1990年代のトヨタ車のスポーツユニットとして多くの支持を得ていたのがヤマハ製直6、2.5Lターボの1JZ-GTE。なぜ、90~100系マークII3兄弟などに積まれたこのエンジンが大きく支持を得ていたのだろうか?
文/永田恵一、写真/ベストカー編集部、トヨタ、日産
踏めば踏んだだけ気持ちよく加速するエンジンだった! クルマ好きから珠玉の直6ターボ「1JZ-GTE」が愛された理由とは?
■1JZ-GTEエンジンはどのように誕生してきたのか
1992年に登場した7代目90系マークIIツアラーV。80系には設定のなかった5MT車もラインナップに加わった
80スープラやシルビア、直6エンジン時代のR32~34スカイラインといった1990年代のスポーツモデルが大人気となって久しい中、特にドリフトのベース車として人気が衰えていないのが1992年登場の90系と1996年登場の100系のマークII3兄弟である。
この2台がいまだ人気となっている最大の理由はスポーツセダンとしての魅力的だったことだが、その一因には1JZ-GTEという2.5L直6ターボを搭載していた点も大きく、ここでは1JZ-GTEがいまだ愛されている理由を考えてみた。
2.5L直6の1JZが登場したのは1990年夏のこと。この時期にトヨタは当時の8代目クラウンにNAの1JZ-GE搭載車を追加し、80系マークII3兄弟のマイナーチェンジでは1JZのNAとターボ、70スープラのマイナーチェンジで1JZのターボを搭載した。
この時期、トヨタの乗用車用直6エンジンは2Lの1G型と3L級のM型のふたつだったのだが、M型は1960年代中盤の基本設計ということもあり、さすがに古さが否めなかった。
さらに1989年度の自動車税の改正により、それまで3ナンバー車は排気量に関係なく、ボディサイズが3ナンバーになっただけでも自動車税が2Lの5ナンバーが約4万円だったのに対し、3ナンバー車は3L以下で約8万円に跳ね上がっていたのが、排気量を基準に段階的に課税されるシステムに変更された。
そのため当時3ナンバーボディに2.5LV6を中心として価格がリーズナブルだった三菱ディアマンテの初代モデルがヒットしたように、NAでもマークII3兄弟なら余裕ある2.5L、クラウンでも充分な動力性能が確保できる2.5Lの6気筒エンジンへの需要の増加が予想され、この2点が1JZ型の誕生した大きな理由だった。
80系マークII時代に初投入された直6、2.5Lターボの1JZ-GTEは90系で280ps/37.0kgm、続く100系では最大トルクが38.5kgmまで向上
こうして誕生した1JZ-GTEは、ボア86.0mm×ストローク71.5mmというショートストロークのツインターボだったこともあり、ターボエンジンらしいパンチや爆発力を持ちながら、レッドゾーンまで気持ちよく回るなど、完成度の高いいいエンジンだった。
ただ、搭載されたのが車重が重く、クルマ自体も古くなりつつあった80系マークII3兄弟や70スープラだったこともあり、まだエンジンのポテンシャルを生かし切れていないのも事実だった。
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■本命「90系&100系マークII」への搭載
90系クレスタツアラーVには5MT車も設定されたが、続く100系では3兄弟車中唯一のAT車のみ設定となった
1JZ-GTEは1991年登場の30ソアラへの搭載を経て、ここでの本題となる1992年登場の90系マークII3兄弟のスポーツモデルとなるツアラーVに搭載される。
90系マークII3兄弟は前述のディアマンテのようにボディは3ナンバー化され、車体やサスペンションも四輪ダブルウィッシュボーンと新設計となり、車重も100kg軽量化されるなど、大きく進歩した。
90系チェイサーツアラーV。リアにフロントよりひと回り太い225/50R16タイヤを履き、精悍な雰囲気に
さらにツアラーVは誉れ高きR32スカイラインの影響を多大に受けていたようで、MTを設定しただけでなく、絶対的な速さも備えたスポーツ性の高いモデルに仕上がっており、1JZ-GTEのポテンシャルをシッカリ受け止める90系マークII3兄弟の大きな柱に成長した。
■R33スカイラインの「自滅」でツアラーVが人気に?
1993年に登場した9代目R33スカイラインGTS25tタイプM。リニアチャージコンセプト採用で最高出力は2.5Lターボでも250psと控えめに(5MT車、4AT車は235ps)
また、90系からマークII3兄弟において1JZ-GTE搭載車が人気となったのは同時期のR33型スカイラインが自滅したことも小さくない理由だった。
というのも90系マークII3兄弟が出た翌1993年に登場したR33型スカイラインは、ローレルとの共用化などの事情もありボディサイズを拡大。さらにツアラーVの対抗馬となるRB25DET型2.5L直6ターボはリニアチャージターボという圧縮比を上げ、ブーストは控えめ、つまり扱いやすさ重視というコンセプトで開発され、最高出力は1JZ-GTEの280psに対して250psに抑えられた。
このコンセプトは現在のダウンサイジングターボに通じる真っ当なもので、今になると「出るのが早すぎた」とも感じるのだが、当時はターボエンジンらしいパンチに欠けること以上にスカイラインよりもマークII3兄弟に高いスポーツ性を感じ、マークII3兄弟がスカイラインのようなキャラクターを持つようになったほどだった。
ただ、スカイラインのRB25DETも1998年にR34型になった際に当時の自主規制だった280ps軍団の仲間入りをし、クルマ自体もスカイラインらしいスポーツ性を取り戻したことは幸いだった。
1996年に登場した6代目100系チェイサーツアラーV。マークII3兄弟のなかでは最もフロントオーバーハングが短く、スポーティだった
話をマークII3兄弟に戻すと、マークII3兄弟は1996年に100系にフルモデルチェンジされ、この時期に1JZ-GTEも大きくリニューアルされた。具体的にはVVT-i(可変バルブタイミング機構)が加わり、タービンはツインターボからシングルとなり、スペックでは280psの最高出力はそのままだが、最大トルクは37.0kgmから38.5kgmを2400回転で発生。
この改良により100系のツアラーVは、エンジンはスペック通り扱いやすさは増した代わりに高回転域の切れ味は削がれたものの、クルマ1台としての魅力は正常進化しており、100系ツアラーVがいまだ人気なのもよくわかる。
100系マークIIツアラーV。90系の時はマークIIが一番人気だったが、100系の時はマークIIはチェイサーの後塵を拝していた
1JZ-GTEは昔のエンジンらしく鋳鉄ブロックなだけでなく、ヘッドガスケットがメタルな点など、強靭なことに加えタービン交換をはじめとした発展性の広さも大きな魅力だ。
さらに1JZ-GTEはここで名前の挙がったモデル以外でも170系の11代目クラウンにも搭載され、今でも中古エンジンの入手が可能なこともあり、ドリフト業界を中心にマークII3兄弟+1JZ-GTEの人気は当面続くに違いない。
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みんなのコメント
ノーマルで比較すると一瞬の出だしは100系がリードするものの、4000回転くらいからは90系が伸び出し、そのまま90系に引き離される。
とても同じ出力とは思えない。
その犯人は100系から装備された電スロにある。
特にマフラー交換すると、知らぬ間に電スロが全開にならなくなる。
ETCSモニターを装着すると、ベタ踏みでも68%しか開いていない。
こいつをオフにすると100%開くので、本来のパワーが出る様になる。
それでもシングルタービンの容量不足により、高回転ではブーストが垂れてしまう。
90系はブーストアップでもかなり速くなるが、100系はもの足りず、タービン交換して360PS、トルク48キロ仕様で乗っていた。
ここまでして、やっとそこそこ速くなった。
丈夫なエンジンだし、チューニングパーツも沢山あり、ショップも沢山あったから、そう言った意味では人気があったのだろう。