英国でも数少ない大排気量の自然吸気V8
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)モデルライフ中期を迎えるレクサス製2ドアクーペ。RCの中でもトップグレードとなるRC Fだが、英国のアスファルトでの試乗は初めてとなる。いまのところ、欧州のミドルサイズのプレミアム・クーペという市場で存在感を示すのはなかなか難しいのが現状。ドイツ御三家、アウディ、BMW、メルセデス・ベンツに独占されているような状態なのだから。
圧倒的な強い支持のおかげで、アルファ・ロメオやボルボなどからは独自性の高いモデルが誕生するキッカケにもなったことも事実ではある。だが、トヨタのラグジュアリー・ブランドは、そこに食らいつくべく、諦めてはいないようだ。
欧州での販売台数は少なく、2018年に欧州全域で販売されたRCは1300台程度ということもあり、どこかまだ新鮮味も感じられる。ちなみにアウディは2018年3月だけの1カ月間で、A5とS5、RS5とを合わせれば6000台近くを販売している。
人気は限定的とはいえ、RCにも魅力がないわけではない。電動化技術の導入が進む中で、このクラスで選択できる唯一のハイブリッド搭載モデルが選べる。またRC Fの場合、英国で販売されているクルマの中でも数少ない、自然吸気のV型8気筒エンジンを搭載したモデルとなる。
今回の試乗車は9750ポンド(126万円)もするトラックパックを装備。軽量な鍛造ホイールにトルクベクタリング機能を持つリアデフ、カーボンセラミック・ブレーキにブレンボ製の赤いキャリパーが装備されている。ちなみにこれはトラックエディションとは異なる。そちらの方は、一層高価で走りにシリアスなクルマだ。
大きな進歩を獲得したインテリア
印象としては、オールドスクールでありながらハイテクも満載で、欠点もなくはないが、充分に好感の持てる仕上がりだった。フロントバンパーのデザインが変更されLEDヘッドライトが装備されているが、RC Fのアピアランスには大きな変化はない。縦に2本並ぶテールパイプや格納式のリアスポイラーも、変わらず付いてくる。通常のRCも記憶に残るスタイリングだが、スポーツ度が増す「F化」によるこれみよがしな加飾は、ドイツのライバルモデルよりは控えめだとはいえるだろう。
一方でインテリアの変化はかなり大きい。品質面での細かなカイゼンが積み上げられ、素材の質感も上質になり、キャビンはソリッドな雰囲気でまとめられている。非常に使い勝手の悪かったインフォテインメント・システムもアップデードされた。画面は大きくなり、光沢感のあるモニターでのメニュー操作も簡便になった。
なんといっても、われわれの興味をそそるのは自然吸気のV型8気筒エンジン。だが実はパワー自体は、先代よりも低くなっている。理由は、より現実環境に近く厳しいWLTP(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)に合致させ、環境負荷を減らしたため。最高出力で13ps、最大トルクで1.0kg-mほど弱くなっている。だが実際走らせてみると、明確に実感できるほどでもなかった。
一方でエンジンの特性変化に合わせてファイナルレシオを調整し、新しいローンチコントロール・システムも導入。軽量化も施されており、0-96km/h加速に要する時間は、先代よりも短縮されているからご安心を。この新しいローンチコントロールは、多くのライバルモデルよりも遥かに低い、2000rpm以下の回転数で発車するようになっている。レクサスによれば、最もリアタイヤのトラクションを稼げる回転数だということなのだが、本当なのだろうか。
マイナス点は8速ATの設定と軽くない車重
RC Fのエンジンは、変速せずに回している限り、ターボチャージャーを搭載したライバルより好印象。発するサウンドや個性、レスポンスなどで、アドバンテージは明確だ。4000rpm以下では驚くほどエネルギーを感じられないことは事実ながら、回転数を高めていくと、10年ほど前にBMWのMモデルやアウディRSが搭載していたような、硬質で張り詰めた、心躍る金属音が響き始める。新しく採用されたエアインテークが、さらに大きな吸気音を発するようにもなった。
その喜びの足かせとなっているのが、8速AT。低速トルクが不足していることをトランスミッションがカバーできていない様子で、数段飛ばしで手動で変速するような場面でも、何の警告もなく別の段数が選ばれてしまうことがある。最もスポーティなドライビングモードを選んでいても、イライラするほどシフトダウンを躊躇する傾向も見られる。
トラックパックに関しては、お好みで、という程度。サーキットを走る目的のクルマではない。レクサスのエンジニアは新しいアルミニウム製のシャシーやサスペンションに設定変更を施し、軽量化にも努めてはいるが、BMW M4などと比較すると、以前として車重は200kgほど重いのだ。
熱心に運転した場合のボディコントロール性やグリップレベル、ステテアリングの正確性は、80%くらいまでの領域で走らせている限り、充分な水準を保持している。それ以上にプッシュしていくと、俊敏性や洗練性、懐の深さといったところで、クラスベストほどのものは得られない。サーキットで走らせれば、軽くないボディの存在を思い知るだけだろう。
トラクションは良好で、トルクベクタリング機能の介入はほとんど知覚できなかった。またカーボンセラミック・ブレーキの仕上がりは高く評価したい。標準装備のブレーキとはまったく異なり、ペダルを踏み込んだ感覚もシッカリ感があるし、制動力も力強い。
LCとRCとの微妙な住みわけ
ほかにも、素晴らしく快適なフロントシートながら、取り付け位置が高すぎ、身重の高いドライバーは実際以上に窮屈に感じてしまう。後席のヘッドルームにも余裕はない。インフォテインメントシステムなどはアップグレードされてはいるが、依然としてドイツ勢に分があることも否めない。
RC Fは進歩の激しい自動車産業の中にあって、どこかクラシックなマッスルカーのような雰囲気から脱することができていないようだ。オールドスクールを狙った良さと、ただの時代遅れとの、微妙なボーダーライン上にあるように感じてしまう。しかも価格は、シンプルなマスタングとの対比も難しいほどに高価。
日常的にクルマを利用するという範疇なら、とても快適にRC Fと付き合えると思う。乗り心地は驚くほどしなやかで洗練されているし、トランスミッションも穏やかに走らせている限りは、遥かに滑らかに変速をこなしてくれる。インテリアも、美しい造形に高級な素材とが組み合わされ、典型的な心地よい空間にまとめられている。
だが、より訴求力の高いレクサスLCという存在がある中で、RCを完成度の高いスポーツカーではなく、魅力的なグランドツアラーとするのなら、その仕上げ方はもう少し煮詰める必要があるのではないだろうか。LC500なら同じV型8気筒エンジンを搭載し、実は価格差もそれほど大きくはない。トラックパックではなく、カーボンファイバー製のパーツが多用されるトラックエディションの方には、ドライバーへのより高い訴求力を期待したいところだ。
レクサスRC F トラックパックのスペック
価格:7万2650ポンド(944万円)
全長:4710mm
全幅:1845mm
全高:1390mm
最高速度:270km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.3秒
燃費:8.4km/L
CO2排出量:258g/km
乾燥重量:1810kg
パワートレイン:V型8気筒4969cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:463ps/7100rpm
最大トルク:52.8kg-m/4800rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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