発売から14年を超え、今も根強い人気を持つ三菱デリカD:5。3列シートミニバンでありながらクロカン的な性能を持ち、独創性の強いデザインと相まって、多くの底堅いファンを抱えている。
性能にもデザインにも定評のあるデリカD:5だが、あらためてこのモデルの優れている点を紹介しつつ、そうはいっても気になる弱点や、なぜライバルである他メーカーはこのジャンルに手を出さないのかを分析してみる。
2020年ミニバン販売NO.1! アルファードの天下はいつまで続くのか
文/渡辺陽一郎、写真/池之平昌信、編集部
【画像ギャラリー】デリカD:5&東京オートサロン2020でお披露目されたデリカD:5「eyeキュート」をみる
着実に売れ続けているデリカD:5
多人数乗車の可能なミニバンは、今でも売れ筋のカテゴリーだ。国内で販売されている新車の約15%を占める。
背の低いウィッシュやストリームが廃止され、2000年代前半の20%少々に比べると比率を下げたが、依然として手堅く売られている。ミニバンのシェアは、人気上昇中のSUVと同程度だ。
2007年にデリカスペースギアの後継モデルとして発売開始したデリカD:5(2020年販売台数:11,157台/2019年販売台数:20,085台)
このミニバンの中で、地味ながら着実に支持されているのが三菱デリカD:5になる。登場したのは2007年1月と古いが、コロナ禍の影響を受ける前の2019年には、1か月平均で約1700台を登録していた。アルファードやセレナに比べると少ないが、エルグランドなどよりは多い。
また三菱の販売店舗数は、全国に約600箇所と少ない。トヨタ全店の4600箇所、ホンダの2200箇所、日産の2100箇所を大幅に下まわる。
そこで1店舗当たりの登録台数を割り出すと、デリカD:5は、トヨタであればヴォクシーと同等だ。ホンダのステップワゴンよりも多く、三菱の国内販売を支える大切な基幹車種になっている。
デリカD:5はフルモデルチェンジせずとも、数年ごとに定期的に乗り換える顧客が多い。中古車価格と売却価格が高いことにより、定期的な乗換えが可能となる
三菱車同士を月別の販売台数で比べても、軽自動車のeKクロススペース&eKスペース、eKクロス&eKワゴンに次いで多い。デリカD:5は、三菱の小型/普通車では最多販売車種になる。
三菱の販売店にデリカD:5の売れ行きを尋ねると、次のように返答された。
「デリカD:5は個性的なミニバンだから、ほかの車種では代用できない。そのためにフルモデルチェンジしなくても、数年ごとに、定期的に乗り替えるお客様が多い。人気車だから中古車価格も高く、お客様も高値で売却できる。これも定期的に乗り替える理由だ。好条件で売れるから、新型を買いたくなる」。
そこで改めてデリカD:5のメリットとデメリットを考えたい。
外観×悪路走行力が魅力
2019年のマイナーチェンジで、フロントマスクが「ダイナミックシールド」に変更。以前よりも厳ついデザインになり、独特の存在感になった
まずデリカD:5の一番のメリットは、SUVに限りなく近いミニバンであることだ。ヘッドランプを縦長に配置したフロントマスクには、独特の存在感や野性味が漂う。今はSUVの人気が高いので、このフロントマスクはデリカD:5の大切な魅力だ。
そしてデリカD:5は外観だけでなく、悪路走破力もSUV並みに優れている。プラットフォームはアウトランダーやエクリプスクロスと共通で、4WDにはロックモードも採用した。前後輪に駆動力を振り分ける多板クラッチの締結力を強め、悪路走破力を向上させている。
最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)も185mmを確保したから、悪路のデコボコを乗り越えやすい。「ミニバンスタイルのSUV」と呼べる外観と悪路走破力が一番の魅力だ。
「ミニバンスタイルのSUV」と呼べるほど悪路走行に優れている。国内ミニバンでディーゼルエンジンを選べるのはデリカD:5とグランエースのみ
2つ目のメリットは、直列4気筒2.2Lクリーンディーゼルターボを搭載することだ。国産ミニバンでディーゼルを選べるのは、今はデリカD:5とグランエースのみになる。
しかも動力性能は最高出力が145馬力(3500回転)、最大トルクは38.7kg-m(2000回転)とされ、後者の数値はガソリンエンジンに当てはめると3.8Lに相当する。
最大トルクを実用域の2000回転で発生するから、アクセルペダルを軽く踏み増すだけで駆動力が沸き上がる。この動力性能は、車両重量が1900kgを超えるデリカD:5と相性が良い。悪路をゆっくりと進む場面でも運転しやすい。
WLTCモード燃費は12.6km/Lだ。ディーゼルが使う軽油の価格はレギュラーガソリンに比べて1L当たり約20円安い。
そのためにデリカD:5の燃料代は、アルファードハイブリッドやコンパクトミニバンのシエンタ(ノーマルエンジン車)と同等になる。動力性能が高く、なおかつ経済性も優れている。
デリカD:5のメリットとして、車内の広さも挙げられる。背の高いボックス状のミニバンだから、空間効率も優れている。全長が4800mm以下の車種では、車内が最も広い。3列目シートの頭上と足元にも余裕があり、大人の多人数乗車に対応できる。
3列目を左右に跳ね上げて格納すれば、広い荷室に変更できる。多くの荷物を積むことができる。しかし、設計が古いためか、格納には時間がかかる
3列目を左右に跳ね上げて格納すれば、広い荷室に変更することも可能だ。1/2列目のシートを使って4名で乗車して、車内の最後部には荷物をタップリと積める。
このほか先に述べた数年後に高値で売却できることもメリットだ。三菱の残価設定ローンでは、3年後の残価率(新車価格に占める残存価値の割合)が55%に達する。一般的なミニバンは40~47%だから、三菱が月々の返済額を抑えるために残価を高めていたとしても、好条件で売却できる。
デリカD:5 3つのデメリット
これらのメリットがある一方で、デリカD:5には欠点も伴う。ディーゼルエンジンは高効率だが、ユーザーによっては違和感を抱く。実用回転域の駆動力が高い代わりに、3500回転付近から回転の上昇が鈍るためだ。
ガソリンエンジンのように伸びやかには回らない。1400~1800回転で巡航中に緩くアクセルペダルを踏み増した時などは、動力性能が高まると同時に、ディーゼル特有の少し粗いノイズも響く。
デリカD:5のディーゼルは、回転感覚やノイズが古典的だ。そこに不満を感じるユーザーにとって、ガソリンエンジンが廃止されて選べないことも欠点になってしまう。
デリカD:5の最小回転半径5.6mと大回りであり、狭い場所での運転感覚とボディの左側面の死角に注意したい(デリカD:5 全長4800mm×全高1875mm×全幅1795mm)
狭い道の運転感覚にも注意したい。全長が4800mm、全幅は1795mmだからボディは大柄ではないが、最小回転半径は5.6mで大回りだ。視線の位置が高めだから、遠方を見やすい半面、ボディ左側面の死角は拡大する。購入時には、縦列駐車などを含めて、狭い場所での運転感覚を確かめたい。
使い勝手では乗降性が悪い。最近は床を平らに仕上げたミニバンも低床設計になり、路面から床に直接足が届く。しかしデリカD:5は設計が古く、最低地上高も十分に確保したから床が高い。サイドステップ(小さな階段)を介して乗り降りする。
このほか3列目シートを左右に跳ね上げて格納する時には体力を要する。設計の新しいミニバンとは違って、軽く持ち上がらない。
マイナーチェンジが行われた際に、インパネ周辺の質感は高まった。衝突被害軽減ブレーキは向上したものの、自転車を検知することはできない
マイナーチェンジを経てインパネ周辺の質感は高まったが、助手席の前側に装着されていたフタ付きのアッパーボックスは省かれた。衝突被害軽減ブレーキは進化したが、自転車を検知する機能はない。
デリカD:5にはこれらの欠点が散見されるが、いずれも重大な課題ではない。走行安定性、乗り心地、操舵感は、2019年に実施された比較的規模の大きなマイナーチェンジで改良された。つまり選ぶ価値の高いミニバンになっている。
それなのにほかのメーカーは、デリカD:5の「ミニバン×SUV」というカテゴリーに参入してこない。フリードはクロスター、シエンタはグランパーを設定するが、いずれも外観を若干SUV風に変更した程度で、デリカD:5とは違う。
「ミニバン×SUV」が登場しない理由
SUVが人気なのに他メーカーから「ミニバン×SUV」が登場しない背景には、3つの理由がある。
まず最低地上高を高めてSUV風の車種に仕上げるには、床面や足まわりまで強化せねばならないことだ。最低地上高に余裕があれば、下まわりを擦らずに悪路へ乗り入れられてしまう。
単純に車高を持ち上げただけでは、ボディや足まわりの耐久性が不足する心配がある。最低地上高の拡大は、信頼性を高めるために手間を要する。
SUV風ミニバンではなく、3列仕様のSUVで十分という見方もある。ミニバンより狭いが、多人数乗車と荷物積載が可能だからだという
2つ目の理由は「ミニバン×SUV」に対するニーズだ。一般的なSUVも、ワゴン風のボディスタイルによって空間効率が優れている。エクストレイル/CR-V/CX-8などは、3列シート仕様も用意する。
SUVの3列目は、ミニバンではないから窮屈だが、一応は多人数乗車と荷物の積載が可能だ。「ミニバンにSUV風のグレードを用意しなくても、SUVの3列仕様で十分」という見方も成り立つ。
3つ目の理由は今後のミニバン需要だ。ミニバンの一部は海外でも売られるが、ほかのカテゴリーに比べると国内向けだ。
今後の国内市場は少子高齢化もあり、ミニバン需要を見通しにくい。そのためにデリカD:5やエルグランドは、10年以上にわたりフルモデルチェンジしていない。従ってミニバンは、ボディバリエーションも基本的に標準ボディとエアロ仕様で対応している。
ミニバン需要が見通しにくい状況になっているためか、エルグランドは2020年にマイナーチェンジはしたものの、フルモデルチェンジまではしなかった
しかし軽自動車のスペーシアは、SUV風のギアで売れ行きを伸ばした。フリードクロスターのように、最低地上高を高めずに外装パーツを装着するSUVモデルの投入は、試みる価値があるだろう。
特にステップワゴンは、ホンダのブランドイメージがコンパクトな車種に偏ったこともあり、売れ行きが伸び悩む。セレナも最近は売れ行きが下降気味だ。
これらのミニバンに、水洗いの可能な荷室などを備えたSUV風のグレードがあると、多くのユーザーに喜ばれるだろう。何よりデリカD:5の根強い人気が、「ミニバン×SUV」の可能性を物語っている。
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