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【合計1600馬力の豪腕対決】シボレー・カマロZL1xサットン・マスタング 前編

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【合計1600馬力の豪腕対決】シボレー・カマロZL1xサットン・マスタング 前編

ハイパワーなマッスルカーへの憧れ

執筆:Matt Prior(マット・プライヤー)

【画像】CS 850GTとモディファイド・カマロ ZL1 マッハ1とベースのカマロも 全61枚

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


筆者は他人を羨むことは殆どないが、写真家の友人がアメリカへ引っ越しした時は少し違った。カリフォルニアの広大な風景や、心地よさそうな日差しの中でクラシックカーをいじっている写真が送られてくるたび、自分も、と思わずにはいられなかった。

ジープ・ラングラーのチーフデザイナーを務めた人物は、ミシガン州の冬ならピックアップ・トラックの後ろにスノーモービルを載せ、数100kmも放浪できると話していた。そんな体験も悪くはない。

安くない医療費や銃で撃たれるリスク、毎日のように口にするジャンクフードは好きになれないだろう。しかし、アメリカへの憧れがあることは認めざるを得ない。

ハイパワーなマッスルカーも、そんな対象の1つ。実際、多くの英国人がこれまで派手にモディファイし、その欲求を満たしてきた。経済や環境問題など逆境が襲っても、気持ちが冷めることはないようだ。

英国でデトロイト生まれの筋力自慢を購入することは、北米ほど簡単でもないし、人気があるわけでもない。しかし高性能なパーツを買い集めて、馴染みのチューニング・ガレージへ持ち込み、V8エンジンを800馬力近くまで高めた人物がいる。

ドイツ製のエグゼクティブ・サルーンと同じくらいの金額で、スーパーカー級のパワーが手に入ったようだ。あるいは、部品を探し回るのが面倒なら、仕上がった状態のコンプリートカーを手に入れることもできる。

859psと91.7kg-mを繰り出すマスタング

例えばロンドン北部のクライブ・サットン社を訪ねれば、お眼鏡にかなう1台が見つかるかもしれない。長年アメリカ車を輸入販売してきた経験を持ち、通常のマスタングを費用に応じてワイルドに仕立ててもくれる。

そんなクルマが、今回試乗するサットン CS 850GT マスタングだ。これまでもサットンのマスタングを試乗たことはあるが、数年前はまだ811psだった。それで充分じゃないかって? 確かにそうかもしれない。

だが、今回のマスタングはその上を行く。最高出力859psと最大トルク91.7kg-mを繰り出すという。担当者の話では、英国で売られているマスタングとしては、最もパワフルだそうだ。

フォード自身もシェルビーGT500というチューニング・マスタングを提供している。そちらの最高出力は770psで、CS 850GTには及ばない。左ハンドル車で、英国では乗りにくい。

最新のサットン・マスタングで真っ先に触れるべきは、その大パワーを発揮するエンジン。5.0LのV8ガソリンにホイップル社製のスーパーチャージャーと巨大なインタークーラーをドッキングしてある。

Xフォース社製のアクティブバルブ付きエグゾースト・システムが組まれ、サウンドもドラマチック。それらの効果を最大限に発揮できるよう、エンジンのマネージメント系にも手が加えられた。

サットンがチューニングを施したCS 850GTの英国価格は、いくつかのオプションを載せて11万5000ポンド(1782万円)。真新しい、パンプアップしたアメリカン・マッスルカーを入手できる、手っ取り早い手段といえる。

781psと101.7kg-mへ自らチューニング

そしてもう1台、ゲイリー・ハンダ氏が手を加えたように、独自のワイルドなアメリカンというチョイスもある。

ゲイリーが目をつけたのは、オリジナルの雰囲気を残す見た目のシボレー・カマロ。しかし英国では正式に売られていない。ゼネラルモーターズは、欧州で積極的にビジネス展開しようとは考えていない。

新しいC8コルベットは入ってくるが、お得意のマッスルカーを持ち込む予定はないようだ。右ハンドル車すら作っていない。

そこで彼は左ハンドル車を並行輸入し、自身でパフォーマンス・アイテムを調達した。書くのは簡単だが、実際は北米と英国の両方で多額の税金を支払うことになるから、相応の覚悟は必要だ。

ただし、代理店で輸入の代行はしてくれる。英国でナンバーを取る場合、法規に合致しないのはテールライトくらいだという。

ゲイリーが輸入したのは、2018年式のカマロ ZL1。6.2L V8エンジンには、スーパーチャージャーを自身で搭載している。プーリーを変更しブースト圧を高め、エグゾーストも社外品にすることで、781psと101.7kg-mを発揮するそうだ。

度肝を抜くチューニング、とまではいえないかもしれない。多くの混合気をエンジンに送り込み、多くの燃焼ガスを吐き出すように、マネージメント系もチューニングされている。だが、内部構造には手が加えられていない。

数字は大きいが、エンジンに掛かるストレスは、それほどでもない。5.0Lから859psだと、排気量1.0L当たりの出力は172psほど。フェラーリF8 トリブートは182ps/Lもある。回転数も7500rpmに留めてある。

スーパーチャージャーのノイズが聴覚を支配

今回2台を並べたのは、直接的な比較が目的ではない。シボレー対フォードのような。強力なマッスルカーを手にした喜びがどれほどなのか、確かめたいと思ったからだ。激しく攻め立てた時どんな走りを興じれるのか、実際に体験することで。

というわけで、最初にステアリングホイールを握ったのは、クライブ・サットンCS 850GT フォード・マスタング。

スプリングとダンパー、アンチロールバーに至るまで、サスペンションにも改良が施されている。通常のマスタングの緩い姿勢制御が改められ、路面にしっかり拘束された印象を受ける。

英国の一般道では、マスタングは幅が広い。ボディ剛性は高いようだがサイズが大きく、ある程度のしなやかさがあるためか、乗り心地は過酷というほどではない。

クライブ・サットン社の真骨頂といえる部分が、スキなく仕立てられたドライブトレイン。6速MTにはショートシフターが組まれ、引き締められたシャシーと同調するように、変速はタイトだ。

アイドリング状から少し回転数を高めただけで、スーパーチャージャーのうめき声が聴覚を支配する。アクセルペダルへ力を込めると、リアタイヤをねじ切らんばかりの衝動が放たれる。実際、リアタイヤは路面を掴みきれず激しく空転する。

そんな野蛮さを備えていながら、CS 850GTのドライビング体験に洗練という言葉がないわけではない。フォードがマスタングにGTという2文字を与えたように、グランドツアラーとしての性格も残っている。

この続きは後編にて。

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みんなのコメント

1件
  • 昔は何馬力だとか言ってたけど
    歳を取ると馬力はそんなに必要も無いと思った今日この頃
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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