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【メルセデス・ベンツE350e試乗】乗るクルマにも社会性が求められるエグゼクティブのためのショーファードリブンカー

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【メルセデス・ベンツE350e試乗】乗るクルマにも社会性が求められるエグゼクティブのためのショーファードリブンカー

日本でメルセデス・ベンツの先進的パワートレインといえばやはり、一度は絶滅しかけた乗用ディーゼル車を復活させる立役者となったクリーンディーゼルエンジン「ブルーテック」だろう。だが2009年9月には輸入車初のハイブリッドカーとして「Sクラスハイブリッドロング」を導入。以後GLCやCクラス、そして昨年8月にはEクラスセダンに「E350eアバンギャルドスポーツ」を設定。電動パワートレイン車もいち早く日本へ展開し、以後ラインアップを拡充している。今回はその最新モデル・E350eに都内で試乗する機会を得た。

「E350eアバンギャルドスポーツ」は、「E250アバンギャルドスポーツ」と共通の211ps・350Nmを発する2.0L直4直噴ガソリンターボエンジンに、88ps・450Nmを発生しブースト機能も持つ大容量モーターを組み合わせ、システム全体で286ps・550Nmを発生。そのモーターの直後に9速ATを、トランクルームに6.28kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載して、JC08モード燃費15.7km/Lを達成している。

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なお、モーターのみ使用する「E-MODE」では最長航続距離20.1km、最高速度130km/hのEV走行が可能。リチウムイオンバッテリーへの満充電は「CHARGE」モードでの走行で1時間以内、AC200V電源使用で約4時間以内となっている。

プラグインハイブリッドシステムモードとしてはそのほか、エンジンとモーターを併用する「HYBRID」と、その時点でのバッテリーの充電レベルを維持する「E-SAVE」モードを実装。

またセンターコンソール左側の「ダイナミックセレクトスイッチ」で、燃費を優先する「Eco」、快適性を優先する「Comfort」、スポーティな「Sport」、最もダイナミックな「Sport+」、好みの走り・快適性・燃費性能を組み合わせられる「Indivisual」から、スロットルレスポンス、ATのシフトスケジュール、パワーステアリングのアシスト量、電子制御ダンパー「アジリティコントロールサスペンション」の減衰力など、走りの特性を変更することが可能だ。

それでいながら、「E350eアバンギャルドスポーツ」の価格は8,110,000円と、同じエンジンを搭載し、パワートレイン以外の装備内容もほぼ変わらない「E250アバンギャルドスポーツ」の7,880,000円に対し23万円高に抑えられている。そのため、メルセデス・ベンツ日本によれば、コストパフォーマンスが非常に高いことから、日本導入以来販売は好調に推移しているという。

だがPHV化に伴い、車重は「E250アバンギャルドスポーツ」より270kg増え、1980kgに達している。これにより、走りは通常のガソリン車に対しどのように変わっているのだろうか? なお、試乗車に装着されていたタイヤは、フロントが245/40R19 98Y、リヤが275/35R19 100Yのピレリ・チントゥラートP7(ランフラット仕様)だった。

PHV化による走りの違いは?

現行Eクラスに設定されているパワートレインは全てターボ化されており、最も低スペックなE200用の2.0L直4直噴ガソリンターボエンジンでも184ps/5500rpm・300Nm/1200-4000rpm。以前試乗した「E200アバンギャルドスポーツ」(車重1700kg)でも、発進から高速巡航まで充分以上の加速性能を備えていた。

それが、車重が2t近いとはいえ、E350eが搭載するモーターの最大トルクは450Nm。E-MODEで発進してもアクセルペダルを力強く踏み込めば、背中をシートバックに押しつけられるほど強烈なダッシュを見せてくれる。

その他のモードで走行し、20km/h付近でエンジンが始動しても、過給圧を高めて211ps/5500rpm・350Nm/1200-4000rpmとした2.0L直4ターボがトルクの細さを感じさせるはずもなく、怒濤の加速をそのまま続けるのだから圧巻だ。ただし、パラレル式ハイブリッドシステムの宿命か、エンジン始動時には速度域を問わずショックを伴うため、完全にシームレスな加速とはいかないのが玉に瑕だ。

そして、このE350eには回生協調ブレーキが実装されているのだが、この回生ブレーキと油圧ブレーキとの協調制御が熟成不足。強めに減速して停止する際、その直前に踏力を緩めても、回生ブレーキによる減速が残り、車体がつんのめってしまう。また、真綿を締めるような抜群のペダルタッチとコントロール性も損なわれ、人工的なフィーリングに終始するのも、残念と言わざるを得ない。

だが、走行モードを「Sport」または「Sport+」にすれば、回生協調ブレーキが停止されるため、他のモデルと同じ油圧ブレーキだけでの減速を得ることは可能だ。無論、その分減速時のバッテリー充電量は減り、ブレーキの消耗は増えて大量のダストをまき散らすことになるため、全くもって環境に優しくないPHVになってしまうのだが。

一方でハンドリングは、「アジリティコントロールサスペンション」の助けもあって、車重2t弱とは思えないほど軽快かつリニア。しかし乗り心地は、フラットライドに終始するガソリン車と全く同じ乗り味とはいかず、特にフロントが路面の凹凸を正直に拾って跳ねる傾向がハッキリ見られた。

今回の試乗は他のジャーナリストの方との2名乗車で行われたため、幸運にも後席に乗る機会が得られたのだが、いざ走り出すと、それまで抱いていた印象が一変する。特に突き上げが、前席とは比較にならないほど弱いのだ。さらに、さほど大きいとは感じていなかったロードノイズも前席より明らかに少なく、極めて快適に過ごすことができる。

そしてこれは、Eクラスセダン全体に言えることだが、フロントのみならずリヤシートも、見た目以上にクッションが硬くサイドサポートが強いため、コーナリング時にしっかりと身体を支えてくれる。さらに後席は空間設計も見事で、身長174cmの筆者が正しい姿勢で座っても、ヘッドクリアランスは拳1つ、ニークリアランスは拳3つ分のスペースがある。

近年はクーペライクなスタイルを優先して、後席の居住性をおろそかにするセダンが余りにも多い中、Eクラスセダンのこの姿勢は大いに高く評価すべきだろう。さりとてEクラスセダンのスタイルは凡庸に堕しておらず、並のクーペが見劣りするほど流麗かつダイナミックなのだから、最早言うことはない。

一方、トランクルームを見ると、リチウムイオンバッテリーをバルクヘッド側に寝かせて搭載する影響で、フロア中央に明確な段差が生じてしまっている。容量も540Lから400Lへと減少しているのだが、この設計のおかげで40:20:40分割可倒式リヤシートによるトランクスルー機構が廃止されず、高いユーティリティが維持されていることには、賢明な判断だったとメルセデスの開発陣に拍手したい。

前後双方の席で試乗して得た、E350eの印象を一言で表現すれば、「乗るクルマにも社会性が求められるエグゼクティブのためのショーファードリブンカー」である。

Sクラスほど強い威圧感を周囲に与えず、早朝深夜や短距離では静々とモーターのみで走行し、普段もハイブリッドモードで走行して地球環境に配慮する……。ここまでは誰もがメリットを享受できるが、長距離長時間を疲れ知らずで移動するという、並みいる他のブランドを寄せ付けないメルセデスならではの圧倒的強みは、E350eでは後席の住人のみが味わえるものに留まっている。

少なくとも現時点では、他のEクラスセダンが持つドライバーズカーとしての魅力は、PHV化によって大きく損なわれてしまったと結論付けざるを得ない。「E250アバンギャルドスポーツ」プラス23万円で、モーターによる450Nmの大トルクと静粛性が得られるというが、それは他のPHVでも得られるものだ。その代わりに失うものが、メルセデスあるいはEクラスでなければ得難いものばかりで、余りにも大きい。

運転手付きの社用車として使用するエグゼクティブは積極的に購入すべきだろうが、自らステアリングを握り運転を楽しみたいクルマ好きは熟成されるのを待ち、今は他のグレードを選ぶことを強くオススメする。

Specifications
メルセデス・ベンツE350eアバンギャルドスポーツ(FR・9AT)
全長×全幅×全高:4950×1850×1475mm ホイールベース:2940mm 車両重量:1980kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ガソリンターボ 排気量:1991cc ボア×ストローク:83.0×92.0mm 圧縮比:9.8 エンジン最高出力:155kW(211ps)/5500rpm エンジン最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1200-4000rpm モーター最高出力:65kW モーター最大トルク:450Nm(45.9kgm) JC08モード燃費:15.7km/L 車両価格:8,110,000円

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