まずはジープ・ファミリーを整理しよう
ジープ・コマンダー LIMITED 全長×全幅×全高:4770mm×1860mm×1730mm ホイールベース:2780mmジープ・チェロキーのポジションに投入されたのがコマンダー「ジープ・コマンダー」と聞いてパッと姿が思い浮かぶほどジープツウではないので、「?」となった。調べてみると、2009年まで国内で正規に販売されていた。大排気量V8エンジンを積んだ3列シートのSUVでシルエットはスクエア。丸いヘッドライトと7スロットグリルの組み合わせで、明らかに本格オフローダーのラングラー系である。
ジープ・グランドチェロキーはかけ値なしに、俊足のフルサイズSUV。見た目からは想像つかないだろうが……
10月24日に受注を開始した新型ラングラーを見たら、ジープなので当然のことながら7スロットグリルは備えているが作りは薄く、ヘッドライトも四角くてやはり薄い。どう見てもグランドチェロキー系のスタイルで、ラングラー系とは対極にある。どういうこと?
ジープはモデル群を2系統のファミリーに分けてブランディングしている。ひとつはグランドチェロキー系で、ジープの販売元であるStellantis(ステランティス)ジャパンは「お父さん」と表現している。グランドチェロキーがお父さんなら、ラングラーはお父さんの弟、すなわち「おじさん」なのだそうだ。お父さんのグランドチェロキー系はシュッとした都会的なスタイルが特徴。おじさんのラングラー系は丸めのヘッドライトとスクエアなデザインが特徴だ。タフな印象が強い。
かつて販売されていたコマンダーはおじさん系だったが、新しいコマンダーはお父さんの家系に移った。お父さんの家系でどこに入ったかというと、グランドチェロキーとコンパスの間である。かつて、チェロキーがいたポジションだ。
チェロキーはどうしたんだ。家出したのか? と、ジープ通ではない筆者は疑問に思ったが、なんと、2021年末で生産終了となっていた。その、チェロキーが抜けた穴を埋めるのが、新しいコマンダーというわけだ。実質的にチェロキーの後継である。どう見てもグランドチェロキー系統の顔立ちとスタイルをしているのは、そのためだ。
2.0L直4ディーゼルユニットはどんなエンジン?
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ エンジン型式:46344732 排気量:1956cc ボア×ストローク:83.0mm×90.4mm
圧縮比: 最高出力:170ps(125kW)/3750rpm 最大トルク:350Nm/1750-2500rpm 過給機:ターボ 燃料供給:DI 使用燃料:軽油
燃料 タンク容量:60ℓ トランスミッション:9速AT
日本に導入されるコマンダーは「Limited」のシングルグレード構成だ。Stellantisジャパンは「初期導入時は生産の効率化を重視し」と、グレードを絞った理由を説明している。エンジンは2.0L直列4気筒ディーゼルを搭載。ステランティスを構成するブランドのひとつであるフィアットがGMと資本提携を結んでいた時期に開発したエンジンである。なので、かなり年季の入ったユニットだ。
コマンダーはこれを横置きに搭載し、動力を分配してプロペラシャフトでリヤに伝え、リヤデフと一体化した電子制御式パワートランスファーユニット(PTU)で前後の配分を調節する。走行モードを選択できるセレクテレインシステムを搭載しており、AUTO、SNOW、SAND/MUDのモードが選択できる。
プラットフォームは弟分のコンパスと共用する。ステランティスグループでいえば、フィアット500X(2WD)と同じである。プラットフォーム軸で表現すれば、コマンダーはコンパス・ロング、フィアット500Xロングいう言い方もできる。そう考えると、上屋の作りで上手にジープの世界観を表現していると言えそうだ。
プラットフォームがコンパスやフィアット500Xと共通なのだから、マクファーソンストラット式のフロントサスペンションと、マルチリンク式のリヤサスペンションも共通だ。リヤバンパーの下からサスペンションを覗き込んでみたところ、コンパスやフィアット500Xはロワのリヤ側リンクにスチールのプレス材を使っているのに対し、コマンダーは鋼管を使用しているのが確認できた。
ミニバンではなく、ミッドサイズSUVなのに3列シートを備えているのも、コマンダーの大きな価値である。SUVで3列シートというとメルセデス・ベンツGLBが思い浮かぶ。コマンダーとGLBの主要スペックを比較してみよう。
ジープ・コマンダー
全長×全幅×全高:4770×1860×1730mm
ホイールベース:2780mm
メーカー希望小売価格:597万円
メルセデス・ベンツGLB
全長×全幅×全高:4640×1835×1700mm
ホイールベース:2830mm
メーカー希望小売価格:593~618万円(200 d 4MATIC)
2列目シートこちらは運転席&助手席けっして広くはないが、「3列目がある」ことが重要なのだ。人それぞれ価値感は異なるだろうが、3列シートに関しては居住性うんぬんよりも、「3列シートがある」こと自体が重要だろう。GLBとコマンダーの対比であえて3列目の居住性について印象を言えば、コマンダーのほうに分がありそうだ(双方スペース的にミニマムであることに変わりはないが……)。
あとは、アメリカンなムードが好みなのか、ヨーロピアンなムードが好みなのかといったところで判断が分かれそう。GLBは1.4L直列4気筒ガソリンターボエンジンのほかに、コマンダーと同じ2.0L直列4気筒ディーゼルエンジンの設定もあり、ディーゼル仕様のほうは4WDで、価格帯も同等だ。
マッド&スノータイヤ タイヤ:F&R 235/55R18 ブリヂストンのDUELER H/T
リヤサスペンションはマルチリンク式フロントはマクファーソンストラット式電子制御式パワートランスファーユニットを持つオンデマンド4WDでは、乗り味もアメリカンとヨーロピアンで分類できるかというと、そうとは言い切れない。前述したように、コマンダーはプラットフォームをフィアット500Xと共用している。アメリカンブランドゆえに“ゆるふわ“な乗り味を想像すること自体が古いのかもしれないが、コマンダーは芯のあるしっかりした乗り味で、アメリカンブランドらしさを感じさせるのは、インテリアも含めて視覚に訴えるムードだけだ。
9速AT 1速:4.713 2速:2.842 3速:1.909 4速:1.382 5速:1.000 6速:0.808 7速:0.699 8速:0.580 9速:0.480 最終減速比:4.334驚いたのは動力性能と燃費である。最新のエンジンではないからといって、軽く見てはいけない。ディーゼルエンジンはひと昔前のそれのように騒々しくないし、アクセルペダルを踏んでひと呼吸置いてから力が出てくるというようなこともない。ディーゼルエンジンにしては静かだし、力も充分で、1900kg近い車体を苦もなく走らせる。首都高速中心の試乗だったとはいえ、メーター上で18.0km/Lの数値を確認したのは収穫で、燃費は相当良さそう。3列シートのSUVを所望する層にとって、魅力的なモデルが出てきた。
最小回転半径:5.8m 車両重量:1890kg 前軸軸重1060kg 後軸軸重830kg トレッド:F1580mm/R1590mmジープ・コマンダー LIMITED全長×全幅×全高:4770mm×1860mm×1730mmホイールベース:2780mm車重:1870kg(サンルーフ付きは1890kg)サスペンション:Fマクファーソン式 Rマルチリンク式エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボエンジン型式:46344732排気量:1956ccボア×ストローク:83.0mm×90.4mm圧縮比:最高出力:170ps(125kW)/3750rpm最大トルク:350Nm/1750-2500rpm過給機:ターボ燃料供給:DI使用燃料:軽油燃料タンク容量:60ℓトランスミッション:9速AT駆動方式:4WDWLTCモード燃費:13.9km/ℓ 市街地モード10.6km/ℓ 郊外モード13.9km/ℓ 高速道路モード16.1km/ℓ車両価格:597万円
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