昨季までのインフィールドではなく、約4年ぶりに“聖地”の2.5マイルオーバル決戦となった2024年NASCARカップシリーズ第22戦『ブリックヤード400・プレゼンテッド・バイ・PPG』の30周年記念大会は、決勝167周のうち8周のみをリードし、ダブル・オーバータイムの勝負を制したカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が劇的な勝利を収めることに。
ラーソンにとっては、ダーリントンでの『サザン500』やシャーロットでの『コカ・コーラ600』と並び、カップシリーズで“クラウン・ジュエル”と称されるビッグイベント通算3勝目を飾ると同時に、約2カ月前のインディカー初挑戦で18位に終わっていた、伝統の『インディアナポリス500』での忘れ物を獲り戻す、宿願の2.5マイルオーバル初優勝となった。
ポコノ最多勝を誇るハムリンを退け、自身初優勝の地で王者ブレイニーが今季2勝目/NASCAR第21戦
今季限りでの活動停止発表に揺れるスチュワート・ハース・レーシング(SHR)を震源に、過去数戦のレースウイークと同様に来季ストーブリーグの話題で始まった有名なスピードウェイの週末は、現在26歳のコール・カスターが2025年のカップシリーズに復帰し、新たにハース・ファクトリー・チームとして4台体制からシングルカーでの再出発を切る新組織で、レギュラードライバーに就任することが発表された。
「僕はハース・オートメーションやHaasTooling.com.とともに成長してきた。レーシングスーツに彼らの名前が付けられていることは、僕にとって大きな誇りなんだ」と来季はRFK(ラウシュ・フェンウェイ・ケセロウスキー)レーシングと提携し、フォード・パフォーマンスからの追加的な技術支援を得て41号車フォード・マスタング・ダークホースをドライブするカスター。
「来年は実質的に新しいレースチームになる。そこでレースに出て勝てる組織に育てるには、僕ら全員の力が必要だ。キャリアにおいてそうした機会を望んでいるし、この挑戦の準備ができているよ」
迎えた4年ぶりのオーバル走り出しでは、やはりトヨタ陣営が過去数週と同様に先手を取る展開となり、FPでも最速発進を決めたタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が、自身のクルマの"オーナー"でもあるデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)を従えポールポジションを獲得した。
その決勝はピットストップ戦略の多様さで13名のドライバーが入り乱れ、総計17回のリードチェンジが発生する混戦となり、まずは21周を率いたハムリンがステージ1を制覇(今季通算6度目のステージウイン)。続くステージ2も17番手発進だったダレル"バッバ"ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が勝利し、ランキング当落線上のプレーオフ進出権争いで貴重なポイントを積み重ねる。
両ステージともに、ラーソンやその僚友チェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)、さらにディフェンディングチャンピオンのライアン・ブレイニー(Team Penske/フォード・マスタング)やジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)ら、GMシボレーとフォード陣営のエース格がカムリXSEの背後で上位に絡み続ける展開に。
するとファイナルステージのオープニングでは、ラーソンとのサイド・バイ・サイドでダメージを負ったマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)がウォールの餌食となり、車両調整の不備で最後方スタートから挽回を見せていた努力が水泡と帰す。
■ジェフ・ゴードンの勝利から30年
この瞬間に後方でクラッシュしていたジョシュ・ベリー(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)に続き、リスタートではジミー・ジョンソン(レガシー・モーター・クラブ/トヨタ・カムリXSE)と絡んだロガーノもまた戦列を去り、さらに125周目にはトゥルーエクスJr.が単独スピンを喫してふたたびコーションの起因となるなど、最後の勝負を前に混沌とした空気が立ち込める。
すると終盤6番手にいたカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が、ハムリンのボトムを狙った際に姿勢を乱し、ここでレースはオーバータイム決着へ突入。ブッシュにとってはレギュラーシーズン大詰めで、ふたたびの試練に見舞われる。
残り2周のリスタートで首位はブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)、その隣に王者ブレイニーの勝負で最後のスプリントへ向かった隊列は、ここでケセロウスキーがまさかのガス欠でゆるゆるとピットレーンへ姿を消すと、その背後にいたラーソンがクリーンエアでグリーンフラッグを迎える。
ターン1突入でボトムラインを抑えて首位浮上に成功したラーソンだったが、その背後ではマルチクラッシュが発生し、ここでハムリンも11号車を大破させ32位でレースを終えてしまう。
仕切り直しとなった2度目のオーバータイムでは、ふたたびアウトサイドに追いやられたブレイニーがターン2でレディックにも先行を許し、そのままホワイトフラッグへ。しかしその直前、ライアン・プリース(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)がバックストレッチでスピンを喫し、不動となったことでコーションが発動し、勝負はここで正式決着。ラーソンが“聖地”ブリックヤードで今季4勝目を飾ると同時に、NASCARでもっとも権威あるレースのひとつで初勝利を収めた。
「ここは本当に名誉ある場所、神聖な場所だ」と、ヘンドリックの重役を務めるジェフ・ゴードンがブリックヤード初開催のNASCAR戦を制した30年後に、同地で改めてシリーズをリードを奪還した2021年カップ王者のラーソン。
「ふたたびオーバルでレースをする機会を得られてとてもうれしい。僕らのチームは素晴らしい仕事をした。つまり決して諦めなかった、ということさ。ファンの皆とこの場所が大好きだ! インディカーでの初挑戦を経てすべてが運命どおりに1周し、今日は僕らにとって定められた結果だったということだね」
そんな伝統の2.5マイルオーバルで併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第20戦『ペンズオイル250』は、最終ラップの最終コーナーでリードを奪うドラマチックな展開を制したライリー・ハーベスト(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)が、前戦のコール・カスターに続き今季初勝利を抑めることに。
そして近隣のインディアナポリス・レースウェイパークで金曜の夜に開催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第15戦『Tスポーツ200』では、タイ・マジェスキー(ソースポーツ・レーシング/フォードF-150)が大会連覇で今季初優勝を飾っている。
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