■ジャガーのヘリテージからインスパイアされた
2020年12月16日にジャガーは、PlayStation4用ソフトウェア「グランツーリスモSPORT」向けに開発した最新のフル電気自動車(EV)のバーチャル・レーシングカー「Vision Gran Turismo SV(以下ビジョンGT SV)」を発表した。
【画像】実車とCGのジャガー「ビジョンGT SV」を見比べる(27枚)
このモデルは、実際にフルスケールでのデザインスタディを経てつくられたもので、最高速度255mph(約410km/h)を発揮し、完璧に磨き上げられたエアロダイナミック・デザインとレースで培ってきたパワートレイン・テクノロジーが組み込まれている。
ジャガーが「グランツーリスモ」用のバーチャル・レーシングカーを開発したのは初めてではない。2019年10月に、初のフルEVスポーツカー「Vision Gran Turismo Coupe(以下ビジョンGTクーペ)」を開発、発表しており、ジャガーの伝統を受け継ぐ究極のデザイン、ドライバーを重視したインテリア、そして卓越した乗り心地とハンドリングでゲーム愛好家たちを魅了し、高い評価を得た経緯がある。
しかし、ジャガーの開発・デザインチームにとっては、ビジョンGTクーペは、ビジョンGT SVの出発点でしかなかった。さらにパフォーマンスを向上させるためにすべてを見直し、耐久電動レーシングの可能性について再検証がなされたのだ。
このプロセスの基盤となったのは、オンラインビデオやフォーラムで交わされるゲームプレイヤーからのフィードバックを詳細に分析することであった。また、「仮想世界テスト」と何時間にもおよぶ「実走テスト」を組み合わせることで、デザインおよび開発チームはビジョンGT SVを正確に適正化することが可能となり、完璧なゲーム用の電動耐久レーシングカーが完成したのである。
最初にビジョンGT SVのボディワークを見てみよう。フェンダーの曲線は、ビジョンGTクーペと同じく「C-TYPE」や「D-TYPE」にインスパイアされたものであり、リアエンドのウイングは、「XJR-14」などジャガーのDNAを受け継ぐ耐久レーシングカーにインスピレーションを受けたデザインとなっている。ビジョンGT SVには、即座にジャガーと認識できるエッセンスが散りばめられているのである。
またビジョンGT SVは、ビジョンGTクーペのエレガントなシルエットをそのまま受け継いでおり、ホイールベースは同じ2721mmのまま。ただし、全長は861mm長い5540mmに延長された。これはエアロダイナミクスを改善するためである。高速コーナリング、ロングストレートでの高速安定性を向上させるのに必要なダウンフォースを増やす目的で、新開発のフロントスプリッターとデプロアブル・リアウイングが装備されたために全長が伸びたのである。
大型で効率的なスプリッターは、フロントアクスル上にダウンフォースを発生させ、さらにフロントバランスチャンネルの開口部が前輪の面全体に空気を送り、乱気流を減らしながら車両の後方に向かってスムーズに流れるように作用する。また、ホイールウェルを通過した空気もフェンダー内のエアアウトレットからリア方向へスムーズに流れるようになっている
アンダーボディは完璧に密閉されており、フロントアクスルの後方に高速安定性を高めるためのキールエレメントがある。これが空気の流れを加速させて減圧し、車体の浮きを抑えながら大型のベンチュリを介して空気を排出するのである。
ビジョンGT SVのために開発されたもっとも効率的なエアロパーツが、デプロイアブル・リアウイングだ。コンセプトから最終デザインまで、何度も試行錯誤を経て開発されたこのウイングは、メインの固定部分が車両後部を包み込み、リアハンチに溶け込むように融合しているのが特徴だ。
このウイングは、ボディワークの不可欠な要素としてデザインされており、耐久レースに必要な空力性能も備えている。ふたつある可動式セクションは、必要に応じて速度が上がると自動的に上昇してダウンフォースを発生させ、空力抵抗を抑える状況下では規定の位置まで下降して、空力性能を最適化する働きがある。
こうした結果、空気抵抗係数(Cd値)は0.398と、レーシングカーとしては圧倒的に低い数値を実現しながらも、483kg/200mph(約322km/h)のダウンフォースを発生させることに成功している。
■最高出力1903馬力、最高速度410キロを実現するシステムとは
ビジョンGT SVは、4つのモーターを採用したフル電動駆動システムを採用している。これには、ジャガー・レーシングのエンジニアが、6シーズンにわたって「I-TYPE」の開発をしてきた知識と経験がすべて注ぎ込まれている。
ビジョンGT SVのフル電動駆動システムの開発は、ふたつのプロジェクトに分かれていた。まずひとつめが、フロントアクスルに300kW(407ps)のモーターを2個搭載することである。
ビジョンGT SVは、各ホイールにひとつずつモーターが配置されており、最高出力1400kW(1903ps)、最大トルク3360Nmを発揮する。
各モーターにはそれぞれ1速トランスミッションが装備され、高い定格トルクに必要な強度と耐久性を確保し、軽量化と摩擦抵抗を軽減して効率を最大化している。
この電動全輪駆動システムと各ホイールにそれぞれ1個のモーターを配置する構成により、横方向と縦方向のトルク配分を無限に制御することができ、優れたトラクション、敏捷性、コントロール性を両立したトルクベクタリングが可能となった。
さらに軽量かつ高剛性なボディ構造の下部に、最新のリチウムイオンバッテリーパックを搭載し、低重心、低いロールセンター、ほぼ完璧に近い重量配分を実現している。
もうひとつのプロジェクトは、より大きな負荷に対応するために温度管理システムを改良し、耐久レース中も長時間の高速走行と加速性能を維持できるようにすることであった。
温度管理システムは、液体窒素循環冷却装置を追加し、バッテリーが理想的な温度範囲内にとどまり、より長い時間最大出力を供給できるようにした。また、この液体窒素冷却装置はキャビン内のブーストボタンと連動しており、極めて厳しい動作条件下においてもバッテリーが上限温度を超えることがないように設計されている。
●やる気にさせられるコックピット
ビジョンGT SVでは、ドライビング・エクスペリエンスの基本となる独自のパワートレイン・サウンドスケープがさらに進化している。
4つのモーターを搭載し、よりパワフルでトルクフル、そして力強く、個性的でありながらもジャガーらしく、さらに未来志向のサウンドが生み出されている。40000rpmのレッドラインで最高潮に達するサウンドは、真のレーシングDNAを反映しており、ドライバーにかつてない満足感を提供する。
また、よりハイレベルな体験を提供すべく、インテリアはレース用にデザインされている。ドライバーは、コックピット内のピュアで滑らかなサーフェスの数々で包み込まれ、計器類や操作系は本来あるべき位置に配置されている。
さらにサステナブル(持続可能)な「TYPEFIBRE」という新素材を使用して、2席の立体造形の複合素材シートを覆うなど、構成部品はすべて、先進的な軽量素材を使用して高精度で美しく製作されている。
この「TYPEFIBRE」は、ジャガーが開発した革新的な素材で、本革よりも軽量で快適性と耐久性のある代替素材である。すでにジャガー・レーシングが新型レーシングマシン「I-TYPE 5」にも採用しており、ABB FIA フォーミュラE世界選手権のシーズン7でテストする予定の素材である。
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みんなのコメント
完全EVならフロントガラスも16Kモニターでにしてくれ。
ハンドルもどうだろう?
ダサさ感満載。