「500mlのお水を何分で沸騰させられるか」8機種でタイムアタック!!
キャンプを始めると、誰もがはまってしまう「道具選びの沼」。
そんな中でも最初に陥りやすいのがバーナー沼。キャンプにおいての基本である湯沸かしや調理に使う絶対必需アイテムだからだ。
【画像24枚】燃料5種、価格は330円~1万7050円まで全8機種を実際にテスト!!
今の時流としてはガスバーナー がメインになりつつあるが、使用するガスにもOD缶(アウトドア缶)とCB缶(カセットガスボンベ缶)の2種類が存在し、バーナーの形状もさまざま。 また、かつてはガソリンバーナーの愛好家も多かったし、今でもアルコールバーナーを愛用している人は多い。
もっとマニアックな物 になると灯油(ケロシン)、ベンジンを燃料として使うバーナーなどもある。そういった昔のバーナーの中には名機と呼ばれる逸品が存在し、 それらは道具としての機能はもちろんのこと、着火までの作業工程や稼動中の燃焼音までもが使う者を魅了した。
単にお湯を沸かすと いう行為が、名機と呼ばれるバーナーを使うとわくわくし、炎に癒やしをもらえ、暗闇では頼もしささえ覚えるのだ。 この記事ではそんな多様性にあふれるバーナーの中から、最新モデルから往年の名機、100円ショップで購入できるアイテムまでをピックアップして500mlの水が何分で沸くかテストした。
今回のテストは、500ml容量のペットボトルに入った水をクッカーに移して、それが何分で沸くかを計測するという単純なもの。
これはカップ麺1杯分(約350ml)+コーヒー1杯分(約150ml)に相当する量(本当 は600mlぐらい)と考えられるので、キャンプにおける基準としてはちょうど良い。テスト時の天気は曇りで外気温約26度。湿度は測っていないが、おそらく60%ほどと予測された。今回テストした機種は以下の8機種だ。
・SOTO レギュレーターストーブ ST-310
・SOTO レギュレーターストーブ FUSION ST-330
・SOTO マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター SOD-310
・PRIMUS エクスカイザーEX-ULT-1
・SOTO MUKAストーブ SOD-371
・OPTIMUS 8R
・EVERNEW チタンアルコールストーブ
・DAISO ちょこっとストーブ
湯沸かし最速は2分12秒、最下位は28分41秒
500mlの水(加熱前水温約30度)を沸騰させるまでに掛かった時間を計測したところ、最速は2分12秒の「PRIMUS エクスカイザーEX-ULT-1」だった。続いて「SOTO マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター SOD-310」「SOTO レギュレーターストーブ FUSION ST-330」など、定番のガスストーブで2分台の記録が続いた。
湯沸かしに掛かった時間が短かった順にランキング形式で見てみよう。
1位【2分12秒】PRIMUS エクスカイザーEX-ULT-1(OD缶ガス)
2位【2分18秒】SOTO マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター SOD-310(OD缶ガス)
3位【2分27秒】SOTO レギュレーターストーブ FUSION ST-330(CB缶ガス)
4位【2分39秒】SOTO レギュレーターストーブ ST-310(CB缶ガス)
5位【3分25秒】SOTO MUKAストーブ SOD-371(ガソリン)
6位【6分45秒】OPTIMUS 8R(ガソリン)
7位【7分35秒】EVERNEW チタンアルコールストーブ(アルコール)
8位【28分41秒】DAISO ちょこっとストーブ(固形燃料)
こうしてみると、湯沸かしにはガスを燃料としたガスバーナーが向いていることが分かる。ガスバーナーの中でもCB缶(カセットガスボンベ缶)よりOD缶(アウトドア缶)のほうが、より早く湯を沸かすことができる傾向だ。
次の章からは、使用する燃料の種別ごとに、それぞれのバーナーの特徴を細かく見ていこう。
【2分39秒】SOTO レギュレーターストーブ ST-310「大人気の定番」(CB缶)
ソロからファミリーキャンパーまで、さまざまなユーザーたちの間で超人気、品薄状態が続いているバーナーがこのST-310だ。筆者自身も10年以上愛用しており、通算で100泊以上のキャンプに使っている。低温時でもガスの気化率を上げるマイクロレギュレーター機構を装備しているので、低温時でもしっかりした炎が出せるのが魅力。また、一体型の本体とゴトクは非常に頑丈で、10インチのダッチオーブンを上に乗せて調理しても問題なし。初心者がバーナーで迷ったらコレを選べばまず間違いなしの名機。
ST-310のバーナーヘッドは大きめになっている分、クッカーの底の広範囲に渡って炎が回る感じ。4本のゴトクもしっかりした作りになっており、上に乗せたクッカーの安定度は高い。
価格:6380円
発熱量:2500kcal 本体サイズ:166×142×110mm
収納サイズ:140×70×110mm
重量:330g
【2分27秒】SOTO レギュレーターストーブ FUSION ST-330「分離型で使いやすい」(CB缶)
バーナーと調節レバーがホースで繋がれた分離型モデルがこのST-330。ボンベ側に調節レバーと点火スイッチがあるので、調理中でも操作が楽なのが一番のメリット。ゴトクはやや細めだが、しっかりしているので大きな鍋を乗せても安心。ボンベと燃焼部が離れているので、ボンベが加熱されないのも大きな魅力。ST-310同様レギュレーター機構 により低温にも強く、囲われたバ ーナーヘッドにより耐風性能も高い。500mlの湯を沸かすのに掛かった時間は2分27秒とST-310より11秒も早かった。
ST-330はT-310よりもバーナーヘッドは小さいものの、ヘッドの縁がバーナー中心部を囲むような作りになっており、防風性は高い。T-310との11秒の差は、こ の形状の違いによるものと予想される。
価格:9900円
発熱量:2200kcal 本体サイズ:350×120×90mm
収納サイズ:150×75×90mm
重量:250g
【2分18秒】SOTO マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター SOD-310「軽量コンパクトでパワフル」(OD缶)
低温に強いSOTOのマイクロレギュレーター機構を搭載した超小型、軽量のOD缶バーナー。面白いのはバーナーヘッドとゴトクが収納時に分離できる点で、片手にすっぽり収まるほどコンパクトにしまえる。重量もヘッド部約60g、3本ゴトク7gと合計67gの驚異的な軽さ。
にもかかわらず2800kcal/hという高火力を持ち、500mlの湯を沸かすのに掛かった時間はは2分18秒と、CB缶バーナーの2種を大きく突き放す結果を出した。オプションで4本ゴトクにカスタム可能な点など、ギミック感があるのもたまらない。
バーナーヘッドは直径47mmと小さめで、標準装備の3本ゴトクは外径100mmだが、オプションで購入できる4本ゴトク(外形144mm)を使えば安定感が格段に向上する。
価格:8140円
発熱量:2800kcal 本体サイズ:90×117×100mm
収納サイズ:94×10×35mm(※ゴトクのみ収納時) 重量:67g
【2分12秒】PRIMUS エクスカイザーEX-ULT-1「世界初のチタン製バーナー」(OD缶)
筆者が持つバーナーの中から選んだOD缶バーナーの名機がこれ。1994年に世界初のチタン製バーナーとして生まれ、多くの登山家を魅了した。
バーナーを囲むフラットなチタンプレートを起こしてX字にするワンタッチ方式や、木製グリップなど、今見ても色褪せない機能美に溢れたデザインが魅力。
重量も95gと当時としては驚異的な軽さ。専用樹脂ケースにすっぽり収まり収納性も抜群。そして驚いたことに2分12秒というタイムは今回計測した8機種の中で最速だった。
ゴトク部分はバーナー部をまたぐような形で展開する。チタン製で軽量かつ熱伝導特性が高く、プレートなので畳むとコンパクトになる。風防の機能も併せ持たせているようだ。
価格:廃盤商品
【3分25秒】SOTO MUKAストーブ SOD-371「予熱不要のガソリンバーナー」(ガソリン)
ガソリンを燃料にするバーナーは気化率を上げるため、ポンピングによる圧縮やプレヒート(余熱)を必要とするが、このMUKAストーブはポンピングのみで強い火力を実現した分離型。
このモデルのいい所はレギュラーガソリンが使える点。通常のガソリンバーナーの燃料にレギュラーガソリンを使うと不完全燃焼で煤が多くなり、機関部が煤で詰まってしまうので、非常時以外はホワイトガソリンを使うのが常識だが、MUKAストーブは燃焼効率が高いのでレギュラーガソリンを入れても問題なく使える。
ガソリンストーブとしては珍しく、中火、強火の強弱調整が可能。
スペック上の火力は4000kcal/hとかなり強力だが、今回のテストでは500mlの湯を沸かすのに3分25秒とやや時間が掛かる結果となった。
価格:1万7050円
発熱量:4000kcal 本体サイズ:135×135×80mm
収納サイズ:80×65×80mm 重量:333g
【6分45秒】OPTIMUS 8R「カッコかわいいスタイルも魅力」(ガソリン)
もともと19世紀のキッチンウエアメーカーとして生まれたオプティマスを代表するガソリンストーブが「8R」で正式名称「No.8」。初代モデル登場は1940年ごろと言われ、初期は箱がアルミ製で後期かはスチール製。約40年間に渡り多くのアウトドアマンに愛されてきた名機中の名機。これも筆者の私物で、おそらく80年代のブラスタンクモデル。火力はあまり強くないが「ブバババ」という独特の燃焼音や美しいデザインは、今でも使う喜びを存分に与えてくれる。
火力が安定するまでに2分ほどかかり、安定してもそれほど高火力ではないので、500mlの湯を沸かすのに6分45秒という遅めの結果に。それでも美しいデザインに愛おしさを感じるので、個人的には問題なし(笑)。
価格:廃盤商品
【7分35秒】EVERNEW チタンアルコールストーブ「低温時でも確実に燃焼」(アルコール)
今でも一部の登山家やミニマリストに人気があるのがアルコールストーブだ。アルコールもホームセンターやドラッグストアなどで比較的簡単に入手でき、500mlで約500円と経済的な点も特徴。このエバニューのチタンモデルはなんと重量34gという軽さ。単に燃料だまりで燃えるだけでなく、副室で熱せられたアルコールの蒸気が噴出し、外側でも力強く燃えるオープンジェット機能を搭載。70mlの燃料で約15分燃焼する。
アルコールは低温時でも確実に燃焼して、燃焼音がまったくしないサイレントなところも魅力。しかし、それと引き換えに火力は弱く、500mlのお湯を沸騰させるまでに7分35秒ほどかかった。
今回のテストでは別売りのチタンゴトク (1430円)を使ったが、各メーカー (100円ショップにもある)からアルコールストーブ用ゴトクが発売しており、いろいろ組み合わせられる。
価格:4180円
発熱量:─ 本体サイズ:直径71×42mm(※収納時も同寸) 重量:34g
【28分41秒】DAISO ちょこっとストーブ「時間は掛かるがコスパは◎」(固形燃料)
今回オマケ的に試したのがダイソーの固形燃料。使ったのは25gのタイプ。
「自動炊飯」で人気のメスティンなどを使えば、固形燃料1個で1合分のご飯が炊けるので、500mlの水を沸騰させることなど訳ないと思った が、予想は外れて28分41秒で燃え尽きた。お湯もボコボコの沸騰 状態ではなく、沸騰直前の約93 度ほど。まぁこれならラーメンやコーヒーはいける。とはいえ、ダイソーだと25g×3個が100円で買えるので、このコストパフォーマンスは最強と言えるだろう。
2021年9月のテスト当時、ダイソーでは25g×3個のほか20g×5個、 30g×3個の固形燃料を入手できた。
固形燃料は焚き火の着火剤やガソリンストーブのプレヒートにも使えるので、装備に忍ばせておきたいアイテムだ。
ゴトクには同じくダイソーで330円(税込) の「ちょこっとストーブ」を使用。クッカーの安定性も良く、火から鍋底までの距離もいい感じだった。コンパクトに収納できるのもうれしい。
自分に合う方法を見つけてお湯を沸かす時間を楽しもう!!
最新モデルから往年の名機、100均アイテムなど8点のバーナーについて500mlの湯を沸かすのに掛かった時間を計測したところ、最速は2分12秒だった。このタイムを叩き出したのは、意外にも最新機種ではなく、1994年に登場したチタン製バーナーのPRIMUS エクスカイザーEX-ULT-1だった。
反対に、500mlの湯を沸かすのに掛かった時間が最も長かったのは、100円ショップダイソーの固形燃料を燃料とする、同じくダイソーの「ちょこっとストーブ」で、タイムは28分41秒だった。
また、使用する燃料別に考えてみると、CB缶(2機種)の平均タイムが2分33秒、OD缶(2機種)の平均タイムが2分15秒、ガソリンバーナー(2機種)の平均タイムが5分5秒だった。
つまり、安定して早く湯を沸かせるバーナーは「OD缶を燃料とするもの」ということになりそうだ。
一方で、沸騰時間が早かろうが遅かろうが、それぞれの沸かし方に良さがあるということも見えてきた。
例えば冬山で遭難してしまった場合のような、命が懸かっている状況下であれば、いち早くお湯を沸かして体を温める必要があるだろうが、遊びのキャンプであれば、多少時間が掛かったとしてもまったく問題ない。
自分の気に入ったアイテムを使って、自然の中で優雅なひとときを過ごしていると、お湯を沸かすという単純な行為ですら楽しく感じてしまうものなのだ。
まあ、さすがに100円の固形燃料で30分かけてお湯を沸かすのは現実的ではないが、それ以外のアイテムなら十分許容範囲ではないだろうか。タイムアタックしておいて「時間の問題ではない」 というのはいささか矛盾してはいるのだが、これが実際にテストしてみて正直に思った感想だ。
レポート&写真●櫻井伸樹 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実
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テキトーにネトで見た話ばかり雑にパクった記事しか書かない記者どもよりは、ちゃんと試してて好感持てるわ。