現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 現役空母がなぜ「年中無休の観光地」に!? SNSでその影響力を誇示 ロシアだけじゃない“長年任務に出ない空母”

ここから本文です

現役空母がなぜ「年中無休の観光地」に!? SNSでその影響力を誇示 ロシアだけじゃない“長年任務に出ない空母”

掲載 更新 12
現役空母がなぜ「年中無休の観光地」に!?  SNSでその影響力を誇示 ロシアだけじゃない“長年任務に出ない空母”

予算不足! 満足な活躍をできない空母!

 2025年7月11日、ロシア海軍唯一の空母「アドミラル・クズネツォフ」について、改修を断念し退役させる可能性があると報じられました。復帰が困難となった要因の一つは、約8年前からムルマンスクでオーバーホールおよび近代化改修のためにドック入りしたまま、作業が遅々として進んでいないことにあります。

【あ、結構楽しそう…】これが、観光地と化した「空母」の様子です(写真)

 一方、世界には明確な欠陥があるわけではなく、現役艦でありながらまったく出航せず、港に係留されたまま、しかも一般公開されて“博物艦”のような扱いを受けている空母も存在します。タイ海軍の空母「チャクリ・ナルエベト」がその例です。

 この空母は、スペインの造船会社バサンがスペイン海軍向けに建造した軽空母「プリンシペ・デ・アストゥリアス」の縮小・改良型にあたります。1996年1月に就役し、タイ初の空母であると同時に、東南アジアで初めてジェット戦闘機の運用が可能な新造空母として注目を集めました。

 就役から30年も経っていない比較的新しい艦であり、本来であればタイ海軍の中核として活躍していてもおかしくない存在です。しかし、実際には母港であるラヨーンにほぼ常時停泊しており、損傷しているわけでもなく、機関に問題があるわけでもないにもかかわらず、運用されることはほとんどありません。

 その背景には、就役直後の1997年7月に発生したアジア通貨危機があります。危機の震源地となったタイは深刻な経済不況に見舞われ、軍事予算も大幅に削減されました。空母の運用には、通常の乗組員に加えて、艦載機のパイロットや整備要員、さらには多額の維持・運用費が必要です。そのため、コストのかかる空母を頻繁に出動させることが難しくなり、外洋に出る任務は月に1回程度にまで激減しました。

 さらに、艦載機として格安で導入されたスペイン製のV-8S「マタドール」(垂直離着陸機「ハリアー」のスペイン版)にも問題がありました。導入時点ですでに老朽化が進んでおり、機体寿命も短いと見込まれていました。加えて、空母そのものがほとんど出航しなかったため、2000年代中頃には早々に運用を停止。結果として「チャクリ・ナルエベト」は事実上のヘリ空母となってしまいました。

 こうした経緯から、同艦は実戦的な任務に就くことがなくなり、現在では観艦式などの儀礼的行事に参加する程度の運用にとどまっています。

「09:00~16:00 年中無休」もはや空母の説明じゃねえ!

 「チャクリ・ナルエベト」が本格的な任務に就いた数少ない例が、2004年に発生したスマトラ島沖地震の際です。このときは、その巨体とヘリコプターの発着能力を活かし、災害派遣において物資輸送や被害状況の確認などで重要な役割を果たしました。

 また、2010年代にタイで発生した大規模洪水の際にも派遣されており、艦名である「チャクリ・ナルエベト」(“チャクリー王朝の偉人”を意味する)にふさわしい、国民を助ける活躍を見せました。

 2024年現在、同艦は退役こそしていないものの、すでに“海に浮かぶ博物館”のような扱いを受けています。インターネット上では、一般人が甲板で撮影したフォトジェニックな写真が多数確認でき、旅行サイトでも観光地として紹介され、「開館時間は9:00~16:00。タイ人は入場無料」「毎日見学可能」といった情報も見られます。現役艦としては、やや寂しい現実です。

 とはいえ、タイ国民にとっては唯一の空母であり、災害派遣における実績もあることから、インターネット上のレビューなどでは、「緊急時には空母として活躍する特別な艦」として一定の期待が寄せられています。

 近年では、トルコが強襲揚陸艦「アナドル」に無人航空機「バイラクタルTB3」を搭載し、無人機空母化を進めていることに触発され、タイ海軍でも「チャクリ・ナルエベト」を無人機運用艦、あるいは小型のマルチコプター型ドローンを搭載する“ドローン空母”として再活用する構想が模索されています。もしかすると、“博物艦”という現状を脱し、再び実戦的な役割を担う日が訪れるかもしれません。(乗りものニュース編集部)

文:乗りものニュース 乗りものニュース編集部
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

「ランクルを“装甲化”するらしいんですが」民生車の軍事転用、成功には何が必要? 軍採用メーカーの答えは
「ランクルを“装甲化”するらしいんですが」民生車の軍事転用、成功には何が必要? 軍採用メーカーの答えは
乗りものニュース
薄型0.3cmで収納力アップ! “忘れ物・探し物が減る”ノートPC用ガジェットポーチに新色が登場 高機能なのにコストパフォーマンスに優れた一品とは
薄型0.3cmで収納力アップ! “忘れ物・探し物が減る”ノートPC用ガジェットポーチに新色が登場 高機能なのにコストパフォーマンスに優れた一品とは
VAGUE
次世代モビリティ集結、川崎・橘公園で12月13日オープニングイベント…試乗会や子ども免許証発行も
次世代モビリティ集結、川崎・橘公園で12月13日オープニングイベント…試乗会や子ども免許証発行も
レスポンス
より上質な室内空間を目指してレクサスUX300hがマイナーチェンジ
より上質な室内空間を目指してレクサスUX300hがマイナーチェンジ
カー・アンド・ドライバー
運転上手の共通点はステリングの足し算とペダルの引き算! 今からできる良いドライバーになる運転術
運転上手の共通点はステリングの足し算とペダルの引き算! 今からできる良いドライバーになる運転術
ベストカーWeb
約169万円! “デカグリル”採用のトヨタ「“5人乗り”スライドドアワゴン」! 「TOYOTA」文字ロゴもイイ「SUVワゴン」ダンクとは
約169万円! “デカグリル”採用のトヨタ「“5人乗り”スライドドアワゴン」! 「TOYOTA」文字ロゴもイイ「SUVワゴン」ダンクとは
くるまのニュース
【情報アップデート】伝統と現代性の融合 新型メルセデスGLC EQ 489馬力とエアサスペンションにより、この巨体はオフロード走行にも適している!
【情報アップデート】伝統と現代性の融合 新型メルセデスGLC EQ 489馬力とエアサスペンションにより、この巨体はオフロード走行にも適している!
AutoBild Japan
【クルマ文化を一緒に盛り上げたい】レーシングドライバー塚本ナナミがS耐参戦へ向け、クラウドファンディング開始!
【クルマ文化を一緒に盛り上げたい】レーシングドライバー塚本ナナミがS耐参戦へ向け、クラウドファンディング開始!
AUTOCAR JAPAN
計画から68年、なかなかできない超重要道路「横浜藤沢線」12月に一部4車線化! 圏央道アクセス担う
計画から68年、なかなかできない超重要道路「横浜藤沢線」12月に一部4車線化! 圏央道アクセス担う
乗りものニュース
ハーレー「“新型”ミドルクラスネイキッド」登場! “440cc”のちょうどいいサイズで扱いやすい! “X”シリーズの新顔「X440」インドで発表
ハーレー「“新型”ミドルクラスネイキッド」登場! “440cc”のちょうどいいサイズで扱いやすい! “X”シリーズの新顔「X440」インドで発表
くるまのニュース
スズキ初の量産EV『eビターラ』、最高評価の5つ星を獲得…インドNCAP
スズキ初の量産EV『eビターラ』、最高評価の5つ星を獲得…インドNCAP
レスポンス
【ホンダ・リード125】定番の原付ニ種スクーター、カラーバリエーション変更で2026年1月29日発売! 価格は35万2000円
【ホンダ・リード125】定番の原付ニ種スクーター、カラーバリエーション変更で2026年1月29日発売! 価格は35万2000円
モーサイ
キャンピングカー市場1100億円突破! なぜ市場は「新車」「中古」で二分されるのか? 市場拡大の裏側で進む変化とは
キャンピングカー市場1100億円突破! なぜ市場は「新車」「中古」で二分されるのか? 市場拡大の裏側で進む変化とは
Merkmal
3列7人乗りSUVがフルモデルチェンジ! メルセデス・ベンツ新型『GLB』発表 車内は広く快適に
3列7人乗りSUVがフルモデルチェンジ! メルセデス・ベンツ新型『GLB』発表 車内は広く快適に
AUTOCAR JAPAN
スズキ「V-STROM 800」2025年モデル 新色となって再評価「この価格はありがたい」など反響
スズキ「V-STROM 800」2025年モデル 新色となって再評価「この価格はありがたい」など反響
バイクのニュース
「なんかこの信号永遠に赤なんじゃねーの?」 信号機の変わるタイミングはどう決まる?
「なんかこの信号永遠に赤なんじゃねーの?」 信号機の変わるタイミングはどう決まる?
WEB CARTOP
“無施錠・エンジンかけっぱなし”の「パトカー」盗まれた!? 逮捕された男「乗り心地が良さそうだと思って」 “車両の管理体制”に賛否両論
“無施錠・エンジンかけっぱなし”の「パトカー」盗まれた!? 逮捕された男「乗り心地が良さそうだと思って」 “車両の管理体制”に賛否両論
くるまのニュース
サンキューピアストリ! ランド・ノリス、初のF1王者は『学びが多かった』チームメイトのおかげ
サンキューピアストリ! ランド・ノリス、初のF1王者は『学びが多かった』チームメイトのおかげ
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

12件
  • aid********
    ミエで空母保有しても維持できず、金食い虫になるだけ。
    整備や訓練考えたら乗組員も含めて複数セットが必要だし、
    国によっては陸上基地だけで十分だったりする。
  • もんちゃん
    今のロシアはウクライナの戦いが簡単に終わると思ったら3年過ぎても続いている
    だから空母改修に予算を回す余裕がないのだろう
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村