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【電動のネオクラシック】エリーゼ・ベースのテスラ・ロードスター 先進企業の起源 後編

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【電動のネオクラシック】エリーゼ・ベースのテスラ・ロードスター 先進企業の起源 後編

アルピナB12を手放しロードスターを購入

執筆:Alastair Clements(アラステア・クレメンツ)

【画像】テスラ・ロードスターとロータス・エリーゼ 最新のテスラ モデル3とYも 全96枚

撮影:Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


英国でルイス・ブラック氏とともにテスラ・ロードスターを販売してきた、ドリュー・ウィーラー氏が話す。「英国は電気自動車の普及が遅れていました。ですが近年、急に光が差したように熱くなってきましたね」

「テスラ・ロードスターは、最初の電動クラシック・モデルになると考えられ始めています。ただ、欲しいと思って探しても市場規模は小さい。ロードスターの右ハンドル車は非常に限られます」

「ワンオーナー車のロードスター・シグネチャー250という例では、現在の価格は6桁ポンド(1550万円)に接近しています。市場は加熱したままで、減速感はありません」

この人気に気を良くしている1人が、ライトニング・グリーンが眩しい2010年式ロードスターを、半年前に手にしたドリュー・ファーガソン氏。年金をつぎ込んで購入したという。

このロードスターも、初期に生産された250台の1台。シグネチャー250だ。アルピナB12を手放して、ガレージに収めることにした。以前には、BMW 3.0 CSLも所有していたことがあるそうだ。

「このクルマが存在していたことすら、出会うまで忘れていました。BP社で働いていた時に会社の駐車場で目にし、所有したいと考えたんです。人とは違った変わったクルマを、好んで今までも乗ってきましたから」。ファーガソンが笑う。

「バッテリー交換は前提でしたが、PEMという部品が壊れると知り調べました。半年ほどかけて、ルイスに辿り着き相談。このロードスターを選んだのは、色が気に入ったからです」

パフォーマンスは今でも凄まじい

「テスラの起源といえるクルマ。パフォーマンスは今でも凄まじいですよ。一般的に速いといわれるモデルも所有してきましたが、これは違います。一切遅れがない。アクセルペダルを倒したら、あっという間に5台追い越せる、そんな加速です」

「信じられないほど速く走りますが、スポーツカーとしては良くないとも思います。おもちゃ的とでもいうべきか」。航続距離的が理由なのか訪ねたが、そうではないという。

「バッテリーの寿命は約10年といわれてきましたが、管理が悪くなければ、寿命の6%から12%ほどしか消耗していないことがほとんどです」。と、ルイスが説明する。

ファーガソンのクルマも航続距離は落ちていないようだ。「フル充電で走れる距離は350kmくらい。充電プラグが旧式で、最新のテスラの急速充電器、スーパーチャージャーには非対応。長距離旅行を楽しむかどうかは、これから考えます」

「長い旅行をするには、事前に充電計画を立てなければなりませんから」。それでもクルマへの愛着は深まっていると、ファーガソンは話す。一緒に暮らすのも、難しくはないらしい。

「オーナー間のつながりが素晴らしい。問題が出てきても、情報を共有して助けてくれます。注意を払っていれば、バッテリーも駄目にはなりません。気を掛けるのが手間なら、選ぶべきクルマではないでしょうね」

ファーガソンが続ける。「ロードスターから離れていても監視できるように、スマホのアプリをダウンロードしました」。クラシックカーの管理にアプリ。違和感があるが、時代が進んだ証拠だろう。

ベースのエリーゼを巧みに隠す車内

などと考えながら、テスラ・ロードスターに乗り込む。意外なほど心地よくアナログだ。インテリアは、ロータス・エリーゼをルーツとすることを、巧みに隠している。

押出成形のアルミシャシーは、上質なレザーやカーペットで覆われている。造形はシンプルで車内は広々。居心地が良い。シートはワイドで、ヒーターも内蔵される。エアコンを用いるより、少ないエネルギーで温まることができるためだ。

カップホルダーにグローブボックス、パワーウインドウも付いている。エリーゼより大きな荷室もある。数100kgの重さを持つ駆動用バッテリーを搭載するクルマにとって、100g程度の重さを削ることは大きな意味を持たない。

中央のモニターで、バッテリーの状態を確認できる。タコメーターのあった場所は、パワーゲージに置き換わっている。フルスロットルでマイナス200kW、ブレーキング時にプラス40kWまで、針が動く。

パワーをオンにし、センターコンソールの「D」を押す。モモ社製のステアリングホイールを握り、一気にアクセルペダルを踏み込んだ。速いと事前に知っていても、ロードスターは感動的に速い。

加速中に聞こえてくるのは、風切り音とモーターからの口笛のような音色。ドライバーの呼吸すら聞こえる。その静かさのまま、静止状態から97km/hまで3.7秒で加速する。11.1秒後には160km/hに届く。

加速が一休みする、シフトアップもない。初期のクルマには2速ギアが載っていたが、すぐに1速のボルグワーナー社製ユニットに置き換わった。

コーナーに差し掛かれば馴染みのある感覚

「V8エンジンのようなビートは放ちません。でもアクセルペダルを踏むと、後ろから刺激的なノイズが聞こえます。大パワーが放たれている、という感覚を与えてくれます。単に静かな体験ではありません」。とファーガソン。

強烈な加速にエリーゼとの小さくない違いを体感するものの、コーナーに差し掛かれば、馴染みのある感覚が戻ってくる。手のひらで握っているのは、感覚の豊かな、小さなステアリングホイールだ。

195/50という16インチの細いフロントタイヤから、情報が届けられる。脳みそと直結するかのように、機敏に回頭する。子犬のような振る舞いで、ロータスのように打ち解けた相棒になれる。

テスラは、ロードスターをエリーゼから遠ざけようと努力したかもしれない。だが、実際に運転して感じることは、ベース・モデルから受け継がれたDNA。単にスリリングな加速を楽しむ以上に、そのスピードを一般道で展開できる。

エリーゼと同じではない。ドライバーの後ろには11枚のシートに分かれた、450kgのリチウムイオン・バッテリーがある。その結果、ロードスターは現代のエリーゼ比で40%も重い。

ブレーキング時は特に車重を実感する。ロードスターでは4ポッド・キャリパーへのアップグレードが人気の理由も、よくわかる。ペースを速めるほど、コーナーでは荷重移動を感じ取ることもできる。

乗り心地は上質。振動音は小さく、揺れは穏やか。路面の隆起部分なども、しなやかに受け止める。主導調整式のサスペンションが、最もハードな状態に設定されていても。

クラシックカーとして次の世代

15年前にテスラが未来を指し示したロードスターは、今となっては過去のモノとなってしまった。ほぼ同時期に誕生したアップルの初代アイフォーンと同様に、搭載技術はすっかり古びている。

しかし、現在に所有する意味は大きい。テスラ・ロードスターの登場は、時代が変化した瞬間だった。純EV時代の幕開けを告げた1台であり、今に希望を与えてくれる存在でもあると思う。

電気モーターが、心から離れないような内燃エンジンに置き換わることはなさそうだ。だが、クラシックカーとして次の世代が存在するということも、ライトニング・グリーンの1台は証明してくれている。

テスラ・ロードスター(2008~2012年/英国仕様)のスペック

英国価格:10万2895ポンド(新車時)/8万5000ポンド(1317万円)以下(現在)
生産台数:2450台
全長:3946mm
全幅:1851mm
全高:1126mm
最高速度:209km/h
0-97km/h加速:3.7秒
航続距離:392km
CO2排出量:−
車両重量:1255kg
パワートレイン:三相AC誘導モーター
バッテリー:リチウムイオン
最高出力:292ps/5-8000rpm
最大トルク:40.7kg-m/0-6000rpm
ギアボックス:シングルスピード

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