半分サイズのポルシェなのに、本物さながらの価値がある……?
自動車のオークションは、美術品などに比べて大型の会場を必要とするせいか、通常ならば開催国およびその近隣諸国から複数の売り主を募り、一定の台数が集まったのちに開催となる。しかし、もしもひとりの売り主で出品する商品が充分に集まるならば、単独で大規模なオークションが開催されることもある。今回はそんなオークションのひとつである、RMサザビーズ「The White Collection」オークションと、そこに出品された3台の「ハーフスケール・ポルシェ」をご紹介させていただこう。
ランボルギーニ「カウンタック」が破格の1125万円! 中身は399ccのエンジンを搭載した「キッズカー」でした
匿名コレクターのポルシェが集められた、ミステリアスなオークション
新車のセールス実績はもちろん、クラシックカー/コレクターズカーのマーケットでも世界的な好況を維持しているポルシェ。そんな気運のもと、RMサザビーズ北米本社は「The White Collection」オークションを昨2023年12月1日~2日に、アメリカ合衆国テキサス州ヒューストンにて開催した。
「The White Collection」とはポルシェを愛し、あらゆる面で完璧を求める、ある匿名のエンスージアストが10年以上もかけて収集したもの。原則として非公開で、その正体あるいは正確な本拠地も明かされていないそうだ。
ヒューストンにてオークション会場とされたのは、The White Collectionの所蔵される場所。コレクション名に相応しい真っ白な空間とされており、高い天井から反射する床まで細部に至るまで考え抜かれたインテリアに仕立てられている。また、明るく広々としたスペースには細心のキュレーションが行われており、そのスペースが所蔵するポルシェたちの魅力をさらに高めているかに見える。
今回のオークションに出品されたコレクションのうち、自動車は63台におよぶ。なかでもポルシェのスポーツカーは56台。その大部分が、白くペイントされた個体となる。くわえて2台のポルシェ製トラクターや、そのほかのブランドの珠玉のクルマたちも含まれていた。
そして、白いポルシェをはじめとするクルマたちに加え、ミントコンディションのまま保管されてきた、ポルシェ百科事典のようなメモラビリアの数々も出品。ロット数は合計500点以上にも及んだのだが、なかでも異彩を放っていたのが、ポルシェが自社で正規に販売したジュニアカーたちだったのだ。
全車ともに驚きのプライスで落札!
ところで、これまでAMWでもしばしば取り上げてきたように、子どもでも乗ることのできるサイズに縮小された「チルドレンズ・カー」ないしは「ジュニアカー」は、モデルとなるホンモノのクルマの再現度や作り込みの精巧さなど、子ども用のおもちゃの領域をはるかに凌駕し、大人の自動車愛好家を満足させうるコレクターズアイテムのレベルに達したものも少なくない。
2023年12月のRMサザビーズ「The White Collection」オークションに出品された3台のハーフスケール・ポルシェも、そのレベルに達したチルドレンズ・カーといえよう。
まずは「911カブリオレ」を模した2台は、同型モデルの色違い。1980年代の初頭に、ポルシェ自ら「Gシリーズ」時代のカレラ カブリオレを模して製作し、224台を発売した「911ジュニア」である。
1シーターだけでなく、2シーターも用意されていたこの小さな911には、排気量98cc/最高出力2.5ps単気筒のホンダ汎用エンジン「G100」型を搭載し、ペダル操作も可能な湿式多板式遠心クラッチを備えたマニュアル2速ギアボックス(後進1速)と組み合わせによって、最高速度は約30km/hに達したとされる。また、ディスクブレーキや点灯する灯火器類、本物の電磁ホーンなども装備されている。
こうして12月初頭に行われた競売では、2台の911ジュニアが同時出品されたうち、赤い個体は2万ドル~3万ドルというエスティメート(推定落札価格)に対し、3万3000ドル(邦貨換算約480万円)で落札。
いっぽう、白いほうの個体はもともと赤いほうよりお安めの1万5000ドル~ 2万5000ドルのエスティメートが設定されていたものの、白いポルシェが大集結した「The White Collection」の雰囲気につられたのだろうか、3万6000ドル(約520万円)で落札されることになった。
そしてもう1台、白いレーシングカーは1981年のル・マン24時間レースにて、グループ6プロトタイプ時代の最後となる勝利を獲得したポルシェ「936」を、こちらも当時のポルシェの公式プロジェクトとして縮小した「936ジュニア」。1980 年代半ばに、わずか100台が製作・販売されたといわれるものである。
近年でも有名なコレクターズアイテムとして、ポルシェのオフィシャルイベントなどに展示されることもある936ジュニアは、当初フェリー・ポルシェ博士をはじめとするポルシェ界のVIPたちに贈呈されたという。
パワーユニットは、排気量200cc、最高出力は5psの「ブリッグス&ストラットン」社製4ストローク単気筒エンジン。前進2速、後進1速のマニュアルトランスミッションを介して後輪を駆動し、最高速度は時速 35マイル(約56km/h)をマークしたという。
くわえて、ディスクブレーキや調整可能なリアウイング、油圧ダンパー付きのサスペンション、ラック&ピニオン式ステアリング、リミテッド・スリップ・デフ、ホーン、およびライト類も完全に機能するとのことである。
この小さなル・マン優勝車にも、1万5000ドル~2万5000ドルというエスティメートが設定されていたのだが、実際の競売ではビッド(入札)が殺到。終わってみれば4万8000ドル、日本円換算で約700万円という高値でハンマーが落とされたのである。
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