ドゥカティが表彰台を独占した、MotoGP第5戦フランスGPだった。優勝したマルコ・ベゼッチ(ムーニーVR46レーシング・チーム)はドライコンディションでの初優勝であり、今季2勝目。2位のホルヘ・マルティン(プリーマ・プラマック・レーシング)はマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)との2番手争いを制し、母国グランプリで3位フィニッシュを果たしたヨハン・ザルコ(プリーマ・プラマック・レーシング)は、大観衆の前で特別な表彰台に立った。
フランスGPで優勝を飾ったのは、マルコ・ベゼッチ(ムーニーVR46レーシング・チーム)だった。そしてベゼッチに続いたのは、ともにプリーマ・プラマック・レーシングのホルヘ・マルティンとヨハン・ザルコだ。フランスGPは、ドゥカティのサテライトチームが表彰台を独占したグランプリとなった。ちなみに、ベゼッチが前回優勝したアルゼンチンGPも、ドゥカティのサテライトチームによって表彰台が占められていた。
【ポイントランキング】2023MotoGP第5戦フランスGP終了時点
優勝したベゼッチは、ウエットコンディションだった第2戦アルゼンチンGPとドライコンディションの今大会、フランスGPでそれぞれ優勝して、今季2勝を挙げている。優勝回数としてはドゥカティのファクトリーライダーであり、8人のドゥカティライダーの筆頭格であるフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)に並び、チャンピオンシップでもバニャイアにわずか1ポイント差のランキング2番手につけている。
ベゼッチは7番グリッドからスタートして序盤にトップ集団に加わると、10周目にマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)をかわして2番手に浮上し、11周目にはジャック・ミラー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)をパスしてトップに立った。その後は、後方を引き離してチェッカーを受けた。
レース後の会見で、ベゼッチは「信じられない日になった。今朝の時点では、こういうレースになるとは思っていなかったよ」と、明かした。手ごたえを感じていたことは確かだが、優勝できるとは思っていなかったという。
「じつは昨日の時点でもうバイクにすごくいいフィーリングがあったから、スタートを決めればいけるかもしれないと思っていたんだ。優勝までは想定していなかったけどね。いいレースができたよ」
「今日はスタートしたときに、前のライダーより自分のほうが速いとわかったんだ。フロントタイヤの温度は少し心配ではあった。自分のライディングスタイルでソフトタイヤはぎりぎりだったからね」
「でも、僕は前のライダーをオーバーテイクできた。そしてトップに立って、いいペースを刻んだ。バイクのフィーリングはとてもよく、ラップを重ねるごとに後ろを引き離すことができた。とてもうれしいよ。ドライコンディションで、たくさんの観客がいるときに勝てたんだからね」
2位を獲得したマルティンは、土曜日のスプリントレースを1位でゴールしており、決勝レースでも好結果を収めた形だ。予選を得意とするマルティンは、スプリントレースについて自信を持っていた。第4戦までのスプリントレースでは2位が1回、3位が1回で優勝に手が届いていなかったが、第5戦にしてトップでゴールした。また、決勝レースとしては今季初の表彰台獲得である。
「表彰台はうれしい。今季初だ。つまり、スプリントレースじゃなくて日曜日のレースで初めての表彰台獲得だからね」
また、レース終盤の、マルケスとのバトルは、マルティンにとってポルトガルGPを想起させるものだった。開幕戦の決勝レースで、マルケスがミゲール・オリベイラ(クリプトデータRNF・MotoGPチーム)と接触、転倒したアクシデント。その直前にマルケスはマルティンとも接触していた。マルティンは転倒こそしなかったものの後退を余儀なくされ、ポルトガルGPのレース後、「彼(マルク)が僕のレースを台無しにするのはこれが初めてじゃない」と、怒りを隠さなかった。
フランスGPの決勝レースで繰り広げられたマルティンとマルケスのバトルは激しいものではあったが、しかし、クリーンなものでもあった。結果的には、残り2周でマルティンがマルケスをかわしたとき、マルケスがスリップダウンを喫してリタイアとなった。
「先頭集団に追いついた後、マルクとすごいバトルがあった。楽しんだよ。ポルティマオでのことがあったからね。コース上で解決する方法だったと思う。彼は速かったし、アグレッシブだった。でも、僕たちはお互いのためのスペースを残していたよ。最終的に、彼がちょっと苦しんでいるな、という場所で仕掛けてみたんだ。そして、彼はミスをした」
3位表彰台に立ったのは、母国グランプリだったザルコ。多くの観客が訪れたル・マン-ブガッティ・サーキットは金曜日から多くのファンが走行を見つめていたが、中でもフランス人ライダーであるザルコやファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)への反応は大きかった。コースに出ていく度に歓声と拍手が響き、フランス国旗が揺れる。パドックでは、モンスターエナジー・ヤマハMotoGPとプリーマ・プラマック・レーシングのチームトレーラーの前でクアルタラロとザルコを出待ちするファンが大勢おり、その数はどのチームよりも多かった。
そんな母国グランプリを3位でゴールしたザルコは、クールダウンラップでベゼッチから受け取った「1000GP」のフラッグを掲げながら客席に向かって手を振り、ゆっくりとパルクフェルメに向かっていた。フランスGPは、ロードレース世界選手権1000回目のグランプリでもあった。
「たくさんの観客がいるル・マンで表彰台を獲得できた。マルコから『1000GP』のフラッグを受け取って、そのときに今回がグランプリの歴史の中でも特別なグランプリだったと気がついたんだ。時間をかけてファンとその時間を楽しんだよ」
「ホルヘと一緒に表彰台に立てて、チームでふたつの表彰台を獲得できた。いい時間だったよ。表彰台は常にうれしいけど、フランスでの表彰台はもっとうれしい。特別な時間だった」
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