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【F1第16戦無線レビュー(2)】「後ろのみんな、起きてるか?」単独走行を続けるフェルスタッペンがチームに発破

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【F1第16戦無線レビュー(2)】「後ろのみんな、起きてるか?」単独走行を続けるフェルスタッペンがチームに発破

 2024年F1第16戦イタリアGP。ワン・ツー体制に入ったマクラーレンはチームメイト同士の争いを繰り広げ、優勝を目指し2ストップ戦略を遂行していた。一方彼らのピットストップのタイミングでトップに立ったフェラーリだったが、ホームレースで勝つためには1ストップ戦略以外の選択肢は残されていなかった。イタリアGP後半を無線とともに振り返る。

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 レース中盤、ハードタイヤスタートのレッドブル2台が次々にピットに向かい、オスカー・ピアストリ、ランド・ノリスのマクラーレン1-2体制となった。両者の差は1.5~2秒ほど。ノリスとしては、何としても1周目に失った首位を奪い返したいところだ。

23周目
ウィル・ジョゼフ(→ノリス):オスカーとレースしていいぞ。パパイヤルールだ。

『パパイヤルール』について、ノリスはレース後、「単純にぶつかるなということだよ」と語っている。同士討ちをしない限り、自由に戦っていいと言う指示だった。しかし3番手のシャルル・ルクレール(フェラーリ)は、4秒ほど後方にぴたりと付けている。

31周目
ブライアン・ボッツィ(→ルクレール):ノリスが苦しみ出している。レッドブルもハードの15周目あたりでそうだった。

34周目
ノリス:どうしてこんなに左フロントを潰してしまったのか、わからない。

 30周目には、ノリスはピアストリから5秒近くまで引き離されていた。

 この段階でマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がこんな無線を投げた

フェルスタッペン:ノリスと戦っていい?
ジャンピエロ・ランビアーゼ:いいよ。

 ノリスが2回目のピットインをした場合、ペースを上げれば自分が先行できる。ドライバーズ選手権の直接のライバルであるノリスに、できるだけ多くのポイントを獲らせないためだった。

 後方では、33周目にケビン・マグヌッセン(ハース)がアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)を抜いて、10番手に上がっていた。ただしマグヌッセンはピエール・ガスリー(アルピーヌ)との接触事故で10秒ペナルティを科されていた。

35周目
ジェームズ・アーウィン:マグヌッセンはまだ10秒ペナルティを消化していない。このまま走り切るかどうかだな。
アルボン:そうなんだけど、僕にどうしてほしいのかもっと前に言ってよ。いつも優柔不断すぎるよ。

 温厚なアルボンから、思わず出たひと言。マグヌッセンのペナルティのことを知っていたら、無駄なバトルをしなかったのにという思いがあったのだろう。

38周目
トム・スタラード:1ストップで行ける可能性はあると思うか?
ピアストリ:全然ダメだ。左フロントが完全に死んでいる。
スタラード:了解した。

 32周目にノリスが2回目のタイヤ交換に向かい、いったん6番手に後退。2番手にルクレール、3番手にもカルロス・サインツ(フェラーリ)が上がってきた。彼らはこのまま1ストップで行くのか。だったらこちらも同じ戦略で、とマクラーレン陣営は考えたようだが、ピアストリには、もはやそれは無理だった。

 38周目、ピアストリがピットインし、3番手に後退。ルクレール、サインツの1-2体制となった。ノリスは4番手だ。

ジョゼフ(→ノリス):フェラーリが2台とも1ストップを狙っているかもしれない。難しいと思っているようだが、トライするかもしれない。ここからは予選ペースで行くぞ。

 たとえ彼らが1回ストップで行ったとしても、自分たちが本気で走れば抜き返せると信じていたのだろう。

 一方のフェラーリの2台にしてみれば、もはやこのまま走り切る選択肢しかなかった。

45周目
サインツ:左フロントがほとんど終わっているけど、トライするよ。

 その直後にピアストリがサインツを抜き、2番手に。11秒前方のルクレールを激しく追う。必死に逃げ切りにかかるルクレール。

47周目
ボッツィ:ブレーキバランスプラス1だ。
ルクレール:ほっといてくれないか。頼まれたことを僕がやらなかった時以外は、同じことを10回も言わないでくれ。

49周目
フェルスタッペン:後ろにいるみんな、起きてるか? 確かにクソみたいなポジションだけど、大事なレースだよ。
ランビアーゼ:わかってるよ、マックス。

 6番手のフェルスタッペンは前後のメルセデスとはかなり間隔が開いた状況で、淡々と周回を重ねていた。とはいえチームから何も言ってこないのは、あんまりだと思ったのだろう。

 そしてルクレールは見事に逃げ切り、5月のモナコ以来となる今季2勝目を挙げた。

ボッツィ:(イタリア語で絶叫)これは夢なのか?! 夢じゃないよな?
ルクレール:(同じくイタリア語で)現実だよ! 凄すぎる! また勝ったぞ!!
フレデリック・バスール代表:グラッツェ、シャルル。同じ年にモナコとモンツァで勝つなんて!
ルクレール:マンマミーア。心震えるシーズンだよね。いい時も悪い時もあったけど、とにかくみんなに感謝だ。ここまでやってくれたファクトリーのみんなにも。本当にありがとう。最高だ!! 最高の戦略だった。グラッツェ

スタラード:P2だ。よくやった、オスカー。あと、ほんのちょっとだった。
ピアストリ:xxxxx! ありがとう……

 かなり沈んだ調子の「ありがとう」だった。ノリスの無線からも、落胆の様子が伝わってくる。

ジョゼフ:ファステストを取ったぞ。
ノリス:そうだね。でもxxxだ! いや、何でもない。

 サインツはルクレールと並走しながら、チームメイトを祝福した。

サインツ:ブラボー、ブラボー。みんな、おめでとう。ふさわしい勝利だ。

 そしてF1デビュー戦のフランコ・コラピント(ウイリアムズ)は、見事に12位完走を果たした。コラピント抜擢を決めたジェームズ・ボウルズ代表もほっとしたのだろう。直々に祝福した。

ボウルズ:フランク、素晴らしいレースだった。ミスもなく、アレックスのわずか数秒遅れでチェッカーを受けた。予選の速さも素晴らしかった。このまま行けば、今後十分に戦えるぞ。申し分のないデビュー戦だったし、これからが楽しみだ。
コラピント:ジェームズ、この機会を与えてくれて、ありがとう。存分に楽しんだよ。ただ、あなたが言ってたように、すごく痛い。レーシングカーを運転して、こんな痛みを感じたのは初めてだ。でも、とにかく楽しかった!

 これほどの長丁場のレースを走ったのは、人生で初めて。訴えていたのは、おそらく首の痛みだろうか。しかしそれも含めて、最高のデビュー戦を堪能したコラピントだった。

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