現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ルノー傘下の日産が国内市場を軽視し続けてきたというけれど……、日本向けラインナップは無駄が多かった

ここから本文です

ルノー傘下の日産が国内市場を軽視し続けてきたというけれど……、日本向けラインナップは無駄が多かった

掲載 更新
ルノー傘下の日産が国内市場を軽視し続けてきたというけれど……、日本向けラインナップは無駄が多かった

ある種のカリスマ性を持っていた経営者、カルロス・ゴーン氏が、その重大な不正行為を理由に、日産自動車の会長職から解任された。事件については、すでに司法の手に渡った状態であり、限られた、それも精度の不明な情報をもとにあれこれ詮索するのは建設的とは思えないが、それでもゴーン氏の功績を再確認することには、意味があるだろう。ルノーの出資を受け入れ傘下に入ったことで日産が経営的に再生できたのは紛れもない事実だからだ。

ただし、その過程において「日本市場を軽視するようになっていった」という批判もある。たしかに、国内向けのラインナップは1980~1990年代と比較するとずいぶん整理されてしまったし、近年は新型車が投入されるペースも落ちている。ただし、かつてのように販売店ごとに差別化するためだけとも感じられる兄弟車を乱発していた時代が健全で、なおかつ日本市場を重視していたのかといえば疑問もある。「サニー」の兄弟車として「ローレルスピリット」を出してみたり、「パルサー」の姉妹車として「リベルタビラ」を用意したりしていたのは、あくまで複数の販売チャネルに対応するためという内向きの理由であって、ユーザーファーストの姿勢から兄弟車・姉妹車が多数生まれていたという印象は薄い。もちろん、S13系における「シルビア」と「180SX」のようなまったくイメージのことなる兄弟車は自動車文化的には価値があったし、また2.0Lの6気筒ターボを積んだ「ローレル」や「スカイライン」、そして「セフィーロ」が同時に販売されていたことも選択肢を広げてくれたが、開発リソースが分散していたのも事実だろう。もっとも「シルビア」などはモデル自体が消滅してしまったのではあるが……。

そもそも世界的には自動車市場が右肩上がりに拡大していく中で、日本の自動車市場は2000年代以降ゆるやかに下がり続けている。ピーク時には780万台(1990年)に達していた新車販売台数は、いまや500万台規模となった。その間に、いすゞが乗用車から撤退するなどしているが、国内市場だけ見ればメーカーの一つや二つは消滅していてもおかしくない。そこをカバーしたのが輸出と海外生産で、日産だけでなくトヨタやホンダもグローバル生産は増やしながら、国内生産比率は着々と下がっている。市場の成長を考えると、国内向けの商品展開が遅れてしまうのは当然の判断であって、外資系だからというわけではない。また、日本独自の規格である軽自動車については、スズキからのOEMによって参入したのをきっかけに、現在は三菱自動車との合弁企業によって独自モデルを開発するまでになった。日本市場に必要なモデルに注力して生み出しているともいえる。ほかにも「セレナ」のようなスライドドア・ミニバン、小型車枠に収まる商用1BOXである「NV350キャラバン」といったモデルは、実質的には日本専用であり、多数のユーザーが求めているカテゴリーについては国内向けモデルを開発することを止めたわけではない。もちろん「軽自動車とミニバンとハイブリッドのコンパクトカー(ノートe-POWERのことだ)を出しておけば国内市場を重視している」と言ってしまうのは乱暴だが、「フェアレディZ」の販売実績を見ると、このマーケットに向けて、もし「シルビア」を復活させたところで爆発的に売れるとは考えづらい。むしろ現実的な話でいうとSUVの選択肢を増やすことが国内ニーズにはマッチしていくことだろう。

あらためて、苦境に陥る以前の日産が誇っていた国内向けラインナップは、複数の販売チャネルに対応するためという意味合いが強く、そこには無駄が多かった。それを整理したことはけっして国内市場を軽視したわけではない。実際、トヨタも日本における販売チャネルと車種ラインナップの整理を明言して取り組み始めている。ゴーン体制下において日産が行なった販売ラインナップの絞り込みは、仮にルノー傘下に入らなくとも、遅かれ早かれ実施されていたはずだ。ただし、そのタイミングが遅くなるほど日産が復活できる確率も下がり、リバイバルまでの時間も要していたことだろう。

文:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト

こんな記事も読まれています

クルマのヘッドライト「何時に点灯」させればいい? 「オートライト義務化」されるも過信はNG! 「秋冬の早め点灯」大事な理由とは
クルマのヘッドライト「何時に点灯」させればいい? 「オートライト義務化」されるも過信はNG! 「秋冬の早め点灯」大事な理由とは
くるまのニュース
角田裕毅と好バトルの末8位フィニッシュのヒュルケンベルグ「ピットストップのタイミングを少しずらしたのがうまく機能した」
角田裕毅と好バトルの末8位フィニッシュのヒュルケンベルグ「ピットストップのタイミングを少しずらしたのがうまく機能した」
motorsport.com 日本版
中古車バブル崩壊……その時あなたは何を買う!? 絶版国産[スポーツカー]ほしいランキング
中古車バブル崩壊……その時あなたは何を買う!? 絶版国産[スポーツカー]ほしいランキング
ベストカーWeb
BMW初代「M3」に24年! マフラーはE46 325i用をベースに自分で溶接して製作…トヨタ「スターレット」から乗り換えて何が違った?
BMW初代「M3」に24年! マフラーはE46 325i用をベースに自分で溶接して製作…トヨタ「スターレット」から乗り換えて何が違った?
Auto Messe Web
ドラマ連発!エバンス/マーティン組が日本戦でニ連覇、TOYOTAも大逆転でのシリーズ四連覇獲得に「トヨタ(豊田)」が湧いた!!【WRC最終戦ラリージャパン】
ドラマ連発!エバンス/マーティン組が日本戦でニ連覇、TOYOTAも大逆転でのシリーズ四連覇獲得に「トヨタ(豊田)」が湧いた!!【WRC最終戦ラリージャパン】
Webモーターマガジン
BMWが新型「3シリーズ セダン/ツーリング」を発売! PHEVモデルは航続距離がさらに向上。【新車ニュース】
BMWが新型「3シリーズ セダン/ツーリング」を発売! PHEVモデルは航続距離がさらに向上。【新車ニュース】
くるくら
エメ・レオン・ドレの特注「ポルシェ993ターボ」は、ニューヨークにオマージュを捧げた一台
エメ・レオン・ドレの特注「ポルシェ993ターボ」は、ニューヨークにオマージュを捧げた一台
LE VOLANT CARSMEET WEB
新生ポルシェ、スポーツカーとスキー製造のノウハウを備えた「ヘッド106シリーズ」
新生ポルシェ、スポーツカーとスキー製造のノウハウを備えた「ヘッド106シリーズ」
LE VOLANT CARSMEET WEB
防風 + 輻射熱で防寒効果アップ!「ウインドスクリーン2サイズ」が11/30に VASTLAND から発売
防風 + 輻射熱で防寒効果アップ!「ウインドスクリーン2サイズ」が11/30に VASTLAND から発売
バイクブロス
【ヤマハ】クリエイティブチーム12名が Netflix オリジナルアニメ「Tokyo Override」の制作に協力
【ヤマハ】クリエイティブチーム12名が Netflix オリジナルアニメ「Tokyo Override」の制作に協力
バイクブロス
日産「カクカク“ワゴン”」実車公開! 旧車デザイン×コンパクトボディが超カッコイイ!ウッド内装もオシャレすぎる“斬新キューブ”「SETO」大阪で展示!
日産「カクカク“ワゴン”」実車公開! 旧車デザイン×コンパクトボディが超カッコイイ!ウッド内装もオシャレすぎる“斬新キューブ”「SETO」大阪で展示!
くるまのニュース
[15秒でわかる]世界初のリアウイングライト…テールランプとリアウィングが一体化!
[15秒でわかる]世界初のリアウイングライト…テールランプとリアウィングが一体化!
レスポンス
レアすぎるよ…! 約940万円! ケータハムセブンの[中古価格]が驚愕すぎる件
レアすぎるよ…! 約940万円! ケータハムセブンの[中古価格]が驚愕すぎる件
ベストカーWeb
グループAのころにゃなかったぞ! おじさんファンにはちんぷんかんぷんなイマドキ「レース用語」10選
グループAのころにゃなかったぞ! おじさんファンにはちんぷんかんぷんなイマドキ「レース用語」10選
WEB CARTOP
苦しみ続けるマクラーレンのノリスが予選6番手「良いラップをまとめることが、あまりにも難しい」/F1第22戦
苦しみ続けるマクラーレンのノリスが予選6番手「良いラップをまとめることが、あまりにも難しい」/F1第22戦
AUTOSPORT web
先代「695」と乗り比べ アバルト500e 長期テスト(5) 魅力はそのまま 未来感が凄い!
先代「695」と乗り比べ アバルト500e 長期テスト(5) 魅力はそのまま 未来感が凄い!
AUTOCAR JAPAN
「なんで!? スマートキーが作動しない!?」焦るクルマのトラブル 便利だけど大きな弱点もある理由とは
「なんで!? スマートキーが作動しない!?」焦るクルマのトラブル 便利だけど大きな弱点もある理由とは
乗りものニュース
2列目シートも快適でフラットスペースも広いトヨタ ハイエースがベースのキャンパー
2列目シートも快適でフラットスペースも広いトヨタ ハイエースがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村