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みたことある「あのアート」 どのように作られる? 芸術家を訪問

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みたことある「あのアート」 どのように作られる? 芸術家を訪問

もくじ

ー どこかでみたことのある「あのアート」
ー 彼の製作スタイルが確立されるまで
ー すべてが手作業 多くの痛みもともなう
ー 並行して進むプロトタイプ 最長で9カ月
ー 彫刻の強欲:そのほかの自動車アートワーク

ロールス・ロイスとアートの意外な関係 CEO語る「高級」の本質

どこかでみたことのある「あのアート」

ロンドンの東の端にある、これといった特徴のない、落書きがされた低層住宅で、それは誕生する。

表札のない二重のドアのむこう側で、ベネディクト・ラドクリフは、何の変哲もない柔らかい鉄線から、中に浮いているような、立体的なクルマを造りだす。

切断、曲げ、溶接、塗装を経て創造される、蛍光色の彫刻は、ひとびとの関心を鷲掴みにし、時に思考を困惑させる。

多くのひとは、ラドクリフの作品を写真でみているはずである。ブライトオレンジのランボルギーニ・カウンタック、ブリリアントホワイトのスバル・インプレッサP1、ネオンピンクのレンジ・ローバー・イヴォーク…。

これらはみな、フォトショップで描かれ、背景と合成されたかのようにみえるが、本当に実在する「物体」なのである。

ヒースロー空港のターミナル2に降り立つと、彼の作品であるロンドンタクシーをみつけることができる。空港から依頼を受けて造られた、近代イギリスの象徴である、オレンジのオースチンFX4である。

空間に存在する、極限まで簡略化された、実寸大のワイヤー・フレームで作られた、すべての作品は、瞬時にそのクルマとわかるものばかりだ。

彼の製作スタイルが確立されるまで

グラスゴーの「マッキントッシュ・スクール・オブ・アーキテクチャ」へ通っている時、ラドクリフは、複製と溶接の技術をアンディ・スコットから学んだ。

アンディ・スコットは、ワイヤー・フレームの「ヘビー・ホース」の製作者であり、また、M8とM9高速道路沿いにそびえ立つ30メートルの「ケルピー」の製作者でもある。

2004年に卒業した後、ラドクリフは、個展のひとつとして、インプレッサを題材にした、ワイヤー・フレームである「モダン・ジャパニーズ・クラシック」を発表した。

それは室内に展示するには大き過ぎたため、室外に「駐車」され、寒々としたグラスゴーの街角の埃のなかで眩しく輝いていたという。

その作品で、彼のスタイルが確立された。ブリック・レーンの外れにあるラドクリフのスタジオは、ワイヤー・フレーム・カーを制作する「作業用テーブル」に支配されている。

壁には、巨大な自転車のフレームや、彼が2012年のV&A美術館で展示した、実寸大のホンダ・ゴールド・ウイング・オートバイが掲げられ、彼の次のプロジェクトである、フェラーリF40の実寸大の設計図もある。

しかし、最も興味深い作品は最も小さな作品群にあった。顧客向けに制作されている、完成間近の1:5スケールのランチア・デルタ・インテグラーレ・エボIである。

すべてが手作業 多くの痛みもともなう

デルタ・インテグラーレは未塗装で、ホイールも未装着であるため、治具で支えられている状態であるが、その姿にも、個々のディテールにも、既に圧倒される状態にある。鼻先にあるシールド形状のバッジも、長細い鉄線で完全に再現されているのである。

彼は作業工程の全容を説明してくれた。ネット上の図面や写真から、前面、後面、側面からの実寸を求められる縮尺へと、手作業で縮めていく。設計図をつくるためである。

一束のインテグラーレのスケッチは、この創造的なプロセスを物語る。コンピュータも3Dプリンターも使うわけではない、手作業である。

「わたしがしている事は、とてもローテクなのです」彼は言う。

「最初に設計図を造り、それをもとに制作に取り掛かります。手始めにフロントバンパーを仕上げ、リアバンパー、ヘッドライト、そのほかの部品を順々に造っていきます。極めてストレートな精神的労働です、切断し、溶接し、研磨する。しかし、とても重要な事は、これらの鉄線を使って造っているのは、実寸大であるということです」

ラドクリフは、補助的にワイヤーグリッドを使って、モデルとなるクルマのプロポーションを崩さないように心掛けるが、しかし、この作業は苦行であることには変わりはない。

溶接の際に発生する熱によっても形状は破壊されてしまうため、継続的に調整をしていかなければならないのだ。

「みた目がすべてなのです。何度もみた目を確認して、次の日に改めてみた目を確認します。上手くいくかどうかは、わかりません。エンジニアなら違ったアプローチをするかもしれませんが、わたしにはこれしか方法がないのです。それは同時に多くの痛みもともないます」

製作過程や期間はどれくらいのものなのだろう?

並行して進むプロトタイプ 最長で9カ月

製作過程は、その大きさに関わらず一貫している。フルスケールのクルマの彫刻では、10mmの鉄線を使ってMIG溶接し、スプレーで塗装する。

一方で、例えば、ランチアのような場合は、3mmの鉄線を溶接しTIG溶接し、パウダーコーティングする。

いずれにしても、曲げたり、形づくることは手作業で行われ、所要期間は、10から16週間。ラドクリフは、同時にスタジオの外で、JCB掘削機や全長6mのコマツの採鉱トラックといった、フルスケールに及ぶ、ほかのプロジェクトも手がけている。所要期間は、9カ月であり、その重さは、彼のクルマの作品の10倍ほどの1500kgである。

ほかの芸術品と同様に、それらに付けられる価格は流動的である。ラドクリフは、初期のスバルの作品を約£23,000(330万円)で売り、ヒースロー空港は、2014年にロンドンタクシーに£100,000(1400万円)を支払った。

次の作品であるF40は、ニューヨークのクラシックカークラブの依頼で製作され、その後は、プジョー205 GTi、または、クレーマー・レーシングのポルシェ935であるかもしれない。

リクエストされたモデル名を語る彼の眼は輝いている。

もっとも好きなクルマは? という質問に対する彼の答えを聞いて、狂気的にさえ感じるアートができあがる理由がわかった気がした。

「わたしはフェラーリ288 GTOがとても好きです。あのホイールアーチは、たまらない。とてもセクシーです!」

彫刻の強欲:そのほかの自動車アートワーク

セントラル・フィーチャー(ゲリー・ジュダ)

カルカッタ生まれのジュダは、1997年以来、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのセンターピースに掲げられる、フェラーリ、ロータス、アルファ・ロメオといったモデルを制作している。2017の作品は、バーニー・エクレストンのキャリアを題材に探求している。

キャディラック・ランチ(アント・ファーム作品群)

1974年に製作されたこの作品群は、10台のキャデラックから成り立っている。

1949年クラブ・セダンから1963年セダン・デ・ヴィルが、テキサス州のアマリロにフロント側が埋められた格好で展示されている。当初は、オリジナルを維持していたが、近年では、観光客により多彩な色で着色されている。

ルイ・シボレー(クリスチャン・ゴンゼンバッハ)

ルイ・シボレーの故郷である、スイスのラ・ショー・ド・フォンに展示されている、8トン、5mの磨き上げられたステンレス製の反対のイメージの半身像は、シボレの創業100年を記念して2011年に製作された。

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