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快適性が備わったことでエキシージやエリーゼにはなかった“覚悟のいらないロータス”になった!「ロータス エミーラ」【野口 優のスーパースポーツ一刀両断!】

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快適性が備わったことでエキシージやエリーゼにはなかった“覚悟のいらないロータス”になった!「ロータス エミーラ」【野口 優のスーパースポーツ一刀両断!】

最後の内燃エンジン型ロータスが手に入るのはもうわずか……

ライトウエイトスポーツの代名詞として名を馳せた「ロータス」も時代の流れとともに大変革期を迎えた。かつては“軽量こそ正義”とし、ドライバーの腕次第では峠ならワンクラス上どころか大排気量のスーパースポーツを追いかけ回すことも不可能ではないという、ある種、スポーツカーにとっての本質的な価値観に独自の魅力を見出していた。そんなテイストをもつロータスも、エリーゼ、エキシージをもって終了。生みの親であるコーリン・チャップマンの精神は、もはや新車で手に入らなくなってしまったことは個人的にも残念でならない。

本気で手に入れたいと思える1台に出会ってしまった!「マセラティ グレカーレ トロフェオ」【野口 優のスーパースポーツ一刀両断!】

【画像45枚】ロータスの放つ最後の内燃機関モデル「エミーラ」のフォトギャラリーはコチラ




今ロータスの親会社は、ボルボを傘下に収める中国のジーリー。今回取り上げる「エミーラ」はその第一弾となるだけでなく、“最後の内燃エンジン車”としてデビューを果たした。このニュースを聞いた際、特に驚きはしかなったが、寂しさを覚えたのは確かだ。それゆえに、かつてエキシージ(V6)の長期レポートを担当していたこともあって(GENROQ編集長時代)、同じエンジンを積むこのエミーラの試乗を待ち望んでいた。

そんな想いをもって接したのが理由ではないが、結論から言わせてもらうと、エミーラのV6モデルは、“快適性が備わったロータス”と思える出来栄えで、エキシージやエリーゼにはなかった、“覚悟のいらないロータス”とも言いかえられる。極度な突き上げ感や振動、さらにエンジン音などが抑えられたうえに乗降性まで改善。日常でも使える、エキシージの正常進化版と例えてもいいと思う。

ミッドに搭載されるエンジンは、先にも触れたようにV6スーパーチャージャー。エキシージにも積まれていたトヨタの2GR-FEユニットで、最高出力は405psを発揮する。最大トルクは、MTで420Nm、ATはわずかに上回り430Nmとされ、今回の試乗車は後車のATを選択。というのも本来ならMTで乗りたいところだったが、筆者が担当していた長期レポート車両がエキシージのAT仕様だったから、その進化を体感するには、むしろこちらのほうが分かりやすいと判断したからだ。

シャシーは、刷新された新世代のアルミニウム製バスタブ・モノコック。エリーゼ&エキシージに比べれば、信じられないほどサイドシルが低く、乗るにも降りるにも面倒に思うことがなくなった。そんな改善策は乗り心地にも表れ、突き上げ感など皆無に等しく、電子制御ダンパーではないにもかかわらず、ごく自然なストローク感で魅了する。さすがは純正仕様のビルシュタインとアイバッハ製のスプリングという組み合わせだと唸らせるが、あまりに不快感がないゆえに、ロータスというイメージだけで乗ってしまうと、もしかしたら肩透かしを食らったように感じるかもしれない。とはいえ、これはこれで歓迎すべきで、筆者のような昭和世代にとっては、今の時代にちょうど良いと思うくらい。ライントレース性も申し分なく、スタビリティも高いし、全体の動き自体も優秀だと思う。

それに加え、6速ATがだいぶ改善されていることには驚いた。エキシージは、スポーツモードやトラックモード時でシフトアップをしていくと、変速の度にかなり強いショックを身体に受けたが、エミーラではほぼ完全に払拭。思う存分、パドルシフトを用いて攻められるようになったのは朗報だろう。




コクピット周りにしても最新の他社と比べればシンプルに映るが、中央には10.25インチのタッチスクリーンディスプレイを備えてApple CarPlayやAndroid Autoに対応するほか、ステアリングには各種操作が可能なマルチファンクションを装備するうえ、シートは完全に電動化されてヒーターまで与えられた。一人前といっては失礼だが、ロータスもだいぶ立派になったものだと痛感させられるが、ロータスらしさは何気なく残っているから、エキシージやエリーゼを所有してきた、ハードなロータス・マニアにも受け入れてもらえそうだ。

ただ、気にならないところがないわけでもない。挙動やトラクション性能など、確かに上手く仕上がってはいるが、体感的にエキシージよりも重心が高いように感じられ、中心重心値も少々微妙に思えたのは事実。V6スーパーチャージャーユニット自体、横置きに配置されるから仕方がないとも言えるが、快適になったぶん、目立つようになったのかもしれない。それに加えてハンドリングの設定も、いまひとつツメが甘いような気がする。言葉を重ねて恐縮だが、良くはできているし、悪くはない。しかし、“ハンドリング・バイ・ロータス”という印象は希薄。これも油圧式パワーアシストを備えるようになったから比較するのは難しいが、エキシージやエリーゼを育てたマット・ベッカーに、このエミーラの感想を是非とも聞いてみたいと思った次第だ。

今のロータスが狙っているのは、すでに公言しているように主軸がEVスポーツというだけに、このエミーラのV6仕様は、ピュアなロータスを好むファンに向けた最後のプレゼントだと受け止めたほうがいいだろう。ただ、気になるのは、もうひとつのエミーラとしてラインナップされる、メルセデスAMG製のM139型2L4気筒エンジンを搭載するモデル。こちらのほうがむしろ本命の可能性大。しかも8速DCTを組み合わせるなど、その完成度は非常に期待できるし、重量バランスやハンドリングもこちらのほうをメインに開発した可能性も考えられる(とはいえ、本当の本命は、EVのエミーラではあるが……)。

いずれにしても最後の内燃エンジン型ロータスが手に入るのは、もうわずかだ。興味のある方は、是非ご自分でお試しいただきたい。

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