72kWhのバッテリーで航続距離439km
中国のSAICモーター社傘下にあるMGは、純EVに絞った戦略を進めている。既に英国の公道を走っているMGのうち、3分の1は純EVが占めているという。
<span>【画像】純EVへシフトする英国MG 欧州で競合するクロスオーバー純EVと比較 全115枚</span>
この変化の中心となっているのが、手頃な価格設定のクロスオーバー、ZS EV。この度マイナーチェンジを受け、デザインのリフレッシュとともに、新しいインフォテインメント・システムを獲得した。
見た目でわかりやすい違いが、フロントグリル。内燃エンジン風だったものが、バンパーと一体のテクスチャー処理されたカバー状のものへ置き換わっている。その中央で光るMGのエンブレムの横に、充電ポートがある。リアバンパーも新しくなった。
MG ZSには、3段階のグレードが用意されている。エントリーグレードがSEで、トロフィー、トロフィー・コネクトと上昇していく。
試乗車は、最上位のトロフィー・コネクト。LEDヘッドライトにパノラミック・サンルーフ、スマートフォンのワイヤレス充電機能などが標準で備わる。パーキングセンサーに俯瞰での360度カメラ映像機能なども搭載される。
試乗したロングレンジが積む駆動用バッテリーの容量は、72kWh。フル充電での航続距離は、最長439kmがうたわれる。スタンダードレンジは49kWhで、239kmとなる。
50kWの急速充電器を用いれば、最短1時間で充電が行える。英国で一般的なタイプなら、10.5時間ほどが必要だという。駆動用バッテリーの電力を外部デバイスに提供する機能が与えられ、停電時には重宝しそうだ。
クロスオーバーとして充分な動力性能
MG ZSは手頃な価格が特色となっていたが、ロングレンジ・バッテリーと最新のインフォテインメント・システムが組み合わされた試乗車の場合、英国政府の補助金を差し引いても3万1495ポンド(約485万円)へ急上昇する。オプションレスで。
上昇した英国価格のおかげで、MG ZSは、キアeニロなど、純EVの実力派モデルたちと競合することになった。航続距離という点では伍する数字を備えるが、インフォテインメント用のタッチモニターの反応は今ひとつだった。
少なくとも直感的に操作でき、無線通信でのソフトウエア・アップデートには対応している。アップル・カープレイとアンドロイド・オートへの対応も準備中ということで、今後のインストールに期待したいところだ。
駆動用モーターの最高出力は155ps。走行時にモーターが発するノイズが大きいものの、0-100km/h加速8.2秒と、ファミリー・クロスオーバーとしては充分な動力性能を持っている。
市街地でのMG ZSの走りはとてもスムーズ。回生ブレーキの強さは、ワンペダルドライブに近いものまで、幅広い設定が可能。高速道路での追い越しも簡単にこなせるから、自動車で長距離通勤をしているユーザーもパワートレインに不満は感じないだろう。
乗り心地や操舵感は今ひとつ
乗り心地は、舗装の荒れた路面を処理しきれない場面がある様子。ステアリングホイールの反応は鈍く、手のひらへの感触も殆ど伝わってこない。正確性が高い、とはいえないと感じた。
走行時のロードノイズや風切り音は、高速域になるほど顕著に耳へ届く。アダプティブ・クルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキ、レーンキープアシストなど、運転支援システムの装備はうれしいが、過剰な警告音などは耳障りだ。
強気の価格設定といえる、MG ZSのトップグレード。純EVで重要な航続距離は、価格には見合った数字といえる。インテリアの知覚品質は及ばないかもしれないが、搭載する標準装備も不足ないほど充実している。
英国では、残価設定型プランの内容も魅力的といえる。プラン次第では、ライバルモデルより英国では安価に所有できると、MGは説明している。
だがMG ZSとして、注目するべきは49kWhバッテリーを搭載したスタンダード・レンジの方。こちらのマイナーチェンジ版は2022年の登場ということだから、改めて評価してみたい。
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