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フェラーリの本流ではなかった!? フェラーリ「365BB」誕生の秘密【THE CAR】

掲載 更新 9
フェラーリの本流ではなかった!? フェラーリ「365BB」誕生の秘密【THE CAR】

■ロードゴーイングマシンとしてはフェラーリ初のミド12気筒

 歴史の皮肉というべきだろう。フェラーリが、カタログモデルのフラッグシップモデルとして、12気筒エンジンをリアミッドにおくロードカーをラインナップしていたのは、「365BB」に始まり、「F512M」で終わる、たったの20年間に過ぎない。

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「F50」や「エンツォ」、「ラ・フェラーリ」など、いわゆる「スペチアーレモデル」を除けば、ミドシップの跳ね馬といえば今や、V8エンジン搭載モデルのことを指す。「550マラネロ」以降、最新の「812スーパーファスト」に至るまで、フェラーリの フラッグシップが、BB以前と同様に、フロントエンジン車となって久しい。フェラーリといえば、ミドシップのイメージは決して、本流ではないのだ。

 12気筒エンジンをリアミッドにおいたフェラーリは、今も昔も異種の匂いに満ちており、公道を駆ける跳ね馬の歴史において、鬼っ子的な存在であることは明らかだろう。今となっては、スーパーカーの世界を見渡しても、ランボルギーニ・アヴェンタドールと、少量生産のパガーニくらいにしか、12発ミドのパッケージを見つけることはできない。ロードカーの世界においてはもはや、12気筒のミドは、奇態であった。

 創始者エンツォはミドシップの市販ロードカーそのものに最後まで乗り気ではなかった、という数々の証言が現代に伝えている。BB時代のピニンファリーナで腕を振るった、レオナルド・フィオラバンティもそのひとり。彼のピニンファリーナにおける最初の仕事は、奇しくも60年代にGTレース参戦のため企画された12気筒ミド=250LMのサイドダクトデザインだった。

 レオナルドによると、相次ぐ新興勢力のミドシップロードカーを尻目に、ようやく、エンツォがその商品性の高さに理解を示しはじめたのはV6エンジンを積んで、車名をディーノと呼ぶことになった秀逸なコンパクトスポーツカーに乗ってからだったという。

 ランボルギーニ・ミウラやクンタッチの存在が、はたしてどれほどフィアット・フェラーリ陣営を刺激したのだろうか。フェラーリにとって12気筒はアイコンであり、それをミドに積むからには、パフォーマンスにおいて新興勢力になど「負けたくない」という思いが強かったことだけは、その後の「最高速度のくちプロレス」を思い出しても明らかだろう。

 12気筒エンジンをミドに積む365BBとして現実になるのは70年代からであり、その頃はフェラーリの市販車部門がフィアットの軍門に下っていた。

 仮にもしフィアット傘下になっていなければ、BBシリーズは少量限定生産の短命に終わっていた可能性が大だ。なにしろ365BBの作り方は、今でいうところのスペチアーレ流である。そこには、「モノ真似ではない」パッケージングから、ボディ骨格の作り方、ドライバビリティに至るまで、数を出したいロードカーとしては、いくつものムリがあった。

 それまでFRを頂上にいだいてきたブランドにとって、いきなりのミドシップは、同じくF1イメージを色濃く残すF50が登場したときよりも「大げさ」なデキゴトだったに違いない。

 親会社のフィアットとしては、多少の無理も承知のうえで、にわかに人気を得はじめたBBをフラッグシップとして担ぎ、フェラーリの名前をよりいっそう高く売っていこうと願った。

■最速ロードカーの座を守るためフェラーリが意地となって開発

 365BBの発展版である12気筒ミドシップのスーパーカーを、F1イメージに被せてフラッグシップにおける、スーパーカー界の第一人者という地位を確立しようとした。当時のフェラーリは、現代ほど強力な地歩を固めるには至っていなかった。

 V型180度エンジンが、312TシリーズとしてF1界を席巻していた水平対向12発へのオマージュであり、宣伝効果も狙ったものであったことは間違いない。

 512BB系→テスタロッサ系へと続く、12気筒ミドシップを頂点とした時代が、突如、はじまった。しかしそれはまた、独特なレイアウト&パッケージングとの悪戦苦闘の時代であったと、もいえる。

 ライバルとは違うパッケージング&エンジニアリング上のオリジナリティを実現し、F1イメージをかもし出す。それは一石二鳥でかつ苦肉の策だった。

 当然、フェラーリも、ギアボックスの上にエンジンを積むという手法がミドシップカーの物理的メリットを損なうものであることはよく分かっていたはずだ。それでも発売した。フェラーリ自身が当初、12発ミドシップ=365BBの量産をそれほど深く考えていなかったことがそこからも伺えよう。

 フィアットの政策を受けて「続ける」ことを決めてしまった結果、フェラーリは、まるで引っ込みがつかなくなったかのように、20年かけてその呪詛と戦うことを余儀なくされ、最後のF512Mでなんとか区切りをつけることができた、というわけだった。

 以降、レーシングカーのような構造のスペチアーレ以外に、12発ミドの跳ね馬は姿を消すことになる。

 実際に365GT4BBから512BB、テスタロッサ、512TR、F512Mを乗り比べてみれば、フェラーリの二十年間に渡る苦闘と改良の歳月が手に取るように判る。

 BB?テスタロッサまでの乗り味は、エンジンそのものの大きさと重さを、ドライバーに、どうしても感じさせてしまうものだった。対して512TRとF512Mはというと、ようやくそれが部分的に解消されていた。ステアリング系の剛性感や改良された重心位置、シャシー性能の向上などの相乗効果で、BB由来のパッケージとは思えない走り味をみせるに至ったのだ。

 とはいえ、よくできたミドシップカーのように、ドライバーの脇からその重心が始まるような落ち着きはやはりなく、あくまでも背中に重量物を背負い込むという呪縛からは逃れ切れていなかった。だからこそ、それ以上の進化を諦めて、フェラーリは伝統のFR12気筒へと回帰したのではなかったか。

 そう考えると、ある意味、異常な二十年の始まりとなった365BBには、より一層のスペチアーレ感覚を覚えずにはいられない。異質のスタートであるからこその、特別感とでも言おうか。

 確かに、512BBと比べてみても、その走りのシャープさ、エキセントリックさ、エッジの鋭さにおいて、365BBはまるで違うキャラをみせる。たとえばF40が見せるような「危うさ」が、質は違えども確かにある。

 総生産台数387台。この数字だけをみても、365BBは、まず間違いなく、スペシャルな一台であり、近い将来、再評価に至ることは間違いない。

※ ※ ※

●FERRARI 365GT4/BB
フェラーリ365GT4/BB
・生産年:1971年
・全長×全幅×全高:4360×1800×1120mm
・ホイールベース:2500mm
・エンジン:水冷180度V型12気筒DOHC
・総排気量:4390cc
・最高出力:380hp/7700rpm
・最大トルク:42.0kgm/3900rpm
・トランスミッション:5速MT

●取材協力
DREAM AUTO
ドリームオート/インター店
・所在地:栃木県栃木市野中町1135-1
・営業日:年中無休
・営業時間:10:00~18:30
・TEL:0282-24-8620

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モーサイ

みんなのコメント

9件
  • 欠点を挙げれば多々あるんだろうけど、ボクサー12気筒をミッドに積んでること自体がカッコいい。
    スーパーカーは速ければいいってもんじゃないと今になって思う。ガキの頃はそうではなかったがw
  • 今見ても365,512BBはカッコいい
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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