積算2505km 心安らぐオーラに包まれる長距離通勤
text:Damien Smith(ダミアン・スミス)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
比較的長くデータを記録するトリップコンピューターで良し悪しなのが、通勤にどれだけ長時間を費やしているのかがわかること。3週間で通勤に使った時間は48時間以上。平均の移動スピードは45km/hだ。
といっても、それほど不満なわけではない。毎日のA6での通勤は楽しみの1つ。洗練性が生む、心安らぐオーラに包まれる心地よさ。毎日の仕事はそんなに穏やかなものではないのだから。
積算8389km 警告灯と警告音に気付かない
ロータスを創設したコーリン・チャップマンはかつてこういった。「心配しなくて大丈夫。うまくいきます」 不必要に心配することを好んでいなかったようだ。
以前ロータスに関わっていたスタッフによれば、多くの場合、実際に大丈夫だったらしい。しかし時には、残念ながら駄目な時もある。今のわたしにも、それがよく理解できる。
ある寒い金曜日の朝、ロンドンへと向う高速道路のガードレールの外で救援を待っている間、チャップマンの楽観主義について考えていた。ラッシュアワーで絶え間なく通り過ぎるクルマの走行音を聞きながら。
アウディA6は50mほど手前の路肩に停まっている。「右リアタイヤの空気圧が低い」 という警告を表示し、アラームを鳴らして。大丈夫だと思ったのだけれど。
「こんなに酷くなるまで気付かなかったのですか?」 30分ほど待って来た、ロードサービスのマークは陽気に話す。「もしアラームが鳴った時に停まっていれば、タイヤは大丈夫だったかもしれませんよ」
クルマとドライバーとのリレーションシップ
鋭くえぐられたピレリPゼロは、鋭利な金属か何かを踏んだことを物語っていた。でも、タイヤのサウドウォールを破断させたのは自分の過ち。タイヤがパンクした状態で、楽観的な気持ちで走っていたからに他ならない。その日はちょっと仕事も忙しかった。
アウディは複数回、ちゃんと事前に警告を発していた。最初に警報音が鳴ったあと、もう一度警報音が鳴ってエアサスペンションの深刻な不具合を示す赤いメッセージが表示された。最終的にはホイールボルトが緩んでいるという警告も出た。
実際は違う原因だったのだが、自分の判断は間違っていたというわけ。良い教訓になった。クルマが警報を出したら、その内容に耳を傾けるべきだと。
こんな判断につながった理由は、日常的に鳴っていたアラームが影響していると思う。毎日の渋滞走行で、必要がないのに緊急ブレーキのセンサーが働き、警告表示やアラームに慣れていたところがある。
このような過剰に思える動作はアウディA6に限ったことではないが、クルマの訴えをわたしが信頼するという関係を阻害していたといえる。でも今回のパンクによって、考えが変わったことは確かだ。
災い転じてだが、それ以降、家族と一緒の長距離旅行などを通じてクルマとのリレーションシップは強くなった。10代の子供は中学卒業の試験対策に忙しく、3歳の双子と妻とでコッツウォルズでの週末を楽しんだ。
家族4人での小旅行
アウディA6を毎日の通勤とは別の環境で確かめる良い機会。まだ小柄な息子と娘だから、リアシートにチャイルドシートを付けても、足元の空間には余裕がある。
西に向かうための、沢山の荷物はどうだろう。もちろん問題ない。530Lの容量のある荷室は、旅行かばんのほか、2台のジュニアバイクも簡単に飲み込んだ。
家族での小旅行などは、エグゼクティブ・サルーンが本来意図していた使い方ではないかもしれない。そうだとしても快適だった。とても滑らかなエアサスペンションと相まって車内は平穏。アナと雪の女王のサウンドトラックを心地よく楽しめる。
今回試乗車としてきたA6には、豪華なオプションが盛り込まれている。確かに不必要なものも含まれていると思う。けれど4輪操舵システムはその価値がわかってきた。
車線内でのクルマの維持のしやすさや、高いグリップ力は運転時の安心感につながる。上質なインテリアから受ける満足感以上の、優れた充足感を得られる。熟成されたA6との、さらに良好な関係性の構築にも結びつくような気がする。もう少しA6に身を委ねてみよう。
テストデータ
テスト車について
アウディ A6 50 TDI クワトロ
新車価格:5万500ポンド(707万円)
テスト車の価格:7万800ポンド(991万円)
テストの記録
燃費:14.3km/L
故障:なし
出費:パンク 330ポンド(4万6000円)
気に入っているトコロ
経済性:マイルドハイブリッドに支えられた優れた燃費のおかげで、長距離通勤にも関わらず、給油は週に1回だけで済む。
気に入らないトコロ
エンジンのレスポンス:スロットルレスポンスは発進直後は鈍いものの、その後一気に大量のパワーが湧出する。まだ馴染むことができない。
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