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ゴルフGTIと競ったホットハッチ フォード・エスコート XR3/XR3i 英国版クラシック・ガイド 前編

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ゴルフGTIと競ったホットハッチ フォード・エスコート XR3/XR3i 英国版クラシック・ガイド 前編

FFへ一新したMk3のエスコート

FRレイアウトを改め、当時5億ポンドの開発費用を掛けてFFへ一新した3代目のMk3 フォード・エスコート。ドイツ人デザイナー、ウーヴェ・バーンセン氏によるスタイリングと、新しいオーバーヘッドカム・エンジンで、瞬く間に英国のベストセラーになった。

【画像】FFのエスコート XR3/XR3i 現代のフォーカス STとゴルフ GTI MSTの復刻エスコートも 全101枚

社運をかけたモデルの1つといえ、商業的な成功を収めた。だが同時に、イメージをリードする高性能なエスコートも必要とされた。モータースポーツでの活躍は予定になかったが、先代までのRSシリーズに代わる存在が求められていた。

そこで1980年の当初から設定されたのが、今回ご紹介するXR3だ。RSシリーズのようにラリー参戦を前提としたホモロゲーション・マシンではなく、スポーティな仕様に留まっていたが。

ちなみに、この名称はマーキュリー・クーガーの高性能版、XR-7から転じたものだった。また1982年にはRS 1600iも登場。世代末期にはRSターボへ展開している。

3代目エスコートのXR3では、新しいヘミヘッドの1.6L 4気筒エンジンに、ツインチョーク・ウェーバーキャブレターをドッキング。97psの最高出力を与え、公道では充分な速さを発揮した。

フォードがライバル視していたのは、FFホットハッチの元祖といえるフォルクスワーゲン・ゴルフ GTI。それでも、最高速度では空力特性で勝る初代GTIには及ばず、乗り心地や限界付近の操縦性でも後塵を拝してしまうが。

XR3iは最高速でゴルフ GTIを僅かに凌駕

スタイリッシュで手頃な価格のエスコート XR3は、飛ぶように売れた。スポイラー付きで約5000ポンドは、若者の気持ちを掴むことに成功した。

「多くの人の注目を集める見た目は素晴らしく、エスコートの仕上がりは魅力的。これほど好意的に受け止められる量産車は珍しい」。と、当時の自動車誌は評価している。

そんな好調を加速させるべく、フォードの高性能モデルを手掛けるスペシャリスト・ビークル・エンジニアリング(SVE)部門も参画。燃料インジェクションでパワーアップしたXR3iが1982年に投入される。

3代目エスコートは、総じて硬めの乗り心地に不満が出た。フォードはその声を聞きサスペンションを改良。XR3iは最高速でゴルフ GTIを僅かに凌駕しただけでなく、乗り心地や操縦性も改善され、シャシー能力は接近していた。

1986年には、XR3仕様のシャシーが与えられたカブリオレが登場。ボディシェルはドイツのカルマン社によって強化され、引き締められたサスペンションを受け止めた。当時は高価といえたが、現在はハッチバックより手頃に流通している。

前後のスポイラーに、四葉のクローバーと呼ばれたアルミホイールが特徴のXR3やXR3iは、現役時代には英国で最も多売のホットハッチになった。特にXR3は、3代目エスコートの総生産数の10%を占めている。初年度だけで1万1000台が売れたという。

トランスミッションは5速マニュアル。実用的で運転が楽しい、クルマ好きのためのハッチバックだった。

オーナーの意見を聞いてみる

5速MTを搭載した1982年式エスコート XR3のオーナー、イアン・ジョーンズ氏。「天気が悪い日は運転しません」。と話すほど、大切にしている。

「最初のオーナーが購入後すぐに防錆塗装をシャシーに施しており、エスコートは守られてきました。サンルーフとプライバシーガラスを装備した上級仕様で、グレートブリテン島の南西、サウス・ウェールズ地方でずっと過ごしてきたようです」

「わたしは、26年前に400ポンドで購入しています。妻も、サンバースト・レッドに塗られたXR3のオーナーだったんですよ」

「1957年式シボレー・ベルエアに夢中になり、10年ほど放置状態でした。それでも、ブレーキのリビルドだけで復活できました。現在の走行距離は大体13万5000kmですが、これまでの26年間で1万6000km位しか走っていません」

「他にも1966年式のMGB GTやオペル・マンタなども所有しており、エスコートの出番は少ないですね。息子のロリーも、運転を楽しんでいることがうれしいです。イベントでの反応も良いですよ」

英国で掘り出し物を発見

フォード・エスコート XR3(Mk3/南アフリカ仕様)

登録:1984年 走行:2万6951km 価格:5995ポンド(約99万円)

南アフリカで生産された、キャブレター仕様のXR3。派手なサイドストライプが特徴で、暑い日差しで内装は日焼けしている。ダッシュボードも割れているが、それ以外のレザー内装の状態は悪くない。純正のラリー風ホイールが見た目を引き締める。

英国で乗るには、車検整備が求められる。幾つかの修理も必要ということだが、既に輸入関税は支払い済み。賢明な価格のMk3 XR3といえそうだ。

フォード・エスコート XR3i カブリオレ(Mk4/英国仕様)

登録:1989年 走行:11万1000km 価格:9000ポンド(約149万円)以下

ダイヤモンド・ホワイトのボディが美しいカブリオレは、2020年にレストア済み。標準仕様で整えられてから、殆ど乗られていない。エンジンやサスペンション、ブレーキはリビルドされている。

RSターボ用のボディキットとアルミホイールを履いており、ルックスも良い。オリジナルのレカロシートに破れはないが、若干生地が浮いているという。車検も付いている。

中古車購入時の注意点などは後編にて。

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