千葉県の匝瑳市横芝光町消防組合が導入した「支援車(2型)」は、県内外で大規模災害が発生した際に出動する消防隊、救助隊、救急隊の後方支援を行なう機能と、水害時にゴムボートを運搬する機能を使い分けることができる消防車両。
1台で2台ぶん働ける同車両の特徴とは? コンパクトなパッケージを実現するスイングボディ式脱着ボディ車とは? 全国的にも珍しい最新消防車両の秘密に迫る!!
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文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2021年3月13日発売「フルロード」第40号
スイングボディ式脱着ボディ車とは何ぞや?
匝瑳市横芝光町消防組合が導入した支援車(2型)。ベース車両は日野レンジャーGX系4×4総輪駆動シャシーだ
匝瑳市横芝光町消防組合は、千葉県匝瑳市と山武郡横芝光町の1市1町を管轄する消防組合。県内外で大規模災害発生時に出動する千葉県消防広域応援隊、緊急消防救助隊の活動に力を入れており、その実活動をサポートするため開発されたのが今回の支援車(2型)だ。
支援車とは、県内外で大規模災害発生時に出動する消防隊、救助隊、救急隊の後方支援を行なうためのクルマで、1型(拡幅ボディ車)、2型(脱着ボディ車)、3型(マイクロバス)、4型(中継車)の4種類が存在。今回紹介する支援車は2型、すなわち脱着ボディ車だ。
脱着ボディ車とは、キャブバックのフックアームで脱着式のボディを載せ替える機構を備えた特装車。一般用途では産業廃棄物の収集や、企業の設置型ゴミコンテナの収集など環境分野を中心に用いられており、欧米ではフックローダー車と呼ばれる。
いっぽう、今回同消防組合が導入した支援車(2型)は、フックアームを用いる脱着ボディ車ではなく、東京都江戸川区に本社、千葉県佐倉市に工場を構える司工業が開発したスイングボディ式脱着ボディ車を採用しているのが最大の特徴。
スイングボディ式脱着ボディ車は、フレーム後端部のピンを軸にボディをシーソーのように傾斜させる司工業独自のスイングボディ車に脱着機構を追加したもの。ボディの脱着は自重で降ろして、ウインチで引き上げる仕組みで、フックアームは備わらない。
同方式を採用する理由は、車両全長を抑えつつ荷台の長さ5mを確保するため。キャブバックにフックアームが備わる通常の脱着ボディ車は、フックアームの搭載スペースを確保するため荷台の長さが制限され、5mの確保が難しいのだという。
ちなみに、司工業では千葉県内の別の消防でもスイングボディ式脱着ボディ車を製作した実績があるそうだ。
2種類のボディの使い分けは?
匝瑳市横芝光町消防組合の支援車(2型)は司工業のスイングボディ式脱着ボディ車を採用することで厳しい目標スペックを実現する
ベース車両は日野レンジャーGX系4×4総輪駆動シャシーを採用。目標スペックは中型免許で運転できるGVW11t未満で最大積載量4tを確保すること。搭載するボディはバン型と幌型の2種類が製作されている。
バン型ボディは後方支援用で、ボディ内には1チームぶんの8個のロッカーとデスクを標準装備。このほかエアテント、IHクッキングヒーター、リアカー、自転車、バルーン投光器、モバイルバッテリーなども常備される予定だ。
こだわった5mの荷台の長さは、荷台内にちょっとした空きスペースを生み出すためのもので、荒天時はこのスペースを使って事務作業などを行なうことを想定。ちょっとした事務所機能も持っているというわけだ。
常備予定のエアテントは重さ100kgあり、1人では積み降ろし困難のため後部にはテールゲートリフターを搭載。同装置を用いて荷物を詰め込んだカゴ台車の積み降ろしも行なえる。なお天井中央のハンガーレールと両側の収納ボックスは司工業のアイデア。側面ドアはスライド式だ。
いっぽう、もう1つの幌型ボディは洪水などの水害発生時に現地にゴムボートを運搬するためのもの。同消防組合が従来から保有している幌型トラックの後継機種という位置付けだ。
幌はアコーディオン式で、内部には8人乗りの大型ゴムボートを積載可能。やはりこちらも人力での積み降ろしが困難のため、荷台に各種装備品の積み降ろし用に小型クレーンを搭載。従来の車両にはなかったクレーンの搭載は、大幅な効率アップにつながりそうだ。
なおキャブバックのユニットには、ボディの脱着に必要なウインチのほか、両側に収納ボックス、ショルダー部にLED投光器などを標準装備。このほかリアオーバーハング部に両開きの収納ラックを搭載。長尺物などを収納可能だ。
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