しなやかでコシのあるフィーリングと評判のアラゴスタ。今回は箱根のワインディングで行われた新作モデルの開発テスト現場に密着取材。極上の走りを生み出すその秘密を探った。Text/石川大輔 Photos/宮越孝政
アルミ鍛造シリンダーに特殊コーティングを実施
すごいぞ、スイフトスポーツ!! 第13回:なぜ、FF車でリヤにキャンバーを付けるのか!?
アラゴスタといえばサーキット走行を嗜むユーザーからも支持を集めるサスペンションメーカーとして知られる。単筒&全長調整式を採用したダンパーの特徴ともいえるのが高い精度へのこだわりだ。
たとえばタイプSに採用されるアルミ鍛造シリンダーは0・2ミクロン単位の表面精度で仕上げられ、ホーニング処理により真円度が高められる。さらにバイクのフォークなどにも採用されるカシマコーティングまで実施。これは硬質アルマイト仕上げの約4倍という耐摩耗性を誇る表面処理技術で、フリクション低減にもつながるという。
またスプリングにはクセのない素直な特性というrana製を採用。スチールシリンダーやアウターケースには防錆・耐衝撃性に優れるカチオン電着塗装を施すなど細部まで妥協なく仕上げる。
そして肝心のセッティング。アラゴスタの日本総代理店であるトップラインプロダクトでは、机上の計算に頼らず車種ごとに実走テストを繰り返し、理想的なサスペンションを生み出してきた。これを一手に担う開発ドライバーは足まわりに精通する山田英二プロ。納得がいくまで走り込みを重ねることで、しなやかで限界性能が高い車高調に仕上げているのだ。
新型ピストンの特性を山田英二プロがチェック
アラゴスタの開発において、重要なテスト現場のひとつが変化に富んだワインディングだ。路面の継ぎ目やうねりはダンパーに多くの性能を求める。ストロークの限界を超えれば挙動を乱す原因になりかねないし、硬過ぎるサスでは立ち上がりでアクセルを踏み込むことすらままならない。そう、路面がフラットなサーキットより遥かに難しいのが、ストリートでのサスペンション開発なのだ。
「スポーツ性能はもちろん、気持ちのいいフィーリングや限界を超えたときの挙動がドライバーに伝わりやすい足まわりを意識して開発しています」と山田英二プロ。開発テスト現場ではスピーディにダンパーの分解、組み立てができるよう専用ツールを備えたサービスバンが待機。山田プロが試走しては気になる箇所をエンジニアに伝え、仕様変更をするという地道な作業が繰り返される。
ちなみに今回持ち込まれた試作のZC 33 S&R35用ダンパーには、新型ピストンが組み込まれている。こちらは従来型ピストンと比べ、微低速域から減衰力を多めに立ち上げつつ、ハイスピード域でなだらかになるような特性だという。じっくり仕様が詰められたその味わいは別記のとおりだ。
R35GT-R 「新ピストン採用で実現したこれまで以上に質感の高い走り」
従来ピストン仕様のF:16kg / mm、R :10kg / mmから試乗。バランスはいいが、タイヤとの相性もあってか反応がよ過ぎとの意見。レートを変えずに新ピストンを入れたところ、はっきりとしなやかさが加わった。その後レートを落した場合を確認すべく、リアを2kg /mmダウン。これは減衰力ダイヤルを緩めるといいが、締め込むとイマイチ。F:16kg/mm、R:10kg/mmが最良との判断
ZC33Sスイフトスポーツ「嫌なバタツキ感が抑えられた懐が深い、上質なフィーリング」
後ろが粘り過ぎると曲らないが、締め上げ過ぎるとバタツキ感が出がちなZC33S。F: 7kg/mm、R : 5kg/mmから始め、数とおりのレートや減衰力を試した結果、F: 6kg/mm、R : 4kg/mmがベストという結論に。「初期の接地感も出ているし、追従性もよくしっかり路面を捉えている。嫌な突き上げ感もなく乗り心地もいい」と山田プロ。しなやかさと粘りを併せ持つ質感の高い走りに生まれ変わった。
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