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インディアナポリでの伝統の“マンス・オブ・メイ”。優勝候補の佐藤琢磨は順調な走り出し

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インディアナポリでの伝統の“マンス・オブ・メイ”。優勝候補の佐藤琢磨は順調な走り出し

 今年も5月の末にインディアナポリス500マイルレースが行われる。世界で最も長い歴史を誇るこのインディ500は、今年で第103回目の開催となる。

 その予選の1週前、同じインディアナポリス・モータースピードウェイで行われるのがインディカーGPだ。今シーズン3戦目となる常設ロードコースでのレース。すでに開催された2戦、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)ではコルトン・ハータ(ハーディング・スタインブレナー・レーシング)がキャリア初優勝を飾り、バーバー・モータースポーツパークでは佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が勝った。

佐藤琢磨の今季初優勝に繋がったレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのエンジニアリング強化

 ルーキーとは思えない安定した速さを見せて続けるハータ二世、そしてキレの良い走りとベテランらしいスマートな走りを兼ね備えるようになった琢磨はインディカーGPでも優勝候補の一角に数えていいだろう。

 彼らに挑むのは、これらの2レースで勝利という結果にこそ得られなかったが競争力の高さを見せたウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)ら。そして、ここにセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・バッサー・サリバン)、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)、ジェイムズ・ヒンチクリフ(アロー・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)も絡んでくるはずだ。

 フェリックス・ローゼンクヴィスト(チップ・ガナッシ・レーシング)、パトリシオ・オーワード(カーリン)、ルーカス・エリクソン(アロー・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)、サンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング)といったハータ以外のルーキーたちにも注目したい。

 今シーズンはここまで5戦で5人の異なるウイナーが誕生しているが、インディカーGPでは6人目が勝つだろうか。それとも、初のリピートウイナーが出るか。去年はパワーがGPで勝ち、その勢いでインディ500初制覇も達成している。

 インディカーGPが終われば、1日のインターバルを置いてインディ500のプラクティスが始まり、その週末が予選。さらに1週間の後にビッグレースの決勝がやってくる。

 全長2.5マイルの歴史あるブリックヤードでは、今年も時速220マイルオーバーでの高速バトル×200ラップが繰り広げられる。出場できるのは伝統的に33台だが、現在までのところ、今年予想されるエントリーは33台。

 予選での最後のグリッドを競い合うドラマは生まれないが、出場チーム、ドライバーの層が非常に厚くレベルも高いため、予選でのポールポジション争い、決勝での優勝を賭けたバトル、ともにより緊迫した、見応えあるものが期待できる。


 4月24日にはプレビュー的に合同テストが行われたが、残念ながら悪天候で十分な走行時間が確保されず、エントラントの実力レベルを計るのは難しかった。

 それでも、状況に合わせてマシンの準備を万端整えたチームが高いスピードを記録した。トップは2017年ウイナーの佐藤琢磨。2、3番手はエド・カーペンターとスペンサー・ピゴットのエド・カーペンター・レーシングのふたり。

 4番手は昨年度ウイナーのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)で、5番手はライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)だった。ただし、これらはいずれもトウ=ドラフティングを利用してのものだ。

 昨年のインディでは予選でも決勝でもシボレーエンジンがパワーアドバンテージを持っていた。インディカーのルールで、2020年までエンジンの設計変更が許されるエリアは非常に限られているが、その中でホンダがどこまで巻き返すかは楽しみだ。

 合同テスト最速はホンダ使用の琢磨で、トップ10にホンダドライバーは5人が入っていた。パワー差は縮まっているのだろうか?

 気温が摂氏16度と低かったテストを終えた琢磨は、「今日の速さは人工的と言うか……。気温が低いためにダウンフォースは大きく、エンジンもパワーが出やすい状況とスピードが高くなる要素が揃っていました」

「最速ラップは大きなトウを使ってのもの。それでも、とても良い今年のインディのスタートになったのは事実。マシンはとても安定していた」と話していた。

 シボレー軍団では、インディでのポールポジション獲得3回のエド・カーペンターがテストで2番手につけた。彼は悲願の初優勝に意欲を燃やしている。

 4番手につけたパワーは、当然2連覇を目指す。そして、彼のチームメイトたちは、ジョセフ・ニューガーデンとシモン・パジェノーが初優勝を、エリオ・カストロネベスは史上最多タイに並ぶ4勝目を虎視眈々と狙っている。


■新しいエアロパッケージの使い方が上位進出のカギに
 2018年はユニバーサルエアロキットで戦う初めてのインディ500で、例年にない暑さも手伝ってオーバーテイクの少ないレースだった。

 インディカーは抜きつ抜かれつのよりエキサイティングなレース実現を目指し、シャシーコンストラクターのダラーラとの共同作業でフロントウィングのエンドプレートを設計変更。

 エアロのルールも変更し、昨年のポコノで導入されたフロント・ウイング・エクステンションの使用が許可され、フロント・ウイングにもリヤ・ウイングにもウィッカー=ガーニーフラップの用意された。

 セッティングの幅が大きく広げられたエアロパッケージでアドバンテージを真っ先に見出すのはどのチームだろうか?

 そして、インディカーの思惑通りにオーバーテイクの多いレースとなれば、マシンのドライバビリティの重要性が高まるため、エンジンのピークパワーは無視できない要素であり続けるものの、パワーバンドの広さがポイントになって来るケースも出てくる。

 過去5年間のインディ500で3勝と最も良い成績を残して来ているのがアンドレッティ・オートスポート。彼らは今年も5台体制(コナー・デイリーがスポット参戦)で、ハーディング・スタインブレナー・レーシングの1台(ハータ)も加割るため、データ量はダントツだ。

 同じ5年間の残り2戦で勝っているチーム・ペンスキーもエリオ・カストロネベスを加えた4カー体制と強力。新しいエアロパッケージをどれだけ上手く使うかが大きなポイントとなるだろう。


 今年の500ではフェルナンド・アロンソの二度目の出場も大きな話題だ。初参戦で優勝争いに加わった通り、F1ワールドチャンピオンはオーバルへの順応も驚異的に速かった。

 しかし、2年前とはマシンのエアロが大きく変わっており、データ量ナンバーワンのアンドレッティというチームも彼の背後にはいない。マクラーレンが立ち上げたインディカー専用チームは、カーリンとのジョイントでの出場。頼れるチームメイト的存在も脆弱だが、2年前のように優勝争いへと絡んで来るかはおおいに興味のあるところだ。

 インディアナポリス・モータースピードウェイで繰り広げられる“マンス・オブ・メイ”。今年も白熱の1カ月になるだろう。

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