米フォードは8月7日、工場労働者の負担軽減のため、「Ekso Vest」と呼ばれる外骨格型のパワードスーツを全世界の工場に導入すると発表した。
最新の自動車工場というと、ロボットアームが黙々と組立てを行っているシーンを想像する。だが、実際の工程は今でも多くの熟練した従業員に支えられており、彼ら彼女らの作業負荷軽減はメーカーにとって永年の課題となっていた。特に、クルマの下に潜って部品を取り付けるような工程では疲労の蓄積も深刻で、その過酷さはスイカを一日に4600回も頭上まで持ち上げるようなものだという。
だが今回、こうした状況を改善する画期的技術の導入がフォードから発表された。それが、パワードスーツのEkso Vestだ。フォードがEkso Bionicsと共同開発したこのスーツは、腕を上げて行う作業時に、スプリングの作用で片腕あたり5~15ポンド(およそ2kg~7kg)のパワーをアシストし作業負荷を軽減する。小型かつ軽量なため、腕の可動範囲が狭まるなどのストレスもまったくないという優れものなのだ。
フォードでは昨年から、米ミシガン州の2つの工場でEkso Vestを試験的に導入しており、そこで良好な結果が得られたため、今般、世界7か国15工場への展開を決めたとのこと。実際に試験でこのスーツを着用した従業員からは、「Ekso Vestを脱ぎたくなくなった」「もうEkso Vestなしでの作業は考えられない」といった声が寄せられており、効果は絶大のようだ。
また、高負荷作業は肉体疲労だけでなくケガにもつながり、ラインのストップも招きかねないが、フォードの全工場における2018年の事故率は過去最低を記録中。背景にはEkso Vestの導入など負荷軽減策に取り組んだことがあると考えられ、こうしたデバイスの普及は従業員とメーカーをともにハッピーにするものといえそうだ。
日本でも働き方改革や生産性革命が課題となる中、最新のテクノロジーを応用した米国流の対策は非常に新鮮。国内メーカーにも是非これを上回る斬新な取り組みを期待したい。
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