美しく、オーラのあるエクステリアだけでも、所有する価値があると思わせるほど、美しい。カッコ良い。伸びやかなプロポーション、ボリューム感のあるリアフェンダー、工業製品でありながら、機械でありながら、しなやかな筋肉をまとう動物のような、有機的雰囲気を醸し出している。そして、硬質なボディとソフトトップのコントラストも印象的だ。
ソフトトップを開けると、インテリアが露わになるが、フロントシートバックにも、上質なマテリアルがあしらわれ、デザインが考えられていることに驚く。クローズドの状態ではほとんど見えないし、見ない部分にもかかわらず、だ。こんなディテールに至るまでこだわり、贅を尽くし、と、そんな作り手の思い入れさえ伝わるクルマである。
1位はメルセデス・ベンツ Aクラス!──2018年の「我が5台」 Vol.1 小川フミオ編
もちろん、走りも満足度も高い。スポーティだけど、尖ったスポーツカーではなく、GTカーの落とし所を心得たチューニングだ。たとえば、アクセルレスポンスひとつとっても、過敏すぎず、人に寄り添う絶妙なフィーリングだ。ロングドライブでは、走るほどに魅了されていく。トップを開ければそれだけで別世界が広がる贅沢さも併せ持つ。
一方で、ハイパワー、オープンモデルでありながら、一般道はもちろん、雪道でさえもしっかりとトラクションがかかり、見事なハンドリングを披露したのには驚いた。見掛け倒しじゃない、ホンモノのGT。それがDB11ヴォランテを評価した理由だ。
かつて一世を風靡した名車が帰ってきた! しかも、時代に即したスポーツカーとはいえ、オリジナルに限りなく忠実に。
今、クルマは“CAE”だ“Maas”と、自動化、電動化、コモディティ化などさまざまな変革の過渡期にある。それはそれで大事な技術。でも、まだまだクルマを所有する歓び、操る楽しさを享受する権利やシチュエーションはある。そんななか、ライトウェイトで本質的な走りの良さ、ドライビングプレジャーを追求したアルピーヌA110の登場は、クルマファンにとっては嬉しい限りだ。
でも、実は私、このクルマにまだちゃんと乗れていない。したがって詳細なインプレッションは語れない。それでも2位か!? はい、自信を持って、オススメします!
軽量化ボディ、ミドシップエンジンというパッケージングやレイアウトに始まり、ルノー・スポールの手によってチューニングされたとなれば、その性能に疑いの余地はない。
一刻も早く、がっつり、じっくり乗ってみたい。そんな期待も込めて2位に選んだ。
昨今、世界的に人気のSUVであるが、今年登場したなかで特に印象的だったのがボルボ XC40。ファミリーイメージの強いボルボのなかにあって、”me”をキーワードにパーソナル感満載の1台だ。
エクステリアデザインは、上質ながらもカジュアルで、上位モデルと明確に差別化している。インテリアも、デスクに座っているかのように、手の届く距離に必要なものがレイアウトされる機能性の高さが快適だ。フェルトを使った内装、ドリフトウッド(流木)のパネルなど、柔らかい雰囲気、自然を感じさせるスカンジナビアンデザインも、ボルボならではの魅力である。
初代誕生から50年以上経つカローラは、日本を代表するスタンダードモデルだ。日本車のなかで、名前を変えることもなく、これだけ脈々とモデルチェンジを重ねてきたクルマも数少ない。が、最近はあまり魅力を感じる存在じゃなかった。
私は出張が多く、レンタカーでカローラに乗る機会も多々ある。先代のカローラアクシオ(セダン)、カローラフィールダーともに、居住性やラゲッジルーム容量など、空間的な使い勝手には満足だった。レーシングギアの入った大きなスーツケースもゴルフバッグもすんなり飲み込む。燃費も十分満足な数値だった。
でも、けっしてドライブの気分を上げてくれるクルマではなかった。快適性、静粛性、そしてハンドリングという点では、まったく魅力を感じなかった。まさに、“レンタカーや営業車向け”といったところか。しかも、カローラの歩みとともに、ユーザーの平均年齢も大幅に上がってしまった。
そんな状況を憂えて大革新したのが新型のカローラスポーツだ。マジメにきっちり作り込まれている。ボディタイプがハッチバックだからかもしれないが、気持ち良く走れる。エンジンとCVTの相性も良く、乗り心地は快適、それでいて、サーキットの限界域もそつなくこなす。
サイズが大きい、値段が高いといった声もあるが、Cセグメントのグローバルスタンダードという視点で見れば、納得できる1台だ。
今年、あらためて乗って鮮明な記憶が残っているクルマはジャガーの2ドアクーペ「Fタイプ」の高性能バージョン“SVR”だ。ジャガーといえばラグジュアリーなイメージの強いブランドかもしれないが、実はれっきとしたスポーツカーメーカーであり、そのDNAを色濃く感じさせるのがFタイプだ。
5.0リッターV型8気筒スーパーチャージャー付きエンジンは、575psまでパワーアップ。それでいながら、ハイパワーに振り回されず、しっかり躾けられているのだ。さすがにこれだけのパワーを受け止めるのは2WDではなく4WDであるが、リア駆動メインで、路面に応じて最大フロントに37%のトルクを配分する。このFRテイストの強い乗り味も気持ち良い走りに貢献している。
この賢い4WDと、ABSやESPといった電子制御が統合制御され、トリッキーにならずグッド・ハンドリングを堪能出来る。しかも、エキゾーストサウンドもかなりゴキゲン。Fタイプの実力をあらためて思い知った1台であった。
【著者プロフィール】
佐藤久実(さとうくみ):東京都生まれ。明治薬科大学卒。大学在学中にレースデビュー。ニュルブルクリンク24時間レース、スパ・フランコルシャン24時間レースなど海外の24時間レースでも入賞を果たす。レースで培ったスキルをベースに、ドライビング・インストラクターとしても活動する。
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