2024年シーズンのF1は、前年王者であるレッドブルの優位性が崩れ、最終戦までコンストラクターズ選手権のタイトル争いが繰り広げられる1年となった。シーズン中は7人の勝者が生まれ、上位勢にはどのチームにも優勝のチャンスがあった一方、中団チームは数少ない入賞のチャンスを確実にものにしなければならず最終戦まで熾烈な争いが続いた。
そんな2024年シーズンに開発されたF1マシンを振り返るこの企画では、今回はコンストラクターズ選手権3位のオラクル・レッドブル・レーシングの『RB20』を取り上げる。
自社パワーユニット開発は「大きな挑戦」とレッドブル代表。ライバルと戦えるようになるまで時間が必要だと認める
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■RB20/オラクル・レッドブル・レーシング
2023年に22戦21勝とシーズンを席巻したレッドブルが2024年にどんなマシンを開発してくるか注目されるなか、登場した2024年の新車RB20。大方の予想を覆し、空力的によりアグレッシブなデザインとなっていた。
インダクションポッドの両脇にヘイローの付け根から後方へとパイプ状のトンネル(キャノンデッキ)を設け、その内側にギヤボックス用の冷却インテークをレイアウト。キャノンデッキはサイドポンツーンを流れる綺麗な風とコクピット後方で発生する乱流を分離する狙いがあったと考えられる。
サイドポンツーンのインテークもアグレッシブなデザインとなった。ホンダ・レーシング(HRC)に協力をあおいで、エンジンの使用温度領域を可能な限り上げてもらい、サイドポンツーンのインテークの面積を前方からでも見えないほど狭くした。これにより、サイドポンツーンの下を流れる空気のボリュームを増やして、空気抵抗を削減するとともに、ダウンフォースを増加させる狙いがあったと考えられる。
開幕3戦で2勝したレッドブルの空力は、4戦目以降、さらにアグレッシブになっていく。第4戦日本GPではサイドポンツーンの下部をより大きく絞り込み、サイドポンツーンの下にまるでトンネルのような空間を確保。またフロア表面にもオーストラリアGPまでの仕様には見えなかったくぼみ(写真赤矢印/写真はエミリア・ロマーニャGPで撮影したもの)が見えていることから、アンダーパネルのデザインにも変更が加えられたと考えられる。
しかし、この過激とも思えるデザインによって、その後レッドブルの空力の開発が大混乱となる。風洞実験で出ているデータどおりのパフォーマンスがコース上で発揮されていないことが判明。マイアミGP以降のレースで苦戦を強いられる。そこでレッドブルは2024年の序盤に採用していたキャノンデッキ・デザインを断念。夏休み明けのオランダGPからオーソドックスなカウルに変更してきた。
このころのレッドブルはマシンバランスの不安定さに悩まされていた。低速コーナーではアンダーステアなのに高速コーナーではオーバーステアになっていた。これはフロントウイングで発生させるダウンフォースに問題があったと考えられ、第13戦ハンガリーGPでは新しいフロントウイングを持ち込み、従来型(メカニックが持っている手前のほう)と比較テストを行っていた。
オランダGPからは、先端がより鋭角となったノーズとデザインが一新されたフロントウイングを投入してきた。
それでもバランスの問題は解決されず、第16戦イタリアGPでは4番目のチームに転落。チャンピオンシップ争いで黄色信号が点滅したチームは第19戦アメリカGPに新しいフロアとサイドポンツーンを投入してきた。サイドポンツーンはそれまでの側面がスクエアなデザイン(写真上赤矢)から丸みを帯びた形状に変更されていた。
キャノンデッキ・コンセプトなどアグレッシブなデザインを次々に取りやめたオランダGP以降のレッドブル。これらのアップデートによって、マシンバランスは最悪の状態を脱し、アメリカGPではスプリントでマックス・フェルスタッペンが優勝した。
ただし、終盤戦で調子がよかったアメリカGP(スプリント優勝)とカタールGP(優勝)は、コース特性がレッドブルのもともと得意とする高速コーナーが多いコースだった。マキシマムダウンフォースを必要とするメキシコシティGPや低速コーナーがセクター3にあるアブダビGPでは、ダウンフォース量がトップチームと比べて足りていないことも露呈した。ドライバーズ選手権はフェルスタッペンの卓越したドライビングでなんとか4連覇したが、完全復活への道のりはまだ遠いように思われる。
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