■ゲートや発券機がないため運転が苦手な人も使いやすい
商業施設の駐車場は、郊外の大規模モールなど「駐車料金無料」のところを除けば、入口のゲートにある発券機で駐車券を受け取り、店内のレジやサービスカウンターで割引処理を受け、出口にある精算機に挿入し出庫するという流れが一般的となっています。
しかし最近、入口や出口にゲートや発券機がなく、店内で配布されるバーコード付きレシートやQRコードを使って出庫手続きする「スマートパーク」を設置する商業施設が増えていることをご存じでしょうか。
このスマートパークを運営する「ピットデザイン」の担当者は、開発の目的を次のように話します。
「商業施設の駐車場ゲートは、お店を利用しないのに駐車するクルマで本来の利用者が駐車できないという不都合を解決するために設置されているものです。ところが、ゲートの発券機や精算機にクルマを寄せることが苦手なドライバーにとっては『クルマを擦ったらどうしよう』と、利用をためらう動機になってしまいます。
スマートパークは、そうした不便をなくし、お店の集客と不正駐車の防止に役立てるため開発しました」
スマートパークでは、精算機のディスプレイにタッチして自車のナンバープレートの数字部分を入力し、表示されたクルマの写真を確認し、精算機前面のリーダーにバーコードやQRコードをかざして出庫手続きをおこないます。
「クルマが入庫するとき、入口などに設置されたカメラがナンバーを読み取り、記録します。出庫の手続きでナンバーを入力すると、該当するクルマが表示される仕組みです。同じナンバーが複数ある場合はディスプレイに候補を複数表示し、利用者に選んでもらう仕組みになっています」
その際に利用者が入力するのはナンバーの数字の部分だけですが、実際には「品川」「練馬」といった地名など、ナンバープレートの情報はすべて記録しており、その認識精度は社内基準で「99.99%」とのことです。
「スマートパークの開発にあたっては既存の画像認識システムの利用を考えましたが、その精度は97%から98%で十分ではありませんでした。そこで社内で開発することとして、試行錯誤の結果、実用に耐える高い認識精度を実現することができました」
■コロナ禍で増え続けているその理由とは
そしてこのスマートパークは、先に挙げただけではない、大きなメリットが普及を後押ししているそうです。
「まず、磁気カードの駐車券が不要となり、コストが大きく削減できます。
次に出庫渋滞の解消です。大規模な商業施設では、出庫が集中する時間帯に出口ゲートでの精算待ちが発生しがちですが、スマートパークではあらかじめ精算機で手続きを済ませ、出口はノンストップ通過できるため、待ち時間は発生しません。
さらに一度きりで使い捨てされる磁気カード、出庫渋滞の細かいゴーストップで消費されるガソリンを削減することで、環境問題にも大きな効果をもたらすことができます」
そして読み取ったナンバープレートのデータを、防犯やマーケティングにも活用できるとのことです。
「万引きなどの発生データとナンバーデータを結びつけ、不審なクルマの入庫を店舗の警備部門に通知できます。スマートパークのそうした仕組みを察知した常習窃盗犯が寄りつかなくなり、導入店舗では被害が大きく減少しているという例もあります。
さらにナンバーの情報を利用して来店客のエリア分析をおこない、販促活動に役立てることも可能です。駐車台数に余裕のある店舗では、エリアごとに異なる料金体系とし、『短時間駐車なら店舗に近い屋内』『長時間駐車は割引時間の長い屋外』など、利用者の使い分けを促すといった細かい運用ができます。これもカメラによる画像認識システムだからこそできる特徴です」
また現在のコロナ禍では「モノに触れない=非接触」が求められ、何かに触れた後は消毒や手洗いが推奨されています。スマートパークでは入庫のときの「発券ボタン」への接触がないのはもちろん、出庫手続きも利用者のスマホにインストールしたアプリを使うことで、“非接触”が実現するとのことです。
「近い将来、電子マネーやクレジットカードなどと連携し、買い物データをそのまま転送することで、出庫手続きそのものをなくすことも視野に入っています」
なお気になる「精算せずにそのまま出庫してしまう利用者」ですが、じつはかなり少ないそうです。これは「カメラで撮影されている」ことに加え、日本人の民度の高さも表しているのではないでしょうか。
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