誰もが乗る前から納期は1年以上の異常事態
この6月に世界初公開となり、8月2日に正式発表となった新型トヨタ・ランドクルーザー。これまでの200シリーズの後継として14年ぶりのフルモデルチェンジで登場した300シリーズは、先行予約の段階からディーラーに問い合わせが殺到。8月半ばの段階では公式サイトに”御注文いただいてからお届けするのに多大な時間を要する見通し”であり、納期が”1年以上となる見込み”という案内が表示されるほどの人気ぶりを見せている。
なんちゃってヨンクだらけの今こそ乗りたい「悪路御用達」の男前国産SUV4選
※画像は公式サイトのもの
それもそうだろう。威風堂々を地でいく大柄でスクエアなシルエットに、歴代モデルの面影がほのかに香るディテールが与えられたスタイリング。それは紛うことなき”ザ・ランクル”の姿。60シリーズ、100シリーズ、200シリーズと続いてきた上級ステーションワゴン系ランクルの血脈であることが一発で見てとれる。逞しさと風格が感じられて、素直にカッコイイと思わされる。
インテリアもトヨタのSUVのフラッグシップというポジショニングに恥じない充実ぶりで、シンプルでありながらゴージャス。昨今のSUV人気、それも高級SUV人気にピタリとマッチしているといえるだろう。納車待ちの長いリストができたところで、何ひとつ不思議はない。
だが、クロカン4WDの雰囲気は希薄だしあまりにも街乗りSUVとしての出来映えがよさそうなので、「ランクルってオフローダーじゃなかったっけ?」だとか「悪路のことをあんまり考えてなさそう」なんて言い出す人がいたりもする。
いやいや、とんでもない。クルマって、ホントのところは乗ってみるまでわからない。まだ試乗の機会は巡ってきてないから、僕にもホントのところはわからない。でも、クルマの成り立ちを見てるだけで、推測できることはある。ランクル300シリーズは決して悪路をないがしろになんかしていない。素直にそう感じられるのだ。
新型ランクルはやっぱり本格派のクロカンモデルだ
理由その1 車体の構造
ジープではラインアップ随一のオフローダーであるラングラーを除くすべてのモデルが、ランドローバー/レンジローバーではもっともハードコアだったディフェンダーですらモノコック構造を採用する中、ランクル300は依然としてラダーフレームを採用している。もちろん改良の手はしっかり入って、TNGAに基づいて新たに開発されたGA-Fプラットフォームだ。溶接技術に徹底的にこだわったことで重ね合わせの部分を大幅に減らして重量を抑えつつ高剛性化を図り、車両全体では200シリーズと較べておよそ200kgの軽量化に成功しているという。
そうまでしてラダーフレームを採用し続ける理由は、車体の下面が何かに当たってもボディへの影響が及びにくくするため、あるいはボディに損傷が生じてもフレームやサスペンションに損傷がなければ走ることができるため。街中での快適性を重視するならモノコックを採用するほうがいいわけだが、それをしていない。
ついでに述べておくなら、ランクル300のアプローチアングルは32度、デパーチャーアングルは26度、ランプブレークオーバーアングルは25度とほとんど200シリーズと変わらない値だ。さて、何か問題はあるだろうか?
理由その2 足まわり
フロントがハイマウント・ダブルウィッシュボーン、リヤがトレーリングリンク車軸式。フロントはスムースなホイールストロークとタイヤ接地性を考えた形式、リヤは接地性にこだわった車軸式だ。
また、もっとも強くラフロードを睨んでるグレードの「GR SPORT」では、電動デフロックが前後につくほか、前後のスタビライザーを自動で電子制御してタイヤの接地性を全体的に向上させるE-KDSS(エレクトロニック・キネティック・ダイナミック・サスペンション・システム)を採用している。
悪路のことを考えてないのだとしたら、それらは何のためのもの?
理由その3 フルタイム4WDのシステム
そしてオート/ダート/サンド/マッド/ディープ・スノー/ロックの6つから路面状況に合わせて走行モードを選べるマルチテレインセレクト。何だかんだいって、もはや何らかの機構を電子の力で制御するときの緻密さや正確さは、ドライバー自身が自分の技量で操作していくときとは比較にならないレベルにとっくに達している。
こうした電子制御系は200シリーズに採用されたものをアップデートしたもので、システムそのものの成り立ちに変更を加えてはいない。それは買い物のために悪路を何時間もかけて移動する必要があるような地域でも部品の調達などを容易にすることを考えてのことらしい。
ランクルの名前がトヨタの誇りで”そこそこ”は許されない
理由その4 操舵アクチュエーター付きパワーステアリングの採用
電動式の操舵アクチュエーターを組み合わせた機構だ。操舵に関する支援機能を備えつけるためには電動式の操舵アシストが必要だが、電動式のみでは耐久性が少々心許ない。そこで電動式の操舵アクチュエーターと、過酷な環境にもマッチングのいい油圧式パワーステアリングを組み合わせることで耐久性をも担保しようという、ある種のリスクマネージメントだ。
街中をはじめとする一般的な環境だけを見るのであれば、そこまでする必要はないわけだ。
理由その5、マルチテレインモニター
これはクルマの周囲の状況を4つのカメラでサポートし、ドライバーの死角になりやすい部分をモニターでチェックするためのもの。フロア下側を透過映像として映し出すこともでき、タイヤ位置などを示す線を映像に合成させることでより正確な走行状況を得ることも可能だ。
これが悪路を走るときにどれほどありがたいことか。一度使ってしまったら二度と手放せない、悪路走行専用機構である。
理由その6 ランドクルーザーの名前を継承していることそのもの
“どこへでも行き、生きて帰ってこられる”ことが、ランドクルーザーのアイデンティティ。トヨタはそれを何十年にもわたって継承し続けてきた。「ランドクルーザー」という名前は、それそのものがトヨタのプライドなのだ。
歴史と伝統、でもある。ランドクルーザーを名乗る以上は、それを”そこそこ”で済ませてしまうわけにはいかないのである。だから間違いなく300シリーズも、ランクルとして素晴らしいモデルに仕上がってるに違いない、と予想できるのだ。
この300シリーズには他にもまだまだ見どころはあるのだが、長くなりすぎるので、それはまた別の機会に──。
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みんなのコメント
この300が発表されてから200の古臭さが目立つよぉ〜
でもお金ないよぉ(°▽°)