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BMW アルピナ XD4 × BMW X3 Mコンペティション、塩見 智が「似て非なる感触」を吟味する

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BMW アルピナ XD4 × BMW X3 Mコンペティション、塩見 智が「似て非なる感触」を吟味する

BMW ALPINA XD4 × BMW X3 M Competition

BMW アルピナ XD4 × BMW X3 Mコンペティション

BMW アルピナ XD4 × BMW X3 Mコンペティション、塩見 智が「似て非なる感触」を吟味する

アルピナは独自の世界観を、Mは管理された過激さを見せる

ボンネットフードを開け、右前輪のストラットタワーに目をやると、打刻された製造番号がバッテンで訂正され、すぐ下に別の製造番号が打刻されている。一旦、BMWとして製造された車体が、途中でアルピナに生まれ変わったという印だ。

BMW X4を“素材”とし、日本仕様のX4には設定のない直6ディーゼルターボエンジンにアルピナが開発したクワッドターボを付与して搭載したのがBMW アルピナ XD4だ。当然エンジンが異なるだけではなく、足まわりのセッティングから内外装の仕立てにいたるまで、ひと通り開発し直されている。

これまでアルピナにじっくりと接したことがなく、いくつかのモデルをちょい乗りした程度だった。今回、丸一日かけて試乗しての第一印象をひと言で述べるなら“マチュア”。

エクステリアの変更は控えめなXD4

歴代BMWをベースとし、エンジンのみならず、クルマ全体に手を入れ、年間1700台ほどを世界で販売するアルピナ。各モデルがどう生産されるかというと、BMWの工場の生産ラインが一定時間、各種設定をアルピナ用に変更され、アルピナ用の生産ラインとなって稼働する。しかるべきタイミングに別の場所で組み上げられて持ち込まれたエンジンが搭載される。そして新しい製造番号が与えられるのだ。アルピナが「我々はチューナーではなくメーカーである」と主張する所以だ。

XD4のX4に対する外観上の変化はわずかだ。チューニングブランドのコンプリートカーにはひと目でノーマルと違うことを主張できる派手なエアロパーツが付けられることが多く、またそれが顧客を満足させる重要な要素でもあるが、アルピナの場合、例によって中央にレタリングされた控えめなフロントスポイラーが付き、ボディサイドにアルピナデコセットが入る。加えて定番アイテムである20本のスポークタイプのアルピナクラシックホイールが装着される。試乗車には標準の20インチに替えて22インチが装着されていた。

インテリアには、センタートンネルの一番奥の部分にアルピナであることを証明するプレートが貼られるほかはX4に準じる。スターターボタンを押して始動する。アイドリング時の振る舞いとしては、BMWがX5や7シリーズに搭載する直6ディーゼルターボエンジンと同じかそれ以上に静かで振動が少ない。

問答無用にパワフルだが過激さはない

混んだ都内の交通の流れに沿って一般道を走行する時の負荷は、最高出力388ps、最大トルク770Nmのこのエンジンにとってはほぼアイドリング時のそれと変わらないため、静かで振動が少ないまま。(冷間時を含め)エンジンを始動してから停止するまで、ディーゼルであることを意識する場面がなかった。

ならばと高速道路への合流時に鋭い加速を試みる。エンジン回転数は4000rpmあたりまで鋭く上昇してはギヤアップで少し下がるというのを繰り返し、それに伴い速度はみるみる上がっていくのだが、回転数はタコメーターを見て、速度は窓越しの景色の流れ方を見てわかるだけで、エンジン音がうなるとか振動が増すといった変化はない。気付けばもうこんな速度かと驚かされる、運転免許証的に一番危険なタイプだ。

問答無用にパワフルなのだが、不思議なくらい過激さを感じない。スムーズに吹け上がって速度を増すのだが、例えばアクセルペダルを速く深くグイッと踏まないとキックダウンしないしつけになっている。ステアリング操作に対する反応も過敏なところがない。あくまでも切っただけ曲がり、スポーティを謳うモデルに多い、ドライバーの思惑以上に曲がろうとするようなことがない。

現行のBMWにはない“マチュア”な味わい

また独自のチューニングが施されたサスペンションも、ベースのBMWに対し、明らかに快適方向に振られている。その点、オプションの前255/35ZR22、後295/30ZR22のタイヤは、必ずしもベストな組み合わせではないようにも感じたが、成立していないほどでもないので、見た目と快適性のどちらを優先するかといったところ。

近頃はBMWがどんどん車種を増やしている。3、5、7シリーズといった伝統的なモデルに対し、オルタナティブだったはずの偶数モデルのほうが今や多いほど。またMモデルを見ても、従来からあるMハイパフォーマンスモデルに加え、ノーマルとMハイパフォーマンスモデルの間を埋めるMパフォーマンスモデルを設定するなど実にきめ細かい。

これまで主に動力性能の面でBMWにない領域を補完するモデルをラインナップしてきたアルピナだが、BMWにこうも隙間がなくなってくると、アルピナはより独特の世界を示す必要がある。XD4で感じたマチュアな味わいは、確かに現行のBMWにないものだった。

X3 Mコンペティションが見せる古典的で文化的な過激さ

アルピナ XD4とは対象的に、X3 Mコンペティションははっきりと過激だ。ただし、この過激は正確には過激風だ。演出された、あるいは管理された過激。ドライブモードをスポーツ+にすると、エンジン、ステアリング、トランスミッション、サスペンションなどの項目が最も俊敏な特性へと変化する。

わかりやすいのはアクティブMディファレンシャルで、コーナー出口に向かって加速する場面では、4WDのはずなのに尻から吹っ飛んでしまうのではないかという、古典的なRWDとしか思えないような挙動を見せる。

しかし、それはセミトレのリヤサスのバネとダンパーをひたすらに締め上げた往年のM3あたりとは違って、コントロールされた挙動だ。やりすぎればESCが作動するし、スポーツ+のままでも乗り心地はコンフォートより硬いというだけで十分に文化的だ。

圧倒的な動力性能をを快適に引き出せる

最高出力510psという往年のMが赤子のように思えるほどの高い動力性能を備え、それを安全に快適に引き出せるのが、現代のMの真価であり、多くのハイパフォーマンスカーが目指す方向性なのだろう。けれどその姿はこの先600ps、700psになっても仕方ないとわかっているハイパフォーマンスカーが、まるで枝の先まで到達したシャクトリムシがない枝をつかもうとくねくねするかのように、道に迷っているようにも思える。

ハイパフォーマンスモデルの代表的、お手本的ブランドであるMはこの先どう進化していくのか、ファンもフォロワーも注目している。

REPORT/塩見 智(Satoshi SHIOMI)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)

【SPECIFICATIONS】

BMW アルピナ XD4

ボディ:全長4765 全幅1927 全高1615mm
ホイールベース:2864mm
トレッド:前1614 後1628mm
車両重量:2045kg
エンジン形式:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2993cc
ボア×ストローク:90×84mm
圧縮比:16
最高出力:285kW(388ps)/4000-5000rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/1750-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/45ZR20(8.5J) 後285/40ZR20(10J)
最高速度:268
0-100km/h加速:4.6秒
燃料消費率:14.5(JC08)km/L
車両本体価(税込):1385万円

BMW X3 Mコンペティション

ボディ:全長4730 全幅1895 全高1675mm
ホイールベース:2865mm
トレッド:前1600 後1645mm
車両重量:2030kg
エンジン形式:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
ボア×ストローク:90×84mm
圧縮比:9.3
最高出力:375kW(510ps)/6250rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/2600-5950rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/40ZR21(9.5J) 後265/40ZR21(10J)
最高速度:280(Mドライバーズパッケージ)
0-100km/h加速:4.2秒
燃料消費率:9.1(WLTC)km/L
車両本体価格(税込):1401万円

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437

アルピナ 青山ショールーム

TEL 0800-2220-250

アルピナ 世田谷ショールーム

TEL 0120-866-250

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みんなのコメント

1件
  • このサイズのSUVで左ハンドルって、気づいたらもはや新鮮だな笑
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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