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愛車の履歴書──Vol42. 石野真子さん(前編)

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愛車の履歴書──Vol42. 石野真子さん(前編)

愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第42回。前編は、石野真子さんが初めて購入した懐かしの愛車と、久しぶりに対面した!

トップアイドルの日常

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石野真子さんがオーディション番組『スター誕生!』を経て、芸能界にデビューしたのは1978年、17歳のときだった。デビュー曲の『狼なんか怖くない』の作詞が阿久悠さん、作曲が吉田拓郎さんという超大物コンビだったことからも、期待の大きさがわかる。

期待通り、石野さんはデビューしてすぐにスターダムを駆け上がった。当時の様子を尋ねると、石野さんは「記憶にないぐらい忙しかったですね」と、笑った。

「一日に、10本ぐらい、いろいろな仕事が入っていました。ひとつの仕事が終わると、マネージャーさんの(フォルクスワーゲン)ビートル車で移動、『はい次! 』みたいな(笑)。クルマや新幹線に乗って、次はどこへ行くんだろう、という日々でした。でもいま思えば、きっとマネージャーさんが一番大変だったと思います」

アイドルとして活躍していた石野さんであったけれど、20歳で結婚を発表、芸能界から身を引きました。

「20歳のとき、時間が出来たので、そこでクルマを運転したいと思って、免許を取りに行くことになったんです。両親とも運転をする人でした。お墓参りや遊びに連れて行ってくれるときはいつもクルマだったので、クルマの運転はすごく身近なことでした」

免許取得当時は、AT限定免許がない時代だった。石野さんはマニュアルシフトの教習車で運転免許を取得したという。

「しかも教習車のシフトが昔のタクシーみたいなコラムシフトだったんです。坂道発進でうまく半クラッチができなくて……緊張しながら教習を受けたことを覚えています」

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20歳の女性が乗るクルマとして、クリーム色のボルボ244はなかなか渋い選択だ。

「『初めて運転するなら、頑丈なボルボがいい』と、薦められた記憶があります。ちょこんと電信柱にぶつかってもバンパーが丈夫だから安心、横からの衝撃にも強いからと、小柄な私ですが今思えば大きな車に乗っていました」

石野さんが所有したボルボ240シリーズは、その原型を遡れば66年に登場したボルボ「144」に行き着くモデル。第二次世界大戦後のボルボは、「PV544」や「122S」といったモデルによって、高品質で耐久性と安全性が高いというイメージを確立していた。

たとえば、ボルボは59年に3点式シートベルトを世界で初めて開発し、PV544に導入している。余談ではあるけれど、3点式シートベルトが普及するように、当時のボルボはこの安全装備の特許を無償で公開している。

ボルボ144やその後継にあたるボルボ240シリーズも、そうした高評価を継承したモデルだった。

74年に登場したボルボ240シリーズは、モデル名の末尾がドアの枚数を表していた。すなわち242が2ドア、244が4ドアセダン、245が5ドアのステーションワゴンだった。そして途中からは、ボルボ240という名称に統一される。

ボルボ240シリーズで特筆すべきはモータースポーツでも活躍した点で、ヨーロッパ・ツーリングカー選手権(ETC)では85年、86年と2年連続でチャンピオンを獲得している。このときに、その四角い外観から“空飛ぶレンガ(Flying Brick)”というニックネームで呼ばれた。

運転席に座り、ハンドルに手を添えた石野さんは、「どこかに行った思い出よりも、免許取り立てだったので必死に運転を覚えようとしていたことを思い出します」と、笑った。

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ボルボ244の次に石野さんが乗ったのは、アウディ「80」だった。

「あまり遠出をしなかったボルボと違って、アウディは乗り倒しました。というのも、仕事に復帰した時期だったので、いろいろな現場に赤いアウディ80を運転して行きました」

石野さんがまた仕事を再開して、当時所有したアウディ80は、78年から86年まで生産された第2世代だった。直線基調のスタイリッシュなデザインと、広々とした後席と荷室で人気を博したモデルだ。先進的でクールという現代のアウディのブランドイメージは、このアウディ80のあたりから醸成されたと言っていいだろう。

後篇では、仕事を再開した石野さんが、ともに戦った同志のような愛車と、いま興味を持っているという電気自動車を紹介したい。

石野真子(いしのまこ)兵庫県生まれ。日本テレビのオーディション番組『スター誕生!』の決勝進出を機に、歌手として芸能界入り。78年、「狼なんか怖くない」でデビュー。同年にリリースした「失恋記念日」で第20回日本レコード大賞、第16回ゴールデン・アロー賞等で新人賞を受賞。以後、アイドルとして人気を博す。また俳優として、ドラマや映画、舞台でも活躍。現在放送中のNHK大河ドラマ『光る君へ』にも出演。

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文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・冨沢ノボル スタイリング・間山雄紀(M0) 編集・稲垣邦康(GQ) 車両協力・ドクターV

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