■フラッグシップセダンとなった「アコード」 1700km走った印象は?
ホンダはアコードをフルモデルチェンジして3月より販売を開始しています。
レジェンドがカタログ落ちしてしまった現在、11代目アコードは国内市場ではフラッグシップセダンという存在です。
今回1700kmほどを共に過ごすことができましたので、実際の使い勝手やフラッグシップとしての相応しさという視点でまとめてみました。
【画像】「えっ…!」カッコいい! これが新型「快速セダン」です! 画像を見る
初代アコードは1976年にシビックのお兄さん的な立場で3ドアハッチバックとしてデビュー。
その後4ドアのサルーンが追加となり、そこから常にホンダの上級車種という立ち位置を保ちながら今に至ります。
特に1980年代から90年代にかけてはより高級志向の高まりとともに、新技術を積極的に取り入れていきました。
1985年に登場した3代目ではリトラクタブルヘッドライトを採用したり、いまのシューティングブレークと呼ばれるようなボディをまとったエアロデッキなどのほか、4代目アコードでは4WSを搭載。
兄弟車としてフロントミッドシップ5気筒エンジンを搭載したアコードインスパイアなどもラインナップし、バリエーションを拡大していったのです。
また海外生産にも積極的に取り組み、早くも2代目では日本車としてはじめてアメリカ生産されたクルマでもあります。
日本では導入が途絶えた時期もありましたが、2020年には海外からは少し遅れて10代目が再びラインナップ。
日本市場の中核を担うセダンとして清潔なデザインとe:HEVの走りの良さなどで好評を博しました。
そして11代目となった新型は、ついにフラッグシップセダンとして、自らの価値観を大切にし、自分らしく生きる40代から50代と、これまでアコードを愛してきた50代後半から60代のユーザーをターゲットに登場したのです。
先代から続く強みであるデザインと走行性能では上質さをキーワードに正常進化。
一方で、近年ニーズが伸びており、先代で満足度が高くなかった安全運転支援機能やヒューマンインターフェースではホンダセンシング360やGoogle搭載といった日本のホンダ初となる機能を用意し、強みに変えようとしてきたのです。
まずエクステリアでは、清潔感溢れるデザインはそのままに、サイドビューではフロントフェンダーからリアフェンダーにかけて精緻なキャラクターラインとサイドシル上部にラインを入れた以外は面の抑揚で質の高さを表現しています。
ルーフラインは明らかにクーペライクな印象で、スポーティさを感じさせています。
だからといってリア席が狭苦しいということはありませんので、フラッグシップとして後席にも人が乗ることも考えられていることが伺えました。
インテリアで目に付くセンターコンソールから助手席に広がるエアアウトレットは、ハニカム形状になっており、これはその中にある様々な機構を見えにくくするためです。
メーターは10.2インチデジタルグラフィックメーターを採用。右側にはスピードメーターを、左側にはパワーメーターを配置し、中央のマルチインフォメーションディスプレイではホンダセンシングの作動状況や車両情報などのコンテンツをグラフィカルに表現され、右側のステアリングスイッチの操作で表示の切り替えや選択を行います。
中央のディスプレイは、先代の8インチから12.3インチに拡大されました。
その下にある新採用のエクスペリエンスセレクションダイヤルは、エアコンや照明などの車内環境の操作を一括して行えるシステムです。
回して押すだけという簡単操作で運転に集中できます。ダイヤルを回し、ディスプレイに表示されるメニューからモードを選択。ダイヤルプッシュで完結するもの。
デフォルト以外にユーザーの好みに応じたエアコン設定や再生するオーディオソースや音量、照明の色や明るさなど複数の機能を記憶させておき、ダイヤルで呼び出すことも可能です。
■最新の「Google」どんな感じ? ホンダのフラッグシップとしては物足りなさもある…
そして新たに採用されたGoogleでは、GoogleアシスタントやGoogleマップなどGoogle Playで提供されているアプリを車内でも利用できるものです。
例えば「OK Google。今日の港区の天気は?」などと問えば答えてくれますし、当然目的地設定やエアコンの温度設定なども可能です。
さあGoogleアシスタンスを使ってみましょう。目的地設定などの使い勝手はとても楽で、携帯の音声操作と同じイメージです。
しかし、あくまでも電波があるときにという注釈をつけなければなりません。実は全く知らない土地で目的地を設定しようとしたときに電波がつながらなくて、機能しないことがあったのです。
そこで慌てて携帯を操作(こちらは電波を受信していたので)し目的地を設定し誘導のもと無事に到着したのですが、やはりこういうときは車載のナビが便利だと感じました。
それ以外で不自由をしたことはなく、また、エアコンに関しては物理スイッチもありますので、ブラインドタッチもしやすく安全性は高いでしょう。
むやみにスクリーン上に入れてしまうと、確かに見た目はきれいですし、バージョンアップも楽でしょうが、頻繁に操作するものでは危険度が増してしまうので、決してお勧めはできないのです。
シートもよく出来ており、長距離の移動も不当な疲れなく目的地まで到達できたのは高く評価してよいと思います。
さて、少し装備について触れておきましょう。アコードは元々の成り立ちがシビックのお兄さん等位置づけでした。
しかし今回からフラッグシップというポジションも与えられてしまったので、こと装備に関してはちぐはぐな様相を呈しています。
助手席のドライバー側には後席に人が乗った時に、空間を広くするためにスライドとバックレストを操作するスイッチがありました。
これはまさにショーファーカーをイメージしたもの。一方でトランクの開閉は手動で、オートクロージャー機能は備わらないので、後席に人が乗っていても、トランクはバタンと勢いよく閉めなければなりません。
さらにそのときにトランクのヒンジが下がってしまうので、この下に荷物を置いてしまうとその荷物を押しつぶしてしまうことがあります。
上級車の多くはダンパー式にするか、あるいはこのヒンジが収納できるようなカバーを設けて荷物が潰されないような工夫をしていますので、もう少し気遣いが必要です。
ドライビングポジションはとても取りやすく視界も良いのですが、ステアリングのチルト機構は手動で、電動ではありません。
これもフラッグシップとしては少し寂しく感じました。
このようにこれまでのアコードであれば特に触れることのない装備なのですが、さすがにフラッグシップとなったいま、もう一度そのポジショニングと装備を見直してみて欲しいと感じました。
※ ※ ※
安全面では、従来のシステムからさらに進化させたホンダセンシング360を採用。
これは、約100度の有効画角を持つフロントセンターカメラを採用し、フロントレーダーと各コーナーに合計5台のミリ波レーダーを装備。
また、リアのコーナーレーダーはブラインドスポットイフォメーション用のレーダーの約25mに対して、今回大幅に長い90mまで後側方の車両計測ができます。
また、近距離の障害物の検知に対しては、前後6台ずつのソナーセンサーを装備。
その結果として左右前方から接近してくる車両の警報やレーンチェンジ時の接触事故抑制機能、車線変更支援機能(高速道路などの自動車専用道路でACCなどを使っているときにウインカー操作で車線変更をアシスト)が新たに追加されました。
では実際に街に乗り出してみましょう。
最初に感じたのは前方視界の良さで、ボンネット先端の水平ラインとフロントウインドウの下端部分が比較的近い形状であることもあり、非常に前が見やすいのです。
ただし、ドアミラーがドアにマウントされず、ピラーから生えている形状なのは注意が必要。
アコードの場合は若干足が出ており、ボディから少し離れてミラーが配置されますので、その僅かな隙間で歩行者の確認はできますが、それでもドアマウントのミラーよりは死角が発生していますので十分な注意が必要でしょう。
これはアコードに限らず、同じドアミラー形状であればどのクルマも同じではあります。
アクセルペダルやブレーキペダルのフィーリングはドライバーの思った通りに加減速してくれます。
ここで驚いたのはe:HEVのスムーズさ。いつエンジンがかかったのか、ストップしたのかは、本当に耳を澄ませたり、何かショックはないかとしっかりと観察していないと気づかないレベルです。
しかも後述しますが燃費も優れていますし、改良されたCVTも癖のないスムーズなものでした。
最後に燃費について触れておきましょう。
今回1700kmほど走って、実燃費(WLTCモード値)は次の通りでした。
市街地:21.1km/L(20.5km/L)」
郊外:22.1km/L(27.0km/L)」
高速:21.4km/L(23.6km/L)」
WLTCモード値と比較すると特に郊外路での乖離が大きいですが、それ以外は誤差範囲と見ていいでしょう。
郊外路ではアップダウンのある道路も走りいましたので、その差が表れているかもしれません。
しかし、このボディサイズで20km/Lを割らないのはとても優秀といっていいでしょう。
また、いずれの項目でも近い値を得ているということは、ハイアベレージから低速域までe:HEVの制御により非常に効率よく走らせているということがいえます。
新型アコードをどう評価するかは非常に難しく感じます。
それは再三述べて来たこれまでの系譜を受け継いだアコードと、フラッグシップとしてのアコードの2つがあるからです。
開発のどの時点でフラッグシップという位置付けになったのかはわかりませんが、もう少し相応しい装備になってほしいとは思いました。
そしてこれまでのアコードの流れでは、まさに正常進化。5mに近い全長を備えていながらワインディングでもすいすいと走らせるさまはホンダならではといえるでしょう。
広い室内空間も備えているので、ホンダの開発思想、マンマキシム・メカミニマムは実現されてもいますので、総じて良質なセダンとして高く評価できるクルマといえるでしょう。
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みんなのコメント
あちらじゃ非常に良くできた普通の車ってのが評価
はぁ?!