鈴鹿サーキットで行われた2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権の第8戦決勝にて、女子大生レーサーとして注目を集めているJuju(TGM Grand Prix)と、元F1ドライバーであり前戦富士では表彰台にも上がった小林可夢偉(Kids com Team KCMG)が日立Astemoシケインで接触スレスレのブレーキング勝負を繰り広げた。
コースアウトにも繋がるほどのスレスレの戦いを演じたふたりは、マシンを降りてすぐに近寄り、意見を伝え合うシーンも見られるほど白熱していた様子だった。ふたりに改めて、バトル時の状況を聞いた。
Juju、SFルーキーイヤー最終戦はどう挑む。「開幕戦とはライン取りも変わってきています」
■「あの仕掛け方以外に方法がない」と可夢偉
今回、ふたりのバトルは2度起きており、どちらも同じシケインでの出来事だった。1度目は、レースが終盤にさしかかる20周目に導入されたセーフティーカー(SC)ランから再スタートを切った23周目、2度目はファイナルラップだ。
1度目の接近となった23周目、14番手を走るJujuに対し可夢偉がインに飛び込んでブレーキング勝負へ持ち込んだ。しかし2台は結局オーバーランを喫し、そのままの順位で隊列に戻ることになった。まずは、追う立場だった可夢偉がバトルを振り返る。
「(放送では)あのコーナー(日立Astemoシケイン)でのバトルだけクローズアップされていますが、その前にも直線などで抜こうとしても、“激”幅寄せをされたりしていました」
「なので正直、あの仕掛け方以外に方法がない状態でした」と、Jujuのインに飛び込んだ際の心境を語る可夢偉。
だが、2台ともに曲がり切ることができずにオーバーランする結果となった。レース後には、『危険なドライブ行為』として可夢偉に5秒のペナルティが2度出ているが、押し出すような接触はあったのか。
その点については「接触はしていないです」と一言。
「ですが、正直向こうも止まる気あるのかな? という速度で入っていくので、それに合わせてバトルするとなると、こっちもどうしていいかわからない」
最後には「どうしたもんすかね」とつぶやき、明日の最終戦へターゲットを切り替えた様子でミックスゾーンを後にした。
■Jujuは「避けなかったらクラッシュします」とヒートアップ
続いて、一方ポジションを守る立場として戦ったJujuに状況を聞く。
「小林(可夢偉)選手とのバトルは、元F1ドライバーの本気を感じました」
「ただ、あのシケインのバトルはちょっと本気以上のもので、やりすぎじゃないかなというぐらいだったと思います」とJuju。
どのような可夢偉のアプローチが、本気以上の領域だと感じたのか、具体的に問う。
「まず、可夢偉さん自身がシケインを曲がりきれていない。だとしたらもう、私がコーナーを曲がることは不可能です」
「あそこまで無理のある速度で強引に入ってこられると、私が避けなかったら2台ともぶつかってクラッシュしています」
可夢偉の飛び込みは限界を超えていたのではないかと意見するJuju。そのまま、最終ラップに再発したバトルについても続ける。
「最後には本当に、『抜けないならぶつけてやろうか』っていうくらいの勢いを感じる抜き方で、ある意味恐怖を感じました。私自身もドライバーなので、相手がどんな気持ちでインに入ってきたのかも分かります」
そのまま、「今までは元F1ドライバーとして彼を尊敬していましたし、一緒に走ることを光栄に感じていたのですが、『ちょっと、どうなの?』って」とヒートアップ。
それでもまだまだ納得のいかない様子だったが、落ち着いてターゲットを明日のレースに切り替え、「信じてくれているファンの皆さんの前で、しっかりいいレースを見せられるよう頑張ります」と抱負を言葉にして去った。
サーキット中の注目を集めた大ベテランとルーキーの2度のバトルは、ともにオーバーランで決着してしまう煮え切らない結末を迎えてしまったが、明日の最終戦では互いにいいかたちで一年を締めくくることができる走りを期待したい。
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