ホンダらしい新発想のリアゲートなのだが、なぜ採用しない仕様を用意したのか?
かつてミニバンカテゴリーでトップを走っていたステップワゴンだが、今は新車販売においてトヨタヴォクシーや日産セレナの後塵を拝している。ステップワゴンはなぜ勝てなくなったのか?
その理由について、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底分析。核心に迫る!
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ホンダ
【画像ギャラリー】わくわくゲートを採用したステップワゴン詳細写真
わくわくゲートを装備しないグレードを用意
2015年4月24日に発売された現行ステップワゴン
2020年1月9日にミドルサイズミニバンのステップワゴンが一部改良を行った。ハイブリッドシステムの名称を「e:HEV/イーエイチイーブイ」に変更して、一部グレードのシート表皮には撥水撥油加工も施している。
トピックスは「わくわくゲート」を装着しない仕様も用意したことだ。
「わくわくゲート」とは、上下方向に開くリアゲートに、左右方向に開閉できる縦長のサブドアを組み込んだものだ。
縦列駐車をしているような狭い場所でも開閉できる。予め3列目シートの左側を畳んでおくと、乗員が最後部のサブドアから出入りできるメリットもある。このように「わくわくゲート」はステップワゴンのセールスポイントだが、不要と考えるユーザーもいるために非装着車を設定したのだ。
横からさっと、「わくわくゲート」を開ければ3列目から犬の乗り降りもスムーズ。ベビーカーも3列目シートを格納すれば畳まずにラクラク収納。自転車などの大きなものを積む時は通常のバックドアと同じように上に開けることができる
クルマの後ろにスペースがない場合でも、後ろのドアをヨコに開ければ、大人数の子供たちが3列目シートから乗り降りする時にも便利な「わくわくゲート」
ただし、ステップワゴンの装備品表を見ると、「わくわくゲート」は今でも全車に標準装着され、一部のグレードにレスオプションが用意されている。
なんと、「わくわくゲート」はコストの高い装備なのに、非装着を選んでも価格は下がらず、割高になってしまう。そうなると非装着車のメリットは、車両重量が10kg減ることだけだ。前向きな変更とはいえない。
また以前は「わくわくゲート」を装着しない低価格グレードとして、標準ボディのBホンダセンシングを用意していたが、一部改良で廃止された。
売れ行き不振の原因はどこにある?
2019年9月のマイナーチェンジでコワモテになったセレナハイウェイスター。ステップワゴンのライバルのなかで、最も売れているのがセレナだ
ちなみに現行ステップワゴンは2015年4月に登場しており、2014年1月発売のヴォクシー&ノアに比べて基本設計が新しい。
それなのに売れ行きは低迷している、2019年1~12月の登録台数は、1カ月平均で4390台だ。中堅水準の実績ではあるが、ライバル車となるセレナの1ヵ月平均が7746台、ヴォクシーの7334台に比べてかなり少ない。
■ステップワゴンとライバル車の2019年新車販売台数
セレナ 9万2956台(93.1%)
ヴォクシー 8万8012台(97.0%)
ノア 5万2684台(92.9%
ステップワゴン 5万2676台(92.6%)
※カッコ内は対前年同月比
特にヴォクシーはノアやエスクァイアと姉妹車の関係にある。実質的に同じクルマだから3車種の登録台数を合計すると、1か月平均で1万5265台だ。ステップワゴンの売れ行きは、ライバル車に比べて明らかに少ない。
標準ボディを5ナンバーサイズに抑えたミドルサイズミニバンは、実質的にステップワゴン、セレナ、ヴォクシー系3姉妹車のみだ。
そこでステップワゴンをライバル車と比べると、各種の機能は劣っていない。ステップワゴンは低床設計で、床がセレナよりも約70mm低く、乗降性が良い。重心も下がり、走行安定性も優れている。
3列目のシートは、座面の奥行寸法が短い半面、床下に格納できるからスッキリと広い荷室に変更できる。3列目を畳んでおくと、前述の通り、リアゲートのサブドアから乗り降りすることも可能だ。
ステップワゴンの室内の使い勝手はよく、これが売れ行き不振の原因にはなっていない
またステップワゴンでは発売当初からホンダセンシングが採用され、歩行者も検知して衝突被害軽減ブレーキ(緊急自動ブレーキ)を作動できる。車間距離を自動制御するクルーズコントロールなど、運転支援機能も充実している。
売れない理由は外観のデザイン?
2015年4月デビュー当時のステップワゴン(左)とスパーダ(右)
わくわくゲートを採用したステップワゴンのリアスタイル
それでもステップワゴンの売れ行きが伸びない理由として、まず外観デザインが挙げられる。
現行型の登場時点で、標準ボディだけでなくエアロパーツを装着したスパーダも、メッキグリルの輝度を抑えた大人しい顔立ちだった。これでは標準ボディと同じように見えてしまう。
開発者に理由を尋ねると「派手なフロントグリルはほかのミニバンも採用して個性が乏しいから、ステップワゴンは抑制を利かせた」という。
この意図は理解できるが、最近のステップワゴンは、いつも地味な顔で登場して売れ行きが伸びず、マイナーチェンジで派手に変更している。
現行型も2017年9月のマイナーチェンジで、スパーダのフロントマスクを大幅に変えた。この繰り返しをするなら、最初から売れ筋路線で登場した方が良い。販売に弾みが付き、その後も堅調な売れ行きを保ちやすいからだ。
2017年9月のマイナーチェンジで スパーダ系は外観が変更され、ヘッドライトをLED化され、フロントグリルのデザインやテールゲートスポイラーの形状が変更された
ミニバンで大切な内装でも、ステップワゴンは個性が乏しい。セレナはS(スマートシンプル)ハイブリッドのシートアレンジを充実させ、2列目の中央を1列目の間までスライドさせると収納設備として使える。
この状態では2列目の中央に空間ができるため、車内の移動もしやすい。ヴォクシー系3姉妹車は、3列目シートがレバー操作だけで持ち上がるようにした。2列目の長いスライド機能も含めて、使い勝手に工夫を凝らしている。ステップワゴンでは、このような初めて見た人を感心させる実用的な特徴が乏しい。
低床で乗り降りもしやすく使い勝手はいいが、個性が乏しいと渡辺陽一郎氏は指摘する
ステップワゴンの販売が伸び悩む理由に、今のホンダのブランドイメージもある。2019年1~12月の販売実績を見ると、軽自動車がホンダ車全体の50%に達した。
さらにN-BOXだけで、国内で売られたホンダ車の35%を占めてしまう。そこにコンパクトミニバンのフリード、コンパクトカーのフィットも加えると、国内で売られたホンダ車の75%に達する。
こうなるとホンダのブランドイメージは、小さなクルマを中心に扱うスズキやダイハツに近付く。クルマ好きから見れば、ホンダは今でもNSXやシビックタイプRをそろえるスポーツモデルのメーカーだが、ミニバンを買う人達の見方は違う。
ホンダは軽自動車や全長が4m前後の小さなクルマを造るメーカーで、ミドルサイズのミニバンはトヨタと日産の領域に入るのだ。
そのためにホンダで堅調に売れる車種の上限はヴェゼルになり、オデッセイ、CR-V、シビックなどはすべて伸び悩む。
販売力の問題も見逃せない。N-BOXが国内販売の1位になり、小型車も1.5L以下が好調に売れると、ミドルサイズやLサイズの販売促進に力を入れる余裕はない。販売店は軽自動車とコンパクトな車種を売るので手一杯だ。
ステップワゴンが売れない理由はココにある!
以上のようにステップワゴンは、機能についてはセレナやヴォクシー系3姉妹車に見劣りしない。
しかしデザインのインパクトが乏しく、ホンダのブランドイメージも軽自動車とコンパクトな車種に偏り、ディーラーの販売力も奪われた。
その結果、売れ行きを下げている。いわばクルマの販売を支える総合力で、ステップワゴンは負けたことになる。
ホンダはミニバンや軽自動車を豊富にそろえ、国内市場にも力を入れている。それだけにステップワゴンが低迷するのは残念だ。
軽自動車偏重から脱して、もう少し販売のバランスを整えると良い。ステップワゴンは惜しいところで好調の波に乗れていない。
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みんなのコメント
相変わらずオカシなことをもっともらしく書くよーいちろーさんだな。
例えば3代目ステップワゴンは間違いなく個性的だった。
背高高重心のクラスの中で、ただ1台低全高低重心で運動性能を高めた。
でも売れなかった。
ユーザーのニーズに合わなかったからだと私は思う。
「多少運動性能が劣っても、高いところから他車を見下ろしたい。見晴らしがいい車に乗りたい。」
「同じ値段なら広い車に乗りたい。」
という思いに気づけなかったことが敗因だと思う。
予防安全性能は現行ノアより確実にいいし、夜間・雨天だったらカメラのみのセレナよりミリ波レーダーを併用する本車の方が上だろう。実燃費だって負けないし、売れる要素は十分にあると思う。
後は使い勝手とデザインだろう。これは少ない投資で改善できるだろうからからぜひ頑張ってほしい。
相変わらず独善的かつ偏向性の強い記事を書くよういちろーだったなあ。