MEBアーキテクチャ使用 市販化準備中
フォルクスワーゲンのIDバギーは、現在開催中のモントレー・カーウィークにおけるペブルビーチ・コンクール・デレガンスでオフロード走行展示が行われた。メイヤーズ・マンクスにインスパイアされた電動2シーターがビーチを疾走し、1960年代のオリジナル・モデルとともに展示された。
3月のジュネーブ・モーターショーで初公開されたIDバギーはフォルクスワーゲン・グループのMEBアーキテクチャを使用し、ID3ハッチバックとともに今年中に生産が開始される。
市販型のIDバギーはまだ公の場に登場していない。少数かつ低コストのスタートアップであるe.GoモバイルがMEBプラットフォームのライセンスを取得し、IDバギーの開発および製造を担当しているとのことだ。
セールス&マーケティングを統括するユルゲン・スタックマンがジュネーブで語ったところによれば、IDバギーは市販化も「可能な段階」に達しているという。「ショーカーではなく、すでに準備ができている」と付け加えたが、フォルクスワーゲンのバッジをつけて販売されるかどうかは不明だ。
70%準備完了 IDと同等サイズで4WD化も
デザインチーフのクラウス・ビショフはAUTOCARに対し、このクルマが「70%準備完了」としている。スタックマンによればフォルクスワーゲンがデザインし、開発、生産はe.Goモバイルが担当するという。
IDバギーはリアに搭載されたモーターにより205ps、31.5kg-mを発生し、0-100km/h加速は7.2秒、最高速度は160km/hとなる。このエネルギーは62kWhのバッテリーから供給され、WLTPサイクルで250kmの走行が可能だ。
後輪駆動のパワートレインはオリジナルのバギーに使われたビートルのものと同様だ。しかしフォルクスワーゲンによれば他のIDモデルと同様にフロントアクスルにもモーターを搭載し4WD化される可能性もある。
IDバギーは全長4063mm、全幅1890mm、全高1463mmであり、ID3よりも若干短く、幅広く、低い。ホイールベースは2650mm、最低地上高は2400mmであり、18インチのホイールに大型のオフロードタイヤが取りつけられる。コンセプトカーは2シーターだが、ふたり分のリアシートが追加される可能性もある。
ドアやルーフなし 耐候性の高いインテリア
ビショフはこのバギーについて「モダンで古臭さはない」としている。そして彼は「われわれはオリジナルのバギーの精神を受け継ぎながら、フレッシュで新しいデザインを与えました」と付け加えた。
大型のフロントバンパーや円形のLEDヘッドライトはメイヤーズ・マンクスのバギーとも共通する。フロントのウインドスクリーンは自立式で、高いリアエンドにはタルガ風のロールバーが取りつけられる。
ドアは存在しないが、側面は低くなっており乗り降りはしやすい。また着脱式のカバーにより、日光や雨を遮ることができる。市販型のそれはよりしっかりとしたものになることが予想されている。
ミニマリストなインテリアには耐久性に優れる素材が使われている。シートには防水生地が使われ、排水用のドレーンも設けられている。
基本に立ち返るミニマルなインテリア
すべての操作系統は6角形のステアリングで行うことができる。またステアリング横のレバーにより、ドライブの選択やハンドブレーキの操作を行う。ステアリング後方には小さなインフォメーション・スクリーンが取りつけられるが、インフォテインメントシステムや自動運転などは装備されない。
「バギーは基本に立ち返るクルマです。未来志向の小さく楽しいクルマを作りたいのです」とビショフは語る。インフォテインメントシステムはないが、スマートフォンのブルートゥース接続によりスピーカーから音楽を流すことは可能だ。
アルミニウム、スティール、プラスティックを組み合わせたボディワークはMEBシャシーから取り外すこともできる。ビショフによれば、これによりe.Goなどが独自のボディを設計することも可能だという。
彼は「初代のバギーはビートルをベースとして小さな企業が作り上げましたが、今回もどんな企業と提携できるのか楽しみです。フォルクスワーゲン車は昔から提携先の手により素晴らしいクルマに生まれ変わった例が多数あります」と語った。
IDシリーズで過去のモデルを再現も
IDバギーは比較的ニッチなマシンだが、他のIDシリーズとのプラットフォーム共有により規模の経済の恩恵を受けることができるようだ。「市販化するからには、数十万台単位での販売を見込まなければなりません。IDハッチではそれが可能であり、これによってバギーも作ることができるのです」
このバギーの生産が開始される正確な時期は未定だ。しかしメインストリームのIDモデルが発表されてからとなるだろう。ハッチバックに続くのはSUVのクロス、バンのバズ、サルーンのヴィジョンなどが予定されている。そしてもう一台のSUVであるIDルームズ・コンセプトなども計画中だ。
バギーはフォルクスワーゲンによる過去のモデルの「再発明」の一部でもある。これはトランスポーターにインスパイアされたバズも含む。ビショフは以前にはビートルをはじめとした複数のモデルの計画も明かしている。
ジュネーブでIDバギーを展示するとともに、フォルクスワーゲンは移動式の充電ステーションのサービスを始めるという。このシステムはスマートフォンのモバイルバッテリーと同様の仕組みで、360kWhまでの充電能力を持つ。このシステムはIDなどから取り外された廃バッテリーを再利用し、音楽フェスなどの一時的な需要に対応するため臨時で設置されるものだ。
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