シトロエン・アミ・ワンの量産版
text:Matt Prior(マット・プライヤー)
【画像】現代版アミとルノー・トゥイージーを比較 アミ8と2CVも写真で 全68枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
これは、普通自動車ではない。タイヤは4本で、電気モーターを積んでいる。2シーターで2ドア。ステアリングホイールが付いていて、ペダルは2枚だけ。クワッドサイクルと呼ばれるタイプのクルマだ。
小さく軽量なルノー・トゥイジーなどと同じ、シティ・マイクロカーに当たる。欧州の交通環境では、クワッドサイクルには自動車とは違うルールが適用され、自由度も高い。
国によってはクワッドサイクルには普通自動車の免許が不要で、14歳から運転できる。厳しいクラッシュテストに合格する必要もないし、環境規制に準拠する必要もない。
ロンドン中心部でも、かなりの数のクワッドサイクルが走っている。筆者がお世話になっている歯科の麻酔科医も1台所有していて、少し前にどんな印象か聞かれたことがある。
その麻酔科医は、筆者の意識状態を確認する目的があったのかもしれない。顎に何かを押し込みながら聞いてきた。わたしは、「素晴らしい乗り物だと思いますよ」。と答えた。本心ではなかったけれど。
しかし、2019年のスイス・ジュネーブモーターショーでシトロエン・アミ・ワンというコンセプトカーを目にして以来、小さなシェブロンに強い興味を抱いてきた。量産が始まっており、フランスでは購入のほか、レンタルも可能だ。
2021年には、ほかの左ハンドルの国でも利用できるようになるという。英国でも乗れるようにしたい、とシトロエンは考えている。実現するかどうかは、英国市民の反応次第。みんなで、乗りたいと声をあげよう。
左右のドアや前後のボディパネルは共通
全長は2.41mしかなく、全幅は1.39m。参考までに日本の軽自動車は全長3.4mで、全幅は1.48mほど。バッテリーを搭載しない状態で、車体の重さは425kg。クワッドサイクルとしては重たい方で、残念ながらアミには運転免許が必要だ。
バッテリーの容量は5.5kWhあり、床下に搭載される。バッテリーも含めた車重は485kgとなり、航続距離は69km、最高速度は45km/hに制限されている。
筆者の心を奪ったアミ・ワン・コンセプトから、量産版のシトロエン・アミのデザインは変化している。コンセプトカーは、全体的に光沢があって滑らかなボディだった。量産版では、マットグレーの箱のようなカタチになっている。共通性は残っているけれど。
このアミ・ワンにはコンセプトカーと同様に、シンプルというコスト削減のテーマがある。左右のドアは共通。助手席側のドアはフロントヒンジで、運転席側はリアヒンジになっている。
ボディ四隅のパネルも共通。フロントとリアは、まったく同じデザインなのだ。進行方向は、屋根の傾斜やガラス周りのデザイン、ライトの色などでわかるだろう。
外からドアを開くには、大きなボタンを押す。車内からは、布製のハンドルを引っ張る。サンルーフが標準装備で、車内の表面積の半分近くはガラスが占めている。普通車と違って、車内は明るく開放的だ。
軽い車体に正確な操舵感でキビキビ走る
充電ケーブルは助手席側の後ろにしまってある。約3時間で充電できるという。このクワッドサイクルはシティ・マイクロカーだから、都市部での移動が目的。急速充電器には対応していない。いい換えれば、地下鉄やバス、スクーターなどにかわる移動手段。
電動スクーターなどのように自身で購入もできる。アミの価格は、英国では6200ポンド(83万円)程度になるだろう。パリの場合は、公共サービスとして1分単位でレンタル利用もできる。
とてもベーシックな乗り物ではある。でも、魅力がないわけではない。車重500kgを切る軽さだから、運転は楽しい。
乗り心地は硬めだが、硬すぎることはない。操舵感はおっとりしているものの、反応は正確。ボディは小さいから、四隅の見切りも良い。ドアミラーも小さいが、窓は広く運転席は後ろ側だから、周囲の状態なども掴みやすい。
全高は1.52mあり、しっかりしたボディが囲んいるため、交通量が多い道路でも圧迫感はあまり感じずに済む。もちろん、速くはない。
電気モーターの最高出力は8ps。一桁間違っているわけではない。回転直後から大きなトルクを発生し、リダクションギアでキビキビ走る。
モーターはフロントにあり、後輪駆動。タイヤのサイズは14インチ。交差点から気持ちよく加速する。アクセルを目一杯踏み込めば、すばしっこい。最小回転直径は、7.2mと小回りも充分。
チャーミングなシティ・マイクロカー
右ハンドル環境のロンドンで運転する左ハンドル車は、視認性が悪くなりがちだが、アミなら問題ない。歩道側に乗り上げるときなどは、左ハンドル車の方が便利だったりする。
ただし、歩道脇の充電器前に停める時は、注意が必要。アミの充電ケーブルが道路側に来てしまう。
バイクなどと違って、寒い風にさらされたり、雨に濡れる心配はない。安全性も2輪車よりは高い。でも、渋滞の間を縫っては走れない。
新車と中古車とで価格を比べるのは好まないものの、6200ポンド(83万円)も出せば、色々な中古車が選べてしまう。客観的に考えれば、良い側面も多いが、良くない側面も同じくらいあるだろう。
シトロエンは、アミはセカンドカーとしての需要があると考えている。実用性に制限はあるものの、中小企業からのニーズもあるだろうと考えている。筆者もその可能性はあると思う。
とてもチャーミングな、好印象なシティ・マイクロカーだ。これまで、このカテゴリーのクルマをお勧めすることはなかった。でも今回は本心。麻酔科医に聞かれたと時は違う。
シトロエン・アミ(欧州仕様)のスペック
価格:6200ポンド(83万円/予想)
全長:2410mm
全幅:1390mm
全高:1520mm
最高速度:45km/h
0-100km/h加速:−
航続距離:69km
CO2排出量:0g/km
車両重量:485kg
パワートレイン:電気モーター
バッテリー:5.5kWhリチウムイオン
最高出力:8ps
最大トルク:−
ギアボックス:ダイレクトドライブ
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みんなのコメント
トヨタの同じクラスのとは違います
最高速を65km位にして、航続距離を100から150kmにできれば、日本で販売しても売れると思う
今のままでは、50ccバイクと同じなので、そのままでは難しいし、邪魔だと思う